大学院研究について

肺がんグループ臨床研究

進行胸腺がんに対する化学療法についての研究

胸腺がんは非常にまれな疾患であるため、大規模な前向き臨床試験の実施が困難であり、標準治療が確立していない疾患です。特に進行例に対する化学療法については、データが極めて少なく、実臨床において治療選択に悩むことが多いのが実情です。そこで、当科を主体とし、NEJSG(北東日本研究機構)の協力のもと、進行胸腺がんに対する化学療法に関する、大規模な後ろ向き研究を実施しました。2016年のASCO(米国臨床腫瘍学会)で発表後、複数の研究成果を論文で報告しています(論文1-3)。この結果は、実臨床における治療選択にとって、貴重なデータになると考えられます。

発表論文

  • Ko R, Shukuya T, Okuma Y, Tateishi K, Imai H, Iwasawa S, Miyauchi E, Fujiwara A, Sugiyama T, Azuma K, Muraki K, Yamasaki M, Tanaka H, Takashima Y, Soda S, Ishimoto O, Koyama N, Morita S, Kobayashi K, Nukiwa T, Takahashi K. Prognostic factors and efficacy of first-line chemotherapy in patients with advanced thymic carcinoma: a retrospective analysis of 286 patients from NEJ023 study. Oncologist 2018; 23(10): 1210-17.
  • Tateishi K, Ko R, Shukuya T, Okuma Y, Watanabe S, Kuyama S, Murase K, Tsukita Y, Ashinuma H, Nakagawa T, Uematsu K, Nakao M, Mori Y, Kaira K, Mouri A, Miyabayashi T, Sakashita H, Matsumoto Y, Tanigawa T, Koizumi T, Morita S, Kobayashi K, Nukiwa T, Takahashi K. Clinical Outcomes of Second-Line Chemotherapy in Patients with Previously Treated Advanced Thymic Carcinoma: A Retrospective Analysis of 191 Patients from the NEJ023 Study. Oncologist. 2020 Apr;25(4):e668-e674.
  • Okuma Y, Ko R, Shukuya T, Tateishi K, Imai H, Iwasawa S, Miyauchi E, Kojima T, Fujita Y, Hino T, Yamanda S, Suzuki T, Fukuizumi A, Sakakibara T, Harada T, Morita S, Kobayashi K, Nukiwa T, Takahashi K; North East Japan Study Group. Prognostic factors for patients with metastatic or recurrent thymic carcinoma receiving palliative-intent chemotherapy. Lung Cancer. 2020 Oct;148:122-128.

この研究データをふまえ、現在、我々の施設が中心となって、全国15施設で、「進行・再発胸腺癌に対するカルボプラチン+パクリタキセル+アテゾリズマブ(MPDL3280A)の第II相試験(医師主導治験)」を行っています。


未治療進行非小細胞肺がんにおける悪液質の前向き観察研究

がん悪液質は、通常の栄養サポートでは完全に回復することができない、体重減少や食欲不振を特徴とする症候群です。悪液質を合併している患者において、食欲不振をきたす化学療法は、より強く食欲不振を生じてしまう可能性があります。また、がん患者における体重減少は予後を悪化させるとされ、化学療法の治療効果にも影響を与える可能性がありますが、その実態は明らかではありません。そこで、NEJSG(北東日本研究機構)の協力のもと、当科を主体とした全国47施設により、化学療法が未施行で悪液質を合併している進行非小細胞肺がんに対し、食欲に関するQOLを評価する前向き観察研究を実施中です(UMIN ID: UMIN000041813)。がん悪液質の食欲不振に対する治療薬が2021年に国内承認されており、がん悪液質に対する早期介入の重要性が明らかとなりうる本研究は、今後のがん治療において有用なものとなると考えられます。


オリゴメタスターシスを伴う非小細胞肺がんに対する免疫チェックポイント阻害薬と局所治療を含む集学的治療の検討

オリゴメタスターシスは、乳がんや肺がんにおいて局所進行期と全身に広く転移した状態の中間の状態と考えられており、標準治療に局所治療(手術や放射線治療)を追加することで、生存期間の延長が得られる集団として、欧米を中心に治療開発が進められてきています。一方で、オリゴメタスターシスを伴う非小細胞肺がん患者さんに対して、主要な薬剤の一つとなっている免疫チェックポイント阻害薬と局所治療を組み合わせた集学的な治療の有効性や安全性は十分に明らかになっていません。そこで、当科および静岡がんセンターを中心として、西日本がん研究機構の18施設が参加して、オリゴメタスターシスを伴う非小細胞肺がん患者さんにおいて、現在の標準治療であるプラチナ製剤併用化学療法+ペムブロリズマブ(免疫チェックポイント阻害薬)に局所治療を追加することの有効性及び安全性を評価する単群第II相試験を実施中です(jRCTs041200046)。


