主任教授挨拶

当講座が目指すもの

講座の人材育成の目標として、以下の7つを掲げています。

  1. Human beingとして、人の痛みが理解できる
  2. Perioperative physicianとして、患者全体が診られる
  3. Physician scientistとして、evidenceに基づいた客観的判断ができる
  4. Generalistとして、どのような患者にも対応できる
  5. Specialistとして、自分の得意分野を持つ
  6. Cosmopolitanとして、世界で活躍する
  7. 個人の多様性に対応するプログラムを備える

1. 人として、人の痛みが理解できる:仁の心

人間として人の痛みが理解できることは非常に大切なことです。人の痛みを理解することは、順天堂大学の学是「仁」すなわち、「人ありて我あり、他を思いやり、慈しむ心」につながります。こうした思いやりだけでなく、それを科学として突き詰め、臨床に応用するのが、私たち医師の役目であると考えています。特に、周術期の痛みや、ペインクリニック、緩和ケアなどで活躍する私たち麻酔科医、ペインクリニシャンにとっては、人に痛みを理解し、それをなんとか和らげ、取り除くことが重要な役目になっています。

2. Perioperative physicianとして、患者全体が診られる

麻酔科医は、術中から術後にわたって患者さんの痛みをとるだけではありません。重大な全身合併症をもつ重症の患者さんや、高齢の患者さん、新生児、妊婦さんなどさまざまな背景をもつ患者さんが手術を受けます。術前評価を十分に行い、綿密な麻酔管理計画、鎮痛管理を含む術後管理計画を立てて手術・麻酔に臨む必要があります。術中の安全は保てても、術後に心筋梗塞や心不全、脳卒中、肺炎、腎不全など多くの合併症が起こりえます。これは、重症患者さんだけでなく、大きな手術を受けた患者さんでは、特に重大な問題となります。
 術前から術中、術後にわたって全身管理ができるperiopertive physicianとなる必要があります。

3. Physician scientistとして、evidenceに基づいた客観的判断ができる

麻酔やペインクリニック、緩和ケアにおいては、経験も重要です。しかし、それがひとりよがりのものであってはなりません。医学はArtであるとともに、科学Scienceでもあります。
 麻酔科学、疼痛制御学という2つの大学院のコースもあります。臨床研究のほか、基礎医学の研究室で本格的な研究も可能になっています。社会人大学生を含め、現在10名以上の大学院生が、臨床医学を学び専門医を目指しつつ、研究に励んでいます。日頃から持つ疑問点を解決し、少しでも患者さんのためになるような医療をするために、優れたevidenceを築いていくことが重要です。
 正しい医療を行っていくためには、論文を十分に読みこなしていく能力も必要です。また、新しい医療を生み出すためには、自分たちのやっている医療を科学者の目で見る必要があります。

4. Generalistとして、どのような患者にも対応できる

手術やペインクリニック、緩和ケアを受ける患者さんたちは、それぞれ異なった背景や、合併症をもち、関心事も異なっています。そのような多様な患者さんたちが、大きな手術や先進的な治療を受けています。こういった患者さんたちに柔軟に対応することが大切です。複雑でダイナミックに変化する要因に対応するためには、応用力が要求されます。そのためには、多くの症例を経験する必要があります。一人でも多くの患者さんの診療に当たり、その一人一人から学んでいくことが肝要です。順天堂医院を含めた順天堂大学医学部附属病院は、その点で全国有数の病院です。麻酔科管理手術症例数も、ペインクリニックで診療する外来患者数も、全国でトップクラスであるだけでなく、患者さんの重症度が高いことも多く、疾患もバラエティーに富んでいます。優れた外科医たちが先進的な手術を行っています。順天堂とその附属病院は、そのような機会を与えてくれる病院です。
 Generalistとしての能力を伸ばす必要があります。

5. Specialistとして、自分の得意分野をもつ:専門医の取得

優れた麻酔科医となるためには、まず医師としての実力を備えている必要があります。その上に、麻酔科学や、ペインクリニック、緩和ケアなどの領域において研鑽を積む必要があります。さらにその上に、Specialistとしての力をつける必要があります。
 症例が豊富さを利用して、それぞれの研修レベルに合わせた研修が附属病院においてできるようになっています。心臓手術や小児外科手術、呼吸器外科手術などに特化した手術室における研修期間や、ペインクリニックにおける研修期間を設けています。心臓麻酔では林田教授、小児麻酔では西村教授、ペインクリニックでは井関教授が指導的な役割を果たしています。さらに移植外科の麻酔に造詣が深い佐藤教授、産科麻酔が専門の角倉教授などを迎え、より専門性が高い教育・トレーニングができるように目指しています。
 研修後には麻酔科認定医、麻酔科専門医、ペインクリニック専門医などの資格を得ることができます。心臓手術の麻酔においては、希望者は心臓麻酔専門医、経食道心エコー法における認定資格(JB-POT)などを得られるようにしています。
 これらの資格は、研修をした人たちが今後、専門医として発展的に活動するためには必須のものです。さまざまな領域において実力を十分に持った専門医となってもらいたいと願っています。

6. Cosmopolitanとして、世界で活躍をする

日本にとどまらず、是非、世界を目指してほしいと願っています。研究結果を海外の学会で発表したり、英文論文を執筆したりすることで世界の麻酔科学の発展に貢献してほしいと思っています。また、米国やカナダなどへの留学者もいます。米国の医療の一線で活躍している医局員もいます。異文化を知るためにも、世界を目指してほしいと思います。

7. 個人の多様性に対応するプログラム

人それぞれに適性も異なり、希望も異なっています。基本方針の下、そのような多様性に対応するトレーニング・教育プログラムがあります。

①専門医取得コース:
3年で手術室における麻酔の基本を学び、その後、subspecialtyについて極める。Generalistへの道も選択できる。

②専門医+学位取得コース:
専門医認定に必要なトレーニングを受けるとともに、大学院に進学して臨床・基礎研究を行う。大学院への進学はトレーニング中のいつでも可能。在学中は有給助手として働く。

③麻酔科標榜医取得コース:
初期研修終了後、3年で24か月の手術室における麻酔のトレーニングを受け、麻酔科標榜医を取得する。

④Subspecialtyコース:
認定医以上の医師が対象。麻酔科の中でも専門性が高い心臓麻酔、呼吸器外科麻酔、産科麻酔などを1年間のトレーニングを受ける。ペインクリニック専門医を目指すペインクリニックコースもある。

以上の方針を理解していただき、自分の希望に合ったコースを選択していただければと思います。