受診に際してのお願い

専門外来につきましては、完全予約制となっております。
受診にあたっては、紹介状(診療情報提供書)が必要です。
(前回の受診日から6ヶ月以上経過した方を含む)
紹介医療機関から、地域医療連携室に直接ご連絡ください。
リハビリテーション科

ボツリヌス治療外来

藤原 俊之
ボツリヌス治療とは脳卒中、頭部外傷、脊髄損傷、脳性まひ等による痙縮(手足の筋肉のつっぱり)に対して行う新しい治療法です。緊張した筋肉に緊張をやわらげる薬剤(ボツリヌス)を注射して痙縮を軽減させる治療です。

注射により「手が開きやすくなり、使いやすくなった」、「歩きやすくなった」、「装具が履きやすくなった」、「指がのびて洗いやすくなり、清潔をたもてるようになった」「着替えが楽になった」、「おむつの交換が楽になった」など日常生活の改善や介助量の軽減などの声をいただいています。

ボツリヌス治療外来を担当する藤原俊之教授は日本リハビリテーション医学会専門医ならびに日本臨床神経生理学会(筋電図・神経伝導)専門医を持ち、ボツリヌス治療に必要な筋電図検査の知識、経験を十分に持ち、筋電図・電気刺激を用いての選択的なボツリヌス治療の実績は1000件以上で、日本における筋電図・電気刺激を用いたボツリヌス治療の第一人者の一人です。
是非一度当院のボツリヌス治療外来へご相談ください。

こんな症状のある方はご相談ください


ボツリヌス治療外来01

当院でのボツリヌス治療の流れ

ボツリヌス治療外来(月曜午後)は完全予約です。紹介状をご持参のうえ、火曜または金曜のリハビリテーション科外来を受診してください。
医師が機能障害、痙縮の状態を診察してボツリヌス治療の適否を判断し、治療計画を立てます。

ボツリヌス治療外来02
ボツリヌス治療外来03

ボツリヌス治療においては筋電図・電気刺激またはエコーを用いての選択的ブロックが推奨されています。当院では一部のお子さんを除いて、基本的には全例で筋電図・電気刺激を用いての選択的ブロックを行います。深部の筋肉にも適切に薬剤を注入することができ、同じ薬剤の用量でも高い効果を示すことが可能です。

装具外来

当院リハビリテーション科では毎週金曜日の午後に装具外来を行っております。
装具とは、身体の一部を外部から支えて関節の動きを制限したり、保護したりすることで、変形の矯正、関節運動の補助、疼痛の軽減などを図る医療用具です。装具は、ギプスのように
一時的な固定のためではなく、生活の中で長く使用するために作られるので、重量や耐久性に関わる素材や外観、そして価格に配慮して作製されます。

当院ではリハビリテーション科専門医、義肢装具専門医が患者さんの症状に応じて、適切な装具を処方、作成しております。

対象となる患者さんは脳卒中後片麻痺、脳性麻痺、二分脊椎、偏平足、下肢切断、関節リウマチ、腰痛症等多岐に渡りますので、診療情報提供書をご持参のうえ、当院リハビリテーション科藤原教授外来(火曜午前、金曜午前)にご相談ください。

装具・補装具の一例をご紹介します。
  • 短下肢装具(AFO)
  • 足関節装具(AO)
  • 足底板
  • 手関節装具
  • 車椅子、バギー
  • 座位保持装置
  • 立位保持装置
  • 交互歩行装具(RGO)
  • 保護帽
  • 義足
短下肢装具(AFO) 短下肢装具(AFO)
座位保持装置座位保持装置 
交互歩行装具(RGO)交互歩行装具(RGO)

相談例

  • 片麻痺で歩行が不安定な方
  • 関節リウマチで靴に困っている方
  • 手の変形や痛みに悩んでいる方
  • 外反母趾で足の痛みに困っている方
  • 外反、内反偏平足で悩んでいる方
  • 腰痛があり困っている方
  • その他、装具でご相談のある方

