治療について
ここでは睡眠時無呼吸症候群の治療について述べます。
睡眠時無呼吸症候群は大きく分けると2つのタイプに分かれます。上気道の閉塞による「閉塞性睡眠時無呼吸 (OSA) 」と、呼吸中枢の呼吸リズム調節の問題によって起こる「中枢性睡眠時無呼吸 (CSA) 」です。
閉塞性睡眠時無呼吸 (OSA) の治療
睡眠中に舌根 (舌の付け根) が喉に落ち込み、上気道を閉塞してしまう状態です。肥満の方、首が短い方、下顎が小さい方、舌や扁桃が大きい方は解剖学的に上気道が閉塞しやすくなっています。
OSAを治療する目的は、OSAによって起こる日中の眠気などの自覚症状の軽減とそれによる生活の質(quality of life: QOL)の改善、OSAが有する心血管への悪影響を取り除き心血管疾患の発症や再発のリスクを軽減することです。患者さんそれぞれの背景や基礎疾患の存在によってこれらの治療目的の重要性が異なりますので、それらに即した治療のご提案を心がけております。
根治するのは難しいことが多いのですが減量が奏功することもあります。外科手術も根治の可能性がありますが適応が限られており、成人においては行われることは非常に少ないです。小児ではアデノイド・扁桃肥大の場合は手術も行っています。対症療法としては口腔内装置や持続気道陽圧(continuous positive airway pressure: CPAP)装置を用いた治療が中心となります。以下に当センターにおいて検討される頻度の高い治療方法をご紹介いたします。
① CPAP療法
睡眠中に鼻マスクをつけて気道に空気を送り、気道の閉塞を防ぐ治療です。CPAP療法は有効性と安全性が確認され、現在世界的にOSA治療の第一選択となっています。「睡眠中に鼻にマスクをつけて空気が送られてくる状況で眠れるのか?」と不安に思われるかもしれませんが、適切な圧が設定されることで、睡眠の質を損なわずに無呼吸を治療することができます。またCPAPの装置そのものも年々小さくなっており、マスクもより装着感が良いものに改良されています。治療開始後、適切な圧設定を確認するためにCPAPをつけた状態で検査を行うこともあります。
保険診療下ではCPAPを医療機関からレンタルして使用することになります。そのため、厳密な適応基準が設けられており、治療継続のために定期的な外来受診が必須となります。

② 口腔内装置(マウスピース)
睡眠中に下顎の位置を少し前方に移動した位置で保持するためのものです。下顎が前方へ移動する事により舌根周囲の上気道のスペースが確保されます。手軽で持ち運びにも便利です。ただし、ご自身の歯がない・少ない場合、動揺歯がある場合、顎に痛みがある場合は適応外となることもあります。口腔内装置も保険診療下で作成することが可能で、医科での診断に基づき歯科口腔外科で作成します。装着感や調節性に優れた口腔内装置もありますが、保険適応はなく患者さんの自己負担になります。

③ 外科手術
根治につながる可能性がありますが、適応が限られていることなどから実際に行われることは少なくなってきています。肥満の関与が少なく、アデノイド (喉の奥にあるリンパ組織) や口蓋扁桃の肥大が主な原因と考えられる場合で、特に小児の重症例では有効な場合があります。鼻閉が強い場合は、CPAPや口腔内装置を使用しにくく、それらの効果が十分に得られないことから、鼻中隔矯正手術や鼻ポリープ (鼻茸) の摘出手術をお勧めすることもあります。当センターでは耳鼻咽喉・頭頸科の医師によって治療方針の判断が行われております。
中枢性睡眠時無呼吸 (CSA) の治療
CSAは脳や脳幹部の異常や、心臓病(特に心不全)や腎臓病などで見られる特殊な睡眠呼吸障害です。基礎疾患のない場合でも見られることがありますが、この原因はよく分かっていません。心臓病、特に心不全という病気では半数程度の患者さんに認められ、チェーンストークス呼吸という特徴的な周期性異常呼吸パターンを呈します。基礎疾患の状態の変化で改善することもあります。またOSAと同様にCPAPで軽減することもありますが、人工呼吸器に近いadaptive servo ventilation (ASV)が有効です。基礎疾患の状態やその他の合併疾患などの状況で治療の必要性や選択肢が決まります。当センターでは主に循環器内科と呼吸器内科の医師が治療に当たっております。