潰瘍性大腸炎に対する便移植療法

トピックス

・潰瘍性大腸炎に対する便移植療法の患者新規エントリーを再開しました。詳しくはfmt@juntendo.ac.jpにお問い合わせください(2020.9)

便移植療法の便提供者(ドナー)を募集しています。

・2021年11月17日の読売新聞 朝刊 13面 New門および読売新聞オンラインにて、当研究グループで行っている難病の潰瘍性大腸炎に対する便移植 臨床研究が紹介されました。ぜひご覧ください。

・NHK BS プレミアム 「ヒューマニエンス~40億年のたくらみ("腸内細菌"ヒトを飛躍させる生命体)」で当臨床研究が紹介されました。(2021.7.22)

・NHK 「ニュース シブ5時」で当臨床研究が紹介されました。(2021.6.30)

・NHK world 「Medical Frontiers」で当研究が放送されました。(2021.3.23)
オンデマンド配信はこちら

・「兄弟、同世代のドナーが便移植療法の長期治療効果を高める」
当臨床研究の論文が掲載されプレスリリースされました。(2020.6.25)

食物アレルギーとアトピー性皮膚炎の研究についてはこちら

潰瘍性大腸炎に対する水素ガス吸入の研究についてはこちら

 当科の便移植療法の臨床研究が、今年のアメリカ消化器病学会に注目研究として取り上げられ、動画が作成され放送されました(DDW TV 2017)。

新聞、テレビ、雑誌など主なマスメディア掲載情報はこちらからご覧になれます。

潰瘍性大腸炎とは

本邦において難病指定疾患である潰瘍性大腸炎の患者数は毎年約1万人の増加を認め、2017年の統計では20万人以上の患者さんがいると推定されています。潰瘍性大腸炎やクローン病は「増悪、寛解を繰り返し、治癒がない疾患」であり、新規薬物療法の登場で治療効果は飛躍的に向上したものの、無効例や、薬物起因性の副作用のリスクもあり、副作用の少ない根本的治療が望まれています。

便移植療法とは

 便移植療法は副作用の少ない治療として注目され、クロストリジウム・ディフィシル感染性腸炎では高い奏功率を示し、すでに欧米諸国では通常医療として行われております。しかしながら、潰瘍性大腸炎やクローン病に対する従来の便移植療法の治療効果については未だ不透明であり、投与方法、ドナー便の選択、投与回数などの方法について議論が行われています。

新しい腸内細菌療法-便移植療法+抗菌薬-

私たちはより効果的な腸内細菌叢の再構築と便移植療法の効果増強を狙い、便移植前に前処置として抗菌薬3種類を投与する「抗菌薬併用便移植療法」 (図1)を提唱し、2014年6月から臨床研究を開始しました。

図1:抗菌薬併用便移植療法の概念図
図1:抗菌薬併用便移植療法の概念図

便移植療法の研究成果

20歳以上の活動性のある潰瘍性大腸炎の患者さんを対象に行った本研究により、

①潰瘍性大腸炎に対する抗菌薬併用便移植療法の短期、長期間有効性。
②腸内細菌のバクテロイデスが治療効果と潰瘍性大腸炎の病勢に関連すること。
➂患者と便ドナーの関係が1.兄弟姉妹であること、2.年齢差が10歳以内(同世代)であることが便移植療法の長期治療効果を高めること。
④抗菌薬併用便移植療法による効果的な腸内細菌叢の再構築が、潰瘍性大腸炎の新たな治療法の確立につながる可能性。
が明らかになってきました。

本研究結果は、2017年11月、2018年12月に米国の学会誌「Inflammatory Bowel Disease」に掲載され(プレスリリース)、2020年5月に国際医学誌「Journal of Clinical Medicine」電子版で発表されました。(詳しくはプレスリリースからご覧になれます。)

また、現在基礎研究において、アルギン酸が腸内環境を整え、大腸炎を抑制することが明らかとなってきています。そこで、今回アルギン酸を使用する便移植の臨床研究を新たに開始しました。(単施設ランダム化比較試験 「潰瘍性大腸炎に対するアルギン酸併用便移植療法の検討」  UMIN000041968)

受賞

これから治療を希望されている患者さんへ

 2020年8月より、新規の便移植療法臨床研究(潰瘍性大腸炎に対するアルギン酸併用便移植療法の検討)に参加する患者さん、またドナーの方の募集を行っております。

対象者

満20歳以上の潰瘍性大腸炎の方

 今まで無治療の方、病状が現在落ち着いている方、重症の方はご参加いただけません。主治医が「活動性あり」と認めた方で、下記条件①~③を全て満たしていれば外来受診していただけます。

①主治医に当院での臨床研究参加の意思を伝えた上で、「診療情報提供書」の持参が可能である方
基本的には主治医での治療を継続していただき、主治医と当院とで連絡を取り合い、連携して進めていきます。