筋電図検査

当院リハビリテーション科では毎週火曜日午後に筋電図検査(神経伝導検査・針筋電図検査)を行っております。

神経伝導検査

神経伝導検査は、末梢神経の伝導状態を電気生理学的に評価することにより、神経・筋肉の機能を解析し、末梢神経疾患、脊髄疾患の診断、病態の把握に活用するものです。末梢神経を皮膚上で電気刺激し、誘発された電位を記録し、伝導速度、振幅などを測定します。運動神経刺激によって筋肉で誘発される波形を検査する運動神経伝導検査と、感覚神経自体の電位の波形を検査する感覚神経伝導検査とに大別されます。

刺激をすることで神経や筋肉の反応が得られ、得られた反応を用いて伝わる速さを測定したり、波形の分析を行います。この検査で異常が確認されたときには、障害の部位や障害の程度、障害の範囲を判断することができる場合があり、いくつかの神経を調べる必要があります。

針筋電図検査

筋電図検査とは筋線維の電気活動を記録して、末梢神経や筋肉の疾患の有無を調べる検査です。

針筋電図検査は、筋肉に針電極を刺入し、そこから発生する電位を検出することで病態診断を行います。脊髄にある前角細胞と呼ばれる運動神経以下の運動神経と筋肉の異常を検出するために行われ、これらの部位に疾患がある場合には、その障害がある部位や、疾患の重症度、経過などを評価することもあります。

表面筋電図検査は四肢や顔面などに不随意に起こる運動がみられる場合に時として有用です。この検査の利点は、針電極や電気刺激を用いないので、疼痛を伴わないことです。

検査の際の注意

神経伝導検査は、神経を電気で刺激するため、少し疼痛を伴う検査です。なるべく力を抜き、同じ姿勢でいる方が少ない数の刺激で検査を行うことができますので、患者さんの協力が必要となります。
皮膚の上に電極を貼り、神経に体表から刺激を加えます。腕では通常、正中神経と尺骨神経でそれぞれ運動神経線維と感覚神経線維を調べ、足では脛骨神経、腓骨神経、腓腹神経を調べますが、いずれの神経をどの程度調べるのかは、症状や対象疾患により異なります。

針筋電図は、筋肉に直接針を刺すので、痛みを伴う検査です。筋肉に針を刺して、安静時および力を入れていただいた時について解析します。これを症状などに応じて複数回繰り返します。よって検査中、力を入れていただくことが必要であり、患者さん自身の協力が不可欠です。 針を刺した後もほとんど出血はなく、その後入浴することも差し支えありません。
神経伝導検査の様子01神経伝導検査の様子
神経伝導検査の様子02

嚥下造影検査

当院リハビリテーション科では毎週水曜日と木曜日の午後に嚥下造影検査を行っております。

摂食・嚥下障害

摂食・嚥下障害とは?

食物を体内に取り入れるために働く機能を「摂食・嚥下機能」と言います。食べ物や水分が上手に飲み込めなくなったり、その結果食べたものが誤って気管や肺の方に行ってしまったりすることを「摂食・嚥下障害」と言います。
「摂食」とは食べること、食べ物を摂取する行動を指し、「嚥下」とは食べ物を食塊というひとまとまりにして口から胃へと送り込む一連の輸送機構を指します。
摂食・嚥下障害は私たちが生きていくために必要な栄養摂取という働きも低下させてしまうため、栄養が不十分で体重や筋力、体力が低下してしまうことにもつながります。

誤嚥とは?

