婦人科領域における内視鏡手術の対象疾患

婦人科内視鏡手術の対象疾患は数多くありますが、当センターではほぼ全ての術式が施行可能です。(左記は全て医療保険の適用あり)
婦人科領域における内視鏡手術の対象疾患

主な疾患に対する腹腔鏡下術式と代替治療

子宮筋腫
子宮筋腫
腹腔鏡手術 子宮筋腫核出術、子宮全摘術
その他の治療 経過観察、開腹手術、子宮動脈塞栓術(UAE)、集束超音波治療(FUS)
子宮内膜症
子宮内膜症
腹腔鏡手術 卵巣チョコレート嚢腫摘出術、付属器切除、癒着剥離術
稀発部位内膜症に対する手術(腸管、膀胱、尿管、臍など)
その他の治療 経過観察、ホルモン療法、開腹手術
卵巣嚢腫
卵巣腫瘍
腹腔鏡手術 卵巣腫瘍摘出術、付属器切除、
その他の治療 経過観察、開腹手術
異所性妊娠(子宮外妊娠)
子宮外妊娠
腹腔鏡手術 卵管摘出術・卵管線状切開術、卵管以外の異所性妊娠摘出術
その他の治療 経過観察、開腹手術、薬物療法(MTX全身投与・腫瘤内薬剤注入法)
不妊症
不妊症
腹腔鏡手術 卵管痛色素術、所見に応じた治療(癒着剥離術、子宮内膜症病巣除去術)
その他の治療 タイミング法、人工授精、生殖補助医療(ART)、子宮鏡・卵管鏡手術
子宮体がん・頸がん
子宮体がん・頸がん
腹腔鏡手術 子宮癌根治術(広汎術式含む子宮全摘術、付属器切除術、リンパ節郭清術)
その他の治療 ロボット手術、開腹手術、抗がん剤投与、放射線治療
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子宮筋腫
子宮筋腫

子宮筋腫は、30歳以上の女性の約20~30%にみられるとてもポピュラーな疾患です。このうち手術が必要になるのは数%です。子宮筋腫の手術には、子宮を残す子宮筋腫核出術と子宮全摘術の2種類があります。
子宮摘出術も腹腔鏡で行っております。
また手術以外の治療として、子宮動脈塞栓術も開始しました。

術式の一例(子宮筋腫核出術)

子宮筋腫_01子宮筋腫表面に止血防止の目的のピトレッシンを局所注入し、電気メスで切開を加えます。


子宮筋腫_02筋腫核を索引して核出します。


子宮筋腫_03
子宮筋層・子宮表面を吸収糸で縫合します。
→摘出した筋腫核は電動モーセレーターで細切して、体外へ回収します。
子宮内膜症
子宮内膜症

本来子宮の内側にあって受精卵を受け入れる機能を持ち、月経のときに剥がれて出血する子宮内膜が子宮以外の場所にできる病気です。月経のたびに骨盤内に生着した組織からも出血を起こすため、腹腔内に炎症性変化や癒着を引き起こし、生理痛や性交痛などの痛みや不妊症の原因となります。骨盤子宮内膜症は3種類の病態に分類できますが、子宮卵巣以外の他臓器にできるタイプ(稀発部位子宮内膜症)もあります。
子宮内膜症_01
卵巣嚢腫
卵巣嚢腫
卵巣にできる良性の腫瘍で嚢胞線種、卵巣チョコレート嚢胞(卵巣にできる子宮内膜症)、皮様嚢腫の3つが代表的です。放っておくと卵巣全体がねじれたり(茎捻転)や嚢腫の内容が流出したり(破裂)、種類によっては癌化すること(悪性化)もあります。
手術方法には、全ての手技をおなかの中で行う体腔内法と、卵巣ごと体外に引っ張り上げて手術を行う体腔外法があります。

術式(卵巣嚢腫摘出術)

卵巣嚢腫_01卵巣嚢腫の内容液を吸引し、卵巣周囲の癒着を剥離


卵巣嚢腫_02卵巣嚢腫の嚢胞壁(カプセル)を摘出


卵巣嚢腫_03卵巣を縫合して形成する。
子宮体がん(初期)
子宮体がん(初期)

子宮体がんとは、子宮の内側にある子宮内膜が癌化した状態をいいますが発症年齢としては、50-60歳が最も多いとされています。不正出血や子宮内膜肥厚(超音波検査やMRIにより診断)がきっかけで発見される場合が多く、子宮内膜の組織診で確定診断されます。現在のところ、腹腔鏡手術はIa期という初期の子宮体がんだけに保険適用されています。

術式:腹腔鏡下子宮体がん手術

子宮体がんにおける標準術式は、子宮と付属器の摘出に加えて、状況により骨盤リンパ節郭清を行います。
子宮全摘術(準広汎子宮全摘術)01子宮全摘術(準広汎子宮全摘術)
骨盤リンパ節郭清術01骨盤リンパ節郭清術
異所性妊娠(子宮外妊娠)
通常は子宮内腔に着床する受精卵が、子宮以外の場所に着床することを子宮外妊娠と総称します。
卵管におこった場合の治療法には、卵管を切除してしまう卵管摘出術と卵管を残して子宮外妊娠の部分のみを摘出する卵管線状切開があります。
後者では妊娠組織が残ってしまう可能性もあり、体外受精の普及も相まって、最近では卵管摘出術が主流となってきました。
異所性妊娠(子宮外妊娠)
異所性妊娠(子宮外妊娠)_01
遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)

遺伝性乳がん卵巣がん症候群_01

遺伝性乳がん卵巣がん症候群とは遺伝性のがんの1つです。BRCA1あるいはBRCA2遺伝子の変異を生まれつき持っています。その場合は、家系の中に乳がんや卵巣がんを発症された方が複数いることがあります。

HBOC:Hereditary Breast and Ovarian Cancer

予防的両側卵巣摘出術

遺伝性乳がん卵巣がん症候群_02

BRCA1/2遺伝子検査で変異が見つかった場合、自費にはなりますがご希望により腹腔鏡下予防的卵巣摘出術をお受け頂く事ができます。 ただ中には手術が不要の場合もありますので、まずは腫瘍外来の医師にご相談ください。
参考文献)
遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)をご理解頂くために(日本 HBOC コンソーシアム 広報委員会)、ASCO 資料 第2版(ASCO American Society of Clinical Oncology 米国臨床腫瘍学会