漏斗胸手術
Nuss法(胸腔鏡補助下胸骨挙上術)
はじめに
漏斗胸外来のご案内
漏斗胸は、胸の真ん中の部分がポコッとへこんでいる病気のことです。頻度としては1,000人に1人の割合で小児に発現する胸の病気です。原因はまだはっきりとわかっていませんが、胸の部分の骨、軟骨の成長に問題があるためではないかなどと考えられています。
どんな方が治療を必要としているのでしょうか。
- 軽度の陥凹でも反復する上気道感染、労作時の動悸・息切れ、胸の痛み等の症状が見られる場合には治療の対象になります。
- プールや温泉に出かけた時などに「恥ずかしい」と感じて、姿勢が悪くなったり、ひっこみじあんになったりするようであれば、良好な精神的発育を促すという観点から治療をしたほうがよい場合もあります。
- 全く症状がなく美容的な点から手術を希望される方も治療の対象になります。
漏斗胸の病態として乳児期には軽度の陥凹ですが、幼年期、思春期にかけて徐々に陥凹が進行します。陥凹の進行具合を定期的(半年から1年間隔で)にフォローアップすることが大切です。
治療には、手術が必要です。いろんな手術がありますが、現在当科で行っている標準的な術式は、Nuss法というものです。金属の細長い板を胸の中に埋め込んで、胸の骨を内側から持ち上げることによって、凹みを治療しようというものです。金属の板は通常2年前後たった時点で、再び全身麻酔をかけて抜き取ります。要するに、骨折した時に添え木をして骨の形を整え、骨が十分な強度になったところで添え木をはずすのと同じような原理です。今までの手術と違い、両脇に2cmほどの痕がそれぞれつくだけで、胸の真ん中には傷跡が残りません。現在のところ約50例の方に手術を施行いたしましたが、概ね良好な成績です。入院期間は金属を入れるときが7~10日程度、抜くときが3~4日程度となっています。これまで大きな事故はありませんが、慎重を期するため、必ず小児心臓血管外科の先生と一緒に手術を行うようにしています。また、金属挿入後の数日間は強い痛みを訴えることがあります。疼痛管理として麻酔科・ペインクリニックの先生と一緒に痛みのコントロールを行っています。
当科ではこれまでにも漏斗胸手術を行っていましたが、より綿密に患者さんの手術適応を検討し、術後経過をみていくために、漏斗胸の専門外来を毎週木曜日午前に行うことにしました。漏斗胸の患者さん・ご家族の方で、治療した方がいいのかどうかお悩みの方、治療法についてもっと詳しく知りたい方、治療を受けられたい方、どうぞ気軽に受診してください。なお、メールでのご相談もお受けいたします。下記のメールアドレスまでどうぞ。
漏斗胸外来担当
越智 崇徳
tochi@juntendo.ac.jp
澁谷 聡一
soshibu@juntendo.ac.jp
Nuss法について
漏斗胸の手術としては胸骨反転法、胸骨挙上法などの従来行われていた手術とNuss法(胸腔鏡補助下胸骨飜転術)があります。当科では術後の疼痛や、美容的な面から積極的に後者を取り入れるようにしております。
- 手術時間:約1時間
- 手術術式:胸腔鏡補助下胸骨挙上術(Nuss法)
- 麻酔方法:全身麻酔
- 術後鎮痛対策:坐薬+PCA
手術術式:胸腔鏡補助下胸骨挙上術(Nuss法)

胸腔鏡を用いてMetal barを挿入します

胸腔鏡を見ながらMetal barを飜転します。

飜転した後の図です。
Nuss法の長所および短所
長所
- 胸骨・肋軟骨の切除が不要
- 術創が目立ちにくい
- 手術時間が短い
短所
- 2回の手術が必要
- 疼痛管理に難渋する
Nuss法の長所および短所





術後合併症
Barの偏位
感染症 などがあります。
当科の治療成績
漏斗胸患者数 : 85名
従来法術後 : 16例
Nuss法術後 : 28例
Bar抜去後 : 16例
手術待ち患者数:41例
術後成績
非常に良好・良好:19例(83%)
不良・変化無し:4例(17%)
術後合併症
バーの偏位:3例(13%)
感染:2例(9%)