②定期的に受診が可能な方
外来では治療前(内視鏡検査あり)、便移植施行日(内視鏡下での投与)、治療1か月後、2か月後(内視鏡検査あり)、6か月後、12か月後、18か月後、24か月後に受診していただくほか、適宜、便の提出をお願いしています。そのため外来受診が難しい方は、参加条件の対象外になります。

③抗菌薬を3ヶ月間服用していない方
便移植の前処置として抗菌薬を3種類内服するので、過去3ヶ月間抗菌薬を服用していない方を対象としています。

費用について

治療等はすべて日帰りとなり、入院は必要ありません。
研究参加が確定した段階で、医療費は研究費で賄われます。
※初診時は通常医療として診療費が発生いたします。(初診料など)

交通費や遠方よりお越しで宿泊を要した場合の費用は自己負担となりますので予めご了承ください。

便提供者(ドナー)について

対象となる便提供者(ドナー)の方

20歳以上の健康な方
健康状態や既往歴、生活歴、抗菌薬の内服歴を問診させていただきます。ドナーの選択は患者さんの希望に沿って行います。提出していただいたドナー便は、冷凍保存され他の患者さんに投与される事もあります。
患者さんが既にご存知の信頼できる方をドナーとして望む場合、患者さんとドナー候補の方が医師の前で同席し、両者の意思を確認したうえで同意書に署名していただくことになります。

医師が健康状態に問題がないと判断したドナー候補の方についてはさらに
①採血検査
種々の感染症のチェックを検査いたします。
②便検査
便中にいるウイルスや感染症を引き起こすような細菌、寄生虫のチェックをいたします。
これら検査で異常を認めない場合、便を提供していただきます。
患者さんが既知でないドナーの方を希望した場合は、選択基準を満たしたドナー候補、もしくは既に参加した方を、研究者が患者さんに推薦いたします。この場合は、同意書はそれぞれ署名していただきます。
(※患者さんに合う最適なドナーを解析中の為、使用するドナーは随時変更しております。ご了承ください。)
ドナー希望の方はこちらをダウンロードし、必要事項記入の上、fmt@juntendo.ac.jpにお送りください。内容確認の上、こちらからお返事いたします。

受診方法

詳しくは石川、野村外来を受診して頂き、お話しさせていただくことになります。臨床研究についての問い合わせが多い状況ですので、外来受診前にfmt@juntendo.ac.jpにメールで問い合わせください。受診の手順や診察可能な日程などを調節することができますので、まずは、主治医の先生とよく相談してからメールでご連絡ください。
また、未成年の患者さんに対しては個別に対応しますので、外来受診前にfmt@juntendo.ac.jpにメールで問い合わせください。

尚、患者さんからの直接の電話については、緊急の場合を除いて ご遠慮頂ければ幸いです。

医療関係者向けの情報

~ご紹介いただく主治医の皆様へ~

 当科での便移植の臨床研究が開始され約7年半が経過し、症例数も増えてまいりました。現在までに得た治療効果や、腸内細菌叢と治療効果の関連などの知見については、国内外の学会、医学雑誌、論文にてご報告させていただいております。また、海外からの報告(Samuel. P et al.JAMA 2019) でも、潰瘍性大腸炎に対する便移植療法のランダム化比較試験でFMTの治療効果が明らかになったことが報告され、更に注目が集まっています。未だ解明できていない領域の治療とは思いますが、便移植については大きな可能性があるものと思っております。また、今まで当院での便移植療法自体に大きな副作用は認めておりませんので、治療選択肢が乏しくなっている、または薬剤アレルギーなどで薬物療法が使用しづらいIBD患者さんにはよい適応と思います。

先生のご同意のもとに、情報提供書持参で消化器内科石川大外来、もしくは野村慧外来あてにご紹介頂ければ幸いです。外来日程については患者さん御自身で当方にメール連絡して決めて頂ければと存じます。不明な点がございましたら、遠慮なくご連絡ください。

問い合わせ先:責任者 順天堂大学消化器内科准教授 石川大 fmt@juntendo.ac.jp

2021年7月26日~
最新の潰瘍性大腸炎に対する便移植療法の情報については、以下のサイト「キッセイ診療サポート」で動画がご覧になれます。

共同研究に関して

腸内細菌叢の多角的解析、便移植した腸内細菌の定着メカニズムなど、積極的に他施設との共同研究をすすめています。

  • 2016年12月より「協和キリン(株)および協和発酵バイオ(株)」との共同研究が開始しました
  • 2017年4月よりアメリカ、ミシガン大学消化器内科の腸内細菌チームとの共同研究も開始されました。
  • 2017年9月より、当院の小児科とも協力して対象年齢を6歳以上の小児科患者さん(潰瘍性大腸炎・クローン病の患者さん)へ参加範囲を拡大しました。
    → 詳しい問い合わせは、fmt@juntendo.ac.jpもしくは小児科工藤先生の外来を受診して頂き、本研究に参加できるかどうかをお尋ね頂けますと幸いです。
  • 2019年12月よりキリンホールディングス(株)と共同研究講座が設立されました。(詳しくはこちら
  • 2020年9月より慶応大学薬学部の金 倫基教授との共同研究を開始しました。

