患者さんへのご挨拶

肝胆膵外科領域の手術は非常に繊細です。疾患の悪性度と患者さんの体力に合わせ綿密な治療計画が必要です。誰一人同じ状態の患者さんはおりません。科学的データに裏付けられた治療方針は必要不可欠ですが、経験に裏付けられた臨床力は治療に奥深さを与えます。

私は16年に渡り癌臨床の最前線であるがん研有明病院で肝胆膵外科の治療に従事してきました。これまでの経験数は肝切除3000件 膵切除 1800件、執刀数は肝切除1300件膵切除800件を数えます。順天堂大学では、これまでの経験に加え、大学病院の総合力を生かして内科的合併症をかかえた患者さんや高齢の患者さんも積極的に治療していく方針です。高齢化社会の中で内科的合併症を持った患者さんが多くなり、専門病院にはない総合力が順天堂大学にはあると思います。これまで癌専門病院で切除適応外としていた患者さんも連携し積極的に治療していきたいと考えております。

肝胆膵癌は残念ながら現在でも予後不良の難治癌であり手術も高難度ですが、新規抗がん剤や術式開発により手術の適応範囲は広がり、予後も向上しております。一方、出血の少ない手術やきめ細かな周術期管理により、高難度手術も経験豊富な病院で行えば安全に施行できるようになりました。順天堂大学肝胆膵外科では難治癌への挑戦を続けるとともに、低侵襲手術の開発に注力していきたいと考えています。低侵襲手術は高難度の手術が多い肝胆膵外科の分野で遅れていた領域ですが、高齢者など脆弱な患者さんに対しては恩恵が大きいと思います。現在の腹腔鏡手術はまだ開発の余地はあり、次世代の低侵襲手術の主流となるロボット手術の開発が急速に進んでいます。私はこれまでの開腹手術の経験を活かし、安全や根治性を犠牲にすることなく、真の意味での低侵襲手術を推進したいと思っております。

当科のモットーは安全で高質な外科治療を迅速に患者さんに届けるということです。"技"をもって人を治す"精神を大切にし、患者さんの期待に応えていきたいと思います。

肝・胆・膵外科 教授 齋浦明夫