食べたものが気管や肺に入ってしまうことを「誤嚥」と呼びます。誤嚥により引き起こされる肺炎を「誤嚥性肺炎」と呼びます。肺炎を起こすと生命に関わるためできるだけ誤嚥を予防することが重要です。
誤嚥をすると一般的にはむせますが、気管の感覚低下などにより誤嚥してもむせない場合があります。これを「不顕性誤嚥」と呼び、むせないことで誤嚥しているか否かの判断がつきづらくなるため、不顕性誤嚥があると誤嚥性肺炎のリスクが高くなります。

摂食・嚥下の生理学

以下の5期モデルをもとに、正常の摂食・嚥下運動がどのように起こっているかを知り、それを損なう病態が嚥下障害の原因になると考えるとわかりやすいです。

摂食・嚥下の5期

摂食・嚥下は、いくつかの要素に分けることができます。
1983年、Leopoldらはその過程を5つの「期」に分類しました(表1)。
1.先行期(認知期) 視覚、嗅覚、触覚などにより、食べ物を認識し、口へ運ぶ時期。
目の前のものが食べ物であるかどうか、硬いか柔らかいか、熱いか冷たいか、好きか嫌いかを判断し、何をどのようなペースで食べるかを判断する時期。             
2.準備期(咀嚼期) 認知された食物が口の中に取り込まれたあと、咀嚼し食塊という柔らかい一塊にまとめることによって飲み込みができる状態にする時期。顎、舌、頬、歯を使って、唾液と混ぜ合わせている。
咀嚼が必要でないものも、一定の大きさにまとめながら飲み込みの準備をしている。
3.口腔期 口から咽頭に食塊を送り込む時期。舌の動きが大きく影響する。舌は口蓋と接触し、口腔内の圧を高める。頬や口唇もその役割を補う。
*咀嚼と嚥下は並行して行われるので、咀嚼後形成された食塊は順次咽頭へ送り込まれ、実際は準備期と口腔期は並行して行われている。
4.咽頭期 「ゴックン」という嚥下反射により食塊を咽頭から食道へ送る時期。意識的な反射惹起も可能な一方で、食物が達すると自然と嚥下反射が起こる。嚥下反射時は、軟口蓋が挙上して鼻咽腔を閉鎖し食物の逆流を防ぎ、咽頭収縮や舌骨・喉頭の前上方への挙上が起こるとともに食道入口部が開大する。喉頭蓋は反転する。声門は閉鎖して一時的に呼吸が停止し、気道防御機構が働いて誤嚥を防止する。
5.食道期 蠕動運動と重力により食塊を食道から胃へ移送する時期。食道入口部の筋は収縮し、食塊が逆流しないように閉鎖する。
表1. 摂食・嚥下の5期

摂食・嚥下障害の原因

大きくは次の3つに分けられます。1)
①腫瘍やその手術後、炎症などにより飲み込むときに使う舌やのどの構造そのものが傷害されている場合(器質的原因)
②構造物の形には問題がなくても、それを動かす神経・筋肉などに原因がある場合(機能的原因)
 例:脳血管障害、神経疾患、筋疾患、禁食が続いたことによる筋力低下、加齢性変化など
③心理的な原因が関与している場合
 
嚥下で使用される構造物、すなわち口唇、舌、咽頭などは、呼吸や発音にも使われます。嚥下障害のある人は、呼吸障害や構音障害を伴っていることも多いです。
摂食・嚥下障害により生じる問題点
摂食・嚥下障害により生じる問題点をまとめると以下のようになります。
1.誤嚥性肺炎や窒息の危険がある
2.脱水や低栄養などの合併症を引き起こす
3.食べる楽しみを喪失する
表2. 摂食・嚥下障害により生じる問題点
 
楽しいはずの食事がうまくできない、苦しい、また危険だから食べ物を食べてはいけないと言われてしまうことはつらい状態です。少しでも上手に食べられないか、評価やリハビリテーションを行うことが重要となります。

摂食・嚥下障害への対応

問診や患者さんの様子から、何らかの障害が発見されたら、評価や検査を行います。その結果に基づいて、口から食べることが可能か否か、食べても良い場合にも食べる時の姿勢や食事の形態や量にどの程度の条件がつくのか、また口から食べられない場合には、どのような栄養摂取方法が適切か考えます。
同時に、決定した栄養摂取方法を実践しながら、どのような治療や訓練を行なっていくのが最適であるかを判断し、実施します。
図1. 摂食・嚥下障害への対応の概要
図1. 摂食・嚥下障害への対応の概要
 