最後に

今まで200名を超える潰瘍性大腸炎の患者さん、約120名のドナーの方に参加していただきました。我々はこの臨床研究を通して、実際に患者さんが改善していることも実感しており、できるだけ早く先進医療として提供できるように、そして近い将来通常治療としてより多くの患者さんに提供できることを目指して、今後も真摯に臨床研究を進めてまいります。その先には多くの潰瘍性大腸炎やクローン病の患者さんのより明るい人生に寄与できればと思っております。

2021年11月更新
順天堂消化器内科腸内細菌研究グループ 石川大

主な論文

  • K Nomura, D Ishikawa, et al. Bacteroidetes Species Are Correlated with Disease Activity in Ulcerative Colitis. J Clin Med. 2021 April 17;10:1749.
  • Koki Okahara, Dai Ishikawa,et al. Matching between Donors and Ulcerative ColitisPatients Is Important for Long-Term Maintenanceafter Fecal Microbiota Transplantation. Journal of Clinical Medichine Received: 28 April 2020; Accepted: 28 May 2020; Published: 31 May 2020
  • Takahashi M, Ishikawa D, et al. freezing preservation period influences colonization ability for faecal microbiota transplantation.J Appl Microbiol. 2019 Mar;126(3):973-984.
  • Ishikawa D, et al. The Microbial Composition of Bacteroidetes Species in Ulcerative Colitis Is Effectively Improved by Combination Therapy with Fecal Microbiota Transplantation and Antibiotics Inflamm Bowel Dis. 2018 Aug.
  • 石川 大、岡原昂輝、永原章仁「総説:便移植の現状と展望」腸内細菌学雑誌 2018 Jul 32:137-144
  • Ishikawa D. Fecal Microbiota Transplantation for the Treatment of Gastrointestinal Disease: Present and Future Prospects Gastroenterological Endoscopy.2018 Apr ;60(4):969-980
  • Ishikawa D, et al. Changes in Intestinal Microbiota Following Combination Therapy with Fecal Microbial Transplantation and Antibiotics for Ulcerative Colitis. Inflamm Bowel Dis. 2017 Jan ;23(1):116-125.

講演

  • 「潰瘍性大腸炎患者に対する抗菌剤併用便移植療法」第40回日本臨床薬理学会学術総会(2019.12)
  • 「潰瘍性大腸炎患者に対する抗菌剤併用便移植療法のドナー選択の重要性」第10回日本炎症性腸疾患学会学術集会参加(2019.11)
  • 「潰瘍性大腸炎患者に対する抗菌剤併用便移植療法の長期治療評価と腸内細菌叢変化の検討」第61回日本消化器病学会大会(2019.11)
  • 「難病に対する腸内細菌療法~腸内フローラの宇宙の解明を目指して~」第41回日本臨床栄養学会総会(2019.10)
  • 「消化器疾患に対する便移植療法~胃酸分泌抑制剤と腸内フローラの関連を含めて~」Next Symposium 2019 in Sapporo(2019.10)
  • 「潰瘍性大腸炎に対する抗菌剤併用便移植療法~治療効果と関連する腸内細菌の解析~」第113回日本消化器内視鏡学会北陸支部例会(2019.6)
  • 「最先端治療セミナー『腸内細菌叢(便移植)と免疫』」免疫細胞治療セミナー2019(2019.6)
  • 「消化器疾患に対する便移植療法~胃酸分泌抑制剤と腸内フローラの関連を含めて~」第42回日本肝臓学会東部会(2018.12)
  • 「腸内フローラ:難病治療との関係」第四回 医療連携講演会(2018.09)
  • 「国際交流:腸内細菌の重要性と抗生剤の使用方法」ベトナム、サンライズホスピタル設立記念講演(2018.09)
  • 「腸内細菌と腸疾患の関わり」第21回日本適応医学会(2017.12)
  • 「Clostridium difficile 感染性腸炎と潰瘍性大腸炎に対する便移植療法」第66回日本感染症学会東日本地方会学術集会(2017.11)
  • 「潰瘍性大腸炎に対する便移植療法」第27回九州内視鏡下外科手術研究会(2017.09)
  • "Comprehensive Bacteriotherapy: Combination with Fecal Microbial Transplantation and Antibiotics for Ulcerative Colitis" 国際セッション 第103回日本消化器病学会総会(2017.04)
  • 「腸内細菌をデザインする~便移植療法とは~」第39回日本分子生物学会年会 (2016.12)
  • 「潰瘍性大腸炎に対する抗菌剤併用便移植療法」第20回腸内細菌学会(2016.06)
  • 「潰瘍性大腸炎に対する腸内細菌療法の有効性の検討」第2回 Gut Microbiota学会(2016.04)