大学院研究について

感染症グループ

2019年末中国・武漢より発生したSARS-CoV-2による感染症、COVID-19が全世界で猛威を振るっています。日本も例外ではなく、COVID-19による感染が問題となり、感染症分野はこれまでになく注目されている領域となりました。さらに、感染症に対する新規治療薬の開発・ワクチンの開発・感染症の病態の解明など、この分野の研究は無限に広がっています。肺は常に外界と接しており、肺は常に細菌やウイルス、真菌による感染のリスクを持っています。そのため、感染症について研究し、究明していくことは、呼吸器内科の使命の一つと考えています。当グループでは、肺炎におけるサイトカインを中心とした宿主免疫についての研究、非結核性抗酸菌における好中球を中心とした細胞死と感染防御についての研究、Mycobacteroides abscessus感染症での菌の遺伝子解析と臨床データを用いた治療戦略の構築を柱に研究を行っています。さらに、当科の中だけで研究を完結するのではなく、当院臨床検査部、環境医学研究所や東邦大学医学部微生物・感染症学講座、さらには米国ミシガン大学などとの共同研究を行っています。

肺炎における生体内のサイトカイン検討

肺炎は日本人の死因の第3位を占める病気です。ヒトの身体は、細菌などの外敵から身を守る道具を持っていて、代表例として、好中球やマクロファージなどがあります。これらは、サイトカインやケモカインといった飛び道具を使って互いに連絡をとっています。しかし、これらのネットワークに関しては、分かっていないことが多いのが現状です。そこで、我々はこれらのネットワークをいろいろな細菌を使用して検証し、明らかにしていこうとしています。さらに、ドラッグレポジショニングといって、現在ある薬剤から、感染症に有効な薬効を見つけ出す検討も行っています。


Yuta Nanjo, Michael W. Newstead, Tetsuji Aoyagi, Xianying Zeng, Kazuhisa Takahashi, Fu Shin Yu, Kazuhiro Tateda, Theodore J. Standiford. Overlapping Roles for Interleukin-36 Cytokines in Protective Host Defense against Murine Legionella pneumophila Pneumonia. Infect Immun. 2019;87: e00583-18

Kajiwara C, Kusaka Y, Kimura S, Yamaguchi T, Nanjo Y, Ishii Y, Udono H, Standiford T and Tateda K. Metformin Mediates Protection against Legionella Pneumonia through Activation of AMPK and Mitochondrial Reactive Oxygen Species. J Immunol 2018; 200: 623-631

非結核性抗酸菌の感染成立機序の解明

近年、中年女性でこの菌に感染症者が世界的に増加傾向にあり、日本でも同様の傾向を示しています。非結核性抗酸菌症は経過の個人差が大きい病気で、重症になると治療を行ってもゆっくりと進行し、呼吸不全となることもあります。感染時にはマクロファージや好中球、リンパ球を中心に免疫応答がおきます。免疫細胞の細胞死(apoptosis, necroptosis, NETsなど)は感染症を防御することにおいて、重要な役割の一つとされています。そこで我々は好中球の細胞死に着目し、非結核性抗酸菌感染症の経過において好中球の細胞死がどのように影響するのか、防御機構への影響があるのか、肺組織の障害への影響などについて解明に向け研究を行っています。

Mycobacteroides abscessus感染症に対する新規治療戦略

肺非結核性抗酸菌症は治療が難しい感染症であり、その中でもMycobacteroides abscessus (M. abscessus) は、日本において3番目に症例数が多く、進行も早いことから新しい治療法の開発が期待されています。M. abscessusは、遺伝子を解析することによって、M. abscessus subsp. abscessus、M. abscessus subsp. massiliense、M. abscessus subsp. bolletiiの3亜種に分類され、抗菌薬の効果に違いがあることが知られています。
順天堂練馬病院で得られた菌株を使用した基礎実験のデータと、患者さんの臨床データとの関連性を調べることで、1)質量分析や遺伝子解析から菌種の早期診断と、2)様々な新規候補薬剤の感受性検査から菌種ごとの最適な治療法の解明を行っています。

エンドトキシンショックにおける新規薬剤の作成

細菌の壁にはエンドトキシンという物質があり、ショックの原因の一つです。ポリミキシンはこのエンドトキシンを吸着して不活化させる作用をもっており、集中治療分野では、エンドトキシン敗血症に対してこの薬剤を付着させたカラムを使用した血液灌流療法が行われることがあります。しかし、この製品は非常に高額であるため、より安価で、使用しやすい薬剤を開発しています。そこで、我々は安全性の高い生分解性ポリマーに注目し、この薬剤を付着させ、マウスモデルを用いて徐放製剤の有効性を評価し報告しています。


Nanjo Y, Ishii Y, Kimura S, Fukami T, Mizoguchi M, Suzuki T, Tomono K, Akasaka Y, Ishii T, Takahashi K, Tateda K, Yamaguchi K. Effects of slow-releasing colistin microspheres on endotoxin-induced sepsis. J Infect Chemother. 2013; 19: 683-90.

Hanai Y, Matsuo K, Kosugi T, Kusano A, Ohashi H, Kimura I, Hirayama S, Nanjo Y, Ishii Y, Sato T, Miyazaki T, Nishizawa K, Yoshio T. J Pharm Health Care Sci. 2018 Aug 20;4:22.