スクリーニングテスト
反復唾液嚥下テスト 患者さんには頚部をやや前屈させた座位またはリクライニングの姿勢で、唾液を嚥下してもらいます。30秒間で可能な空嚥下の回数を評価し、30秒間で2回以下を異常とします。
この際に、喉頭隆起および舌骨部にそれぞれ評価者の指をあて、喉頭や舌骨の挙上の度合いも合わせて評価します。
改訂水飲みテスト 冷水3mlを口腔に注ぎ患者さんに嚥下してもらい、その後、可能であれば追加して嚥下運動を2回行ってもらいます。評価は、嚥下可能かどうか、むせるかどうか、呼吸状態に変化があるかどうかを確認し、嚥下障害の程度を判定します。
頚部聴診法 食塊を嚥下する際の咽頭部の嚥下音と、嚥下前後の呼吸音を頚部より聴取する方法。音の変化により、誤嚥や下咽頭部の貯留を判定して嚥下障害を評価することが可能です。
表3. スクリーニングテスト

嚥下造影検査

この検査は、X線透視を用いて造影剤入りのとろみ水や液体、食べ物を摂食・嚥下する様子を観察する検査で、嚥下時の食塊の通過の状態や誤嚥の有無・程度を可視化することができます。摂食・嚥下の5期のうち、どの部位の障害がどの程度であるかを評価することができます。また、検査中に姿勢や食べ物の形態・量をさまざまに変化させることで、これらがどのような条件であると最も安全に食べられるかを評価することができます。
検査結果により、今後の栄養摂取経路、食事形態や量、食事時の姿勢の調節、嚥下訓練の適応、方針などを決定します。
検査には、誤嚥・肺炎のリスク、造影剤アレルギーや副作用のリスクがあります。

摂食・嚥下リハビリテーション

  (器質的)口腔ケア

歯ブラシ、スポンジブラシなどを使って口の中の状態をきれいに保ち、歯周病や虫歯をはじめとする様々な口に関するトラブルを予防します。不衛生な口腔状態のまま評価や訓練を行うと、誤嚥性肺炎の発症率が上がる恐れがあります。

間接(基礎)嚥下訓練

食べ物を利用しない基礎訓練です。誤嚥の危険が高く直接嚥下訓練を行えない場合に行う特異的な訓練と、リラクゼーションとして摂食前に準備運動的に行う訓練があります。

直接嚥下訓練

食べ物を利用した訓練を指します。姿勢、食形態や量を患者さんの機能に合わせて選択し、そのほかの代償的な嚥下法も必要に応じて組み合わせながら行います。機能の変化に応じて安全かつ適切な難易度の食事内容を段階的に進めていきます。
この訓練には、誤嚥や肺炎のリスクがありますので、適切な内容をプランし、誤嚥徴候に注意しながら進める必要があります。

手術

(摂食・)嚥下障害に対する手術治療には、誤嚥のリスクを低下させて経口摂取を可能にする目的の「嚥下機能改善手術」と、重度の嚥下障害であるが故に、誤嚥をなくすための気道と食道の分離を目的とする「誤嚥防止術」があります。後者では、発声機能が失われるため、術後のコミュニケーション障害についてよく検討した上で治療を選択する必要があります。

参考文献

1. 藤島一郎. 口から食べる嚥下障害Q&A 第4版. 中央法規出版. 東京. 2011
2. 植松宏(監修). セミナー わかる! 摂食・嚥下リハビリテーション1巻. 評価法と対処法. 医歯薬出版株式会社. 東京. 2005
3. 聖隷嚥下チーム (著), 藤島 一郎 (監修). 嚥下障害ポケットマニュアル第4版. 医歯薬出版株式会社. 東京. 2018