低侵襲医療の取り組み

 医療機器の発展にともない、小さな傷で行う手術"低侵襲手術"が可能となってきました。当科では、患者さんにとってメリットの多いこの低侵襲手術を積極的に行っています。
 2020年4月からは、ロボットを用いた膵臓手術が保険適応となりました。当科は厳格な施設条件を満たし、保険診療でこのロボットを用いた膵臓手術を行える、日本でも数少ない施設のうちのひとつです。

低侵襲手術とは?

 従来、お腹の手術は腹部を広く開けて行っていたため(開腹手術)大きな傷が残っていました。低侵襲手術では、お腹に数カ所、直径1cmほどの穴を空け、その穴からカメラや手術器具を入れて手術を行います。傷が小さいため、患者さんにとっては下図のような様々な利点が得られます。
一方で、精密な操作が難しい、直接臓器を触ることができないなど、デメリットもあります。血管に浸潤する進行癌などでは、安全かつ根治性の高い操作ができないため、低侵襲手術の適応とはしていません。

低侵襲手術の利点

2つの低侵襲手術

低侵襲手術は、現在、腹腔鏡手術、ロボット手術の2種類に分類されます。

【腹腔鏡手術】

腹腔鏡手術では、お腹にガスを入れて膨らまし、カメラの画像を見ながら、先にハサミなどの器具がついた長い棒(鉗子)で手術を行います。
中を見ることのできない箱にカメラを入れ、カメラの映像を見ながら棒を使って箱の中で糸を結ぶ操作を想像してみて下さい。動画は、膵臓の腹腔鏡手術で、脾動脈という血管を探りあて、糸で縛る操作です。精密な操作を行うのは難しく、熟練の技を要することが理解いただけると思います。

【ロボット手術】

 ロボット手術でも、腹腔鏡手術と同様、お腹の中をカメラで見ながら、鉗子を使って手術を行います。
 腹腔鏡との違いは、外科医が鉗子をリモートで操作すること、そしてこのロボット鉗子で非常に精密な操作が行える点です。

 我々が使用するロボット、「ダビンチ」のメーカー名は"INTUITIVE(直感的な)"です。
 ロボット手術では、まさに直感的な操作で、自分の手を動かすのと同じように、鉗子を自由に操ることができます。

 外科医は、まるで自分の手を患者さんのお腹に入れているかのような感覚で手術がおこなえます。
 ロボット手術は、今まで我々が開腹手術で培ってきた経験を大きく活かせる手術なのです。

 実際のロボット膵切除の動画です。ロボット手術では、鉗子の先に関節がついているため、腹腔鏡手術の直線的な動きにくらべて可動域が広く、かつ柔らかい操作が行えることがおわかりいただけると思います。

 現在、 肝臓・胆道・膵臓領域で、ロボット手術の保険適応となるのは、膵臓疾患に対する膵頭十二指腸切除、膵体尾部切除術のみです。当科では、前述のように良性または低悪性度の病気にのみロボット手術の適応としています。しかし、その精緻な動きを活かし、開腹でしか手術できなかった進行癌に対しても、今後適応を広げられる可能性があります。実際に、海外では血管に浸潤した進行癌に対しても、ロボットで切除・血管再建術を行う施設もあります。また、膵臓以外に肝臓の病気に対しても、ロボット手術が適応となる可能性もあります。

 私たちは、"病気を治す"という手術の本質を忘れることなく、安全性が保たれていれば積極的にロボット手術の適応を広げて行きたいと考えています。そのために手術の修練を重ね、また他施設から発信される新しい知見にもアンテナを張り、ロボット手術を進化させていきます。