発表論文

  • Miyawaki T, Kenmotsu H, Harada H, Ohde Y, Chiba Y, Haratani K, Okimoto T, Sakamoto T, Wakuda K, Ito K, Uemura T, Sakata S, Kogure Y, Nishimura Y, Nakagawa K, Yamamoto N. Phase II study of multidisciplinary therapy combined with pembrolizumab for patients with synchronous oligometastatic non-small cell lung cancer TRAP OLIGO study (WJOG11118L). BMC Cancer. 2021 Oct 18;21(1):1121. doi: 10.1186/s12885-021-08851-z.

既治療EGFR遺伝子変異陽性非扁平上皮非小細胞肺癌に対するカルボプラチン+ペメトレキセド+ペムブロリズマブ(MK-3475)+レンバチニブ(E7080/MK-7902)併用療法の第II相試験(NEJ052, 医師主導治験)

世界初のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)であるゲフィチニブの登場から約20年経過し、第3世代EGFR-TKIの登場などにより、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌患者さんに対するEGFR-TKIを用いた治療の成績は年々向上しています。しかし、EGFR-TKIが効かなくなってしまった患者さんに対する治療は、現在も20年前と変わらず、標準治療はプラチナ併用化学療法のままとなっています。そこで、EGFR-TKIが効かなくなった患者さんにおけるプラチナ併用化学療法に抗PD-1抗体(ペムブロリズマブ)と、マルチキナーゼ阻害薬(レンバチニブ)を組み合わせた治療の有効性を評価し、新たな標準治療の候補となり得るかを評価する医師主導治験を行っています(NCT05258279)。

治験・臨床研究

当科主体の研究の他、本邦未承認薬の治験や、JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)、NEJ(北東日本研究機構)、WJOG(西日本がん研究機構)などの臨床研究グループが実施している臨床試験に、積極的に参加し、最先端の肺がん治療を実践しています(表1)。

表1.現在当科で実施中の治験・臨床試験の一例

対象疾患 phase 試験治療
治験 PD-L1陽性非小細胞肺がん 3 抗PD-1抗体+抗TIGIT抗体
治験 PD-L1高発現の非小細胞肺がん 3 抗PD-1抗体+抗TROP2抗体
治験 EGFRエクソン20遺伝子変異非小細胞肺がん 3 抗EGFR/Met抗体+抗がん剤
治験 進行非小細胞肺がん 3 第3世代EGFR-TKI
治験 局所進行非小細胞肺がん 3 化学放射線療法+抗PD-1抗体+PARP阻害剤
治験 局所進行小細胞肺がん 3 化学放射線療法+抗PD-1抗体+PARP阻害剤
治験 進行小細胞肺がん 3 プラチナ併用化学療法+抗PD-1抗体+抗VEGF抗体
治験 既治療のc-MET陽性非小細胞肺がん 3 抗c-MET抗体
治験 RET融合遺伝子陽性非小細胞肺がん 3 RET阻害剤
治験 KRAS G12C陽性非小細胞肺がん 2 抗がん剤+KRAS阻害剤
治験 進行・再発胸腺癌 2 抗がん剤+抗PD-L1抗体
治験 抗PD-(L)1抗体+抗がん剤で病勢進行後の非小細胞肺がん 1 抗がん剤+抗VEGF抗体+抗PD-1抗体+EP4拮抗剤
臨床試験 Oligometastasisの非小細胞肺がん 2 プラチナ併用化学療法+局所療法
臨床試験 進行非小細胞肺がん(ドライバー変異なし) 3 抗がん剤+抗PD-1抗体、または、抗がん剤+抗PD-1抗体+抗CTLA-4抗体
臨床試験 EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がん 3 第3世代EGFR-TKI、または、第2世代EGFR-TKI+抗VEGF抗体
臨床試験 EGFR uncommon 変異を有する進行非小細胞肺がん 3 プラチナ併用化学療法 または 第2世代EGFR-TKI
臨床試験 ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん 2 第3世代ALK-TKI、または第3世代ALK-TKI+プラチナ併用化学療法
臨床試験 PS不良進展型小細胞肺がん 2 プラチナ併用化学療法+抗PD-L1抗体