膝蓋骨脱臼

女子の中高校生に多い反復性膝蓋骨脱臼には、まずは下肢筋力訓練、脱臼防止サポーターで治療を行います。この方法で、なお脱臼する症例には、当科で30年近くの治療実績があり、世界でも信頼性の高いMPFL再建術で治療しています。

膝蓋骨脱臼について

膝関節のお皿(膝蓋骨:しつがいこつ)が、ほとんどは外側にはずれる疾患です。ジャンプの着地などの時に太ももの筋肉が強く収縮してはずれることが多く、はずれた時には膝に強い痛みや腫れを生じます。脱臼は自然に整復されることもありますが、整復されないときは病院での整復が必要です。
 膝蓋骨脱臼をするひとは生まれつきまれつきの素因を持っている(脱臼素因)ことが多く、膝蓋骨や大腿骨(だいたいこつ)の形や位置の異常、大腿四頭筋(だいたいしとうきん)の作用する方向と膝蓋腱(しつがいけん)の方向が異なっていることなどがあげられます。10歳代の女性に多く、初めて脱臼した後、約20~50%の方が繰り返して脱臼し、日常生活やスポーツ活動などで脱臼する不安感を感じます(反復性脱臼・亜脱臼)。また、脱臼時に膝蓋骨の内側を支える靱帯の断裂が起こることがあります。

診断

診断は受傷機転や症状、触診などで容易にできますが、稀に生まれつき脱臼位にあり(恒久性脱臼)、幼児期に始めて気づかれることもあります。通常、レントゲン検査やCT検査などで骨の位置や骨折の状態などを確認します。(下画像)

画像左:正常の膝蓋骨レントゲン写真、画像右:脱臼した膝蓋骨CT写真(骨折あり)

治療法、手術療法

初めて脱臼した場合、骨折がなければ装具などで固定をして加療します。以下の場合は手術療法が勧められます。

  1. 脱臼を繰り返し(反復性脱臼)ており、日常生活やスポーツに制限がある
  2. 初めての脱臼だが、反復性に成りやすい素因を持っている
  3. 脱臼時に比較的大きな骨折を伴っている

膝蓋骨脱臼を繰り返すと膝蓋骨の軟骨や大腿骨の軟骨に損傷が生じ、将来的に膝蓋骨と大腿骨の関節部分の変形性関節症になる可能性があります。手術の適応や方法は、脱臼の素因や年齢、病態によって様々なオプションがありますので、膝関節専門医とよくご相談下さい。

MPFL(内側膝蓋大腿靭帯/ないそくしつがいだいたいじんたい)再建術の紹介

自分の膝屈筋腱(ハムストリングス)の一部を用い、膝蓋骨と大腿骨をつないでいる内側の靭帯を再建します。大腿骨に孔をあけ(骨孔)、その中に移植腱を通し、膝蓋骨を外側に脱臼しないようにとめるバンドを作る手術です。適応は広く、良好な成績を挙げています。また、病態や素因に応じて、膝蓋骨外側の靱帯を切る手術や膝蓋腱という膝蓋骨から下腿の骨についている腱の向きを変える手術等を同時に行うこともあります。

MPFL再建術

術後について

手術翌日より車椅子移動、2日目より松葉杖を使いながら、手術した足を軽く着いて歩く訓練を開始します。術後10日目くらいで退院します。MPFL単独手術の場合、原則として膝の固定装具は必要ありません。長い期間、脱臼を繰り返しており筋力が低下している方の場合、術後早期には筋力回復が遅延することがあります。リハビリテーションが極めて重要です。スポーツは筋力回復を見ながら、6ヶ月以降に徐々に開始可能となります。