大腿骨内顆骨壊死

大腿骨内顆骨壊死(膝特発性骨壊死)も患者さんが多い疾患です。50歳以上の方に好発し、典型的には歩いていたりする時に急に膝に激痛が起こって発症します。また前から変形性膝関節症があって、その経過中に合併することもよくあります。通常、単なる痛み止めの薬や関節注射などの一時的な治療法では進行して人工関節などの手術になってしまうこともよくあります。

大腿骨内顆骨壊死(えし)とその治療法の説明

一般的に60歳以上の中高年の女性に多くみられる膝の病気です。主に体重のかかる大腿骨の内側、顆部(かぶ)という場所に骨壊死が生じます(図1)。特に発症時は膝の激痛を伴うことも少なくありません。 発症後1~2カ月はレントゲンでは変化がみられないため、特有な初期症状がない例では、この年代に良くみられる変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)と区別できないことも多くあります。初期のレントゲン所見は、病巣がある内顆(ないか)という部分の関節面の丸みが扁平(へんぺい)となります(図2)。続いて関節軟骨(かんせつなんこつ)の下にある骨が丸く透けて見えるようになり、その周りは骨が硬くなってみえる骨硬化(こつこうか)像を呈します。MRIという検査(図3)が診断には極めて重要であり、早期診断が可能です。病期が進むと、関節面は陥凹し、さらに関節の隙間が狭くなると末期の変形性膝関節症へと進行してしまうこともあります。

図1:膝の特発性骨壊死の模式図、図2:膝の特発性骨壊死のレントゲン像。関節面の陥凹と骨透亮像
図3a:MRI画像。膝関節を正面から見たところ、図3b:MRI画像。膝関節エオ横から見たところ

病態

大腿骨顆部の骨髄(こつずい)にはその場所を栄養する血行路が限定されるという特性が関与していると考えられています。ステロイドの連用に続発する場合もありますが、明らかな原因がなく発症する場合もあり特発性(とくはつせい)と呼ばれます。特発性は60歳以上の女性に多く発生し、高齢で骨が弱くなっているところに力が加わり、軽微な骨折がおこっていることが原因とも考えられています。しかしその詳細は未だ不明です。

治療

大きく分けて保存療法と手術療法の二つの治療法になります。壊死の大きさ、患者さんの症状、年齢などを総合的に判断して治療を選択します。壊死範囲が小さい例では自然に痛みが軽快することもあり、主に保存療法が選択されます。私達は現在この膝骨壊死症に対して以下の方法で治療を行います。

  1. 疼痛が強い時期には消炎鎮痛剤や注射など
  2. 自宅で行える運動療法やリハビリテーション指導
  3. 骨粗鬆症のお薬を用いる方法
  4. 靴の中に入れる中敷き(足底板)を用いる方法

特発性大腿骨顆部骨壊死症は上記の通り、まだ原因や病態が完全に解明されておらず、病期が進行するといずれ罹患部位の人工関節手術が必要となることもあります。これを早期発見した時点で有効な治療をすれば、病期進行を食い止めたり、壊死した部位を修復して人工関節手術を回避することが期待できますが、今日まで有効な治療方法は確立されていません。
壊死を起こしているからと、いきなり手術を行う必要はありません。患者さんの症状やレントゲンでの進行具合などから総合的に判断し、これらの方法を適宜組み合わせます。私達の以前の研究では、従来であれば人工膝関節手術になるような症例でも、保存療法のみで、痛み無く日常生活を営めるまで回復し、手術を回避できた患者さんが多いことがわかりました。
しかし範囲が進行してしまい、症状が改善しない場合には手術療法が選択されることもあります。手術には以下のオプションがありますが、その場合にも、病態や患者さんの年齢、活動性などに応じて術式を選択します。

大腿骨顆部骨壊死症は、まだ原因や病態が完全に解明されておらず、定期的な経過観察が必要となります。しかし、有効な治療を選択すれば病期進行を食い止めたり、外科的な侵襲(手術)を回避することも十分に期待できます。ご不明な点など、いつでも膝関節専門医の外来にてご相談下さい。