陰茎の異常① (包茎・埋没陰茎)

順天堂大学小児外科・小児泌尿生殖器外科
主任教授 山高 篤行
先任准教授 岡﨑 任晴
助教 草深 純一

小児外科は、生後間もない新生児から思春期に至るまでの患児の、消化器、呼吸器、泌尿器、生殖器、良性・悪性腫瘍、体表の疾患など、きわめて多岐にわたる疾患を取り扱う分野である。近年、まだまだ治療に難渋する疾患もあるが、鏡視下手術の導入、周術期管理の進歩など、目覚しい変化を遂げている。本シリーズでは小児外科疾患の、特に手術治療のトピックスを紹介する。

包茎 (phimosis)

1. 概念

図1:真性包茎
図1:真性包茎
図2:仮性包茎
図2:仮性包茎

包皮口の狭窄のために包皮を翻転させて亀頭を露出できない状態を真性包茎(図1)、露出できる状態を仮性包茎という(図2)。単に包茎といえば真性包茎を意味することが多い。真性包茎はその成因から先天性と後天性に分類される。後天性包茎は、繰り返した包皮炎や環状切開術の瘢痕狭窄により、包皮口狭窄が起こり生じる。真性包茎が占める割合は、新生児はほぼ100%、乳児は約80%、幼児は約60%、小学生は約30%であり、思春期以降にその頻度はさらに低下する。1)

2. 症状

図3:嵌頓包茎
  1. 排尿障害
    排尿時に包皮が膨らむ、尿線が細い、などの問題が生じる。また、包皮が長いと、尿線が上下左右に曲がったり散乱することがある。
  2. 亀頭包皮炎
    陰茎の先端や全体に発赤や腫脹があり、疼痛や排尿時痛を伴う。抗生剤の投与や軟膏により治療するが、緊急手術を要する場合もある。
  3. 尿路感染
    包茎のある新生児・乳児では、包茎手術を受けた児よりも尿路感染の頻度が高い。2)
  4. 嵌頓包茎包皮口が狭い状態で包皮を無理に冠状溝より翻転させたときに、冠状溝を絞扼して包皮や亀頭の循環障害を起こし、包皮が著明な浮腫を起こして元に戻らない状態となる(図3)。早期であれば両手指により整復する。整復が不可能な場合は、絞縮輪を背面で切開し、横に縫合する。3)

3. 治療法

治療法
  1. 保存療法
    毎日両親または患児本人に用手的包皮翻転を行ってもらう。ステロイド軟膏塗布を加える方法もある。包皮翻転の際に包皮の亀裂が起きないように注意する。しかし、包皮翻転を繰り返しても最終的に手術が回避できない症例もある。
  2. 手術療法
    1. 適応
      包茎手術の適応は原則的に真性包茎とされるが、乳幼児の包皮は伸展性に富み、成長とともに自然治癒する可能性が高いという考えもあり、時期や適応については議論が多いところである。一般的な適応として、保存的治療が無効であり、①亀頭包皮炎、尿路感染を繰り返すもの、②排尿障害を有するもの、③嵌頓包茎、 ④家族の希望が強い、などがある。また、イスラム教やユダヤ教では宗教上の理由で包茎の手術(割礼)を行うことがある。
    2. 術式
      様々な術式があるが、ここでは背面切開法と環状切開法を紹介する
      a. 背面切開術(dorsal slit)
      包皮の最も絞扼の強い部分を縦に切開し横に縫合する。(図4)
      b. 環状切開術 (circumcision)
      余剰皮膚を環状に切開する方法である。余剰皮膚を取り過ぎないように注意する必要がある(図5)。

埋没陰茎 (buried penis)

1. 概念

図6:埋没陰茎

陰茎皮膚の不足やBuck筋膜、Dartos筋膜の付着異常によって、陰径が皮下に埋没した状態である。陰茎のサイズは正常であるが、皮下に埋没しているため小さく見える(図6)。

2. 症状

保護者が陰茎の短いことに気づいて受診することが多い。真性包茎を合併している場合が多く、包茎と同じ症状を呈する。

3. 鑑別診断

短小陰茎
伸展した状態の陰茎長が正常の-2.5SD以下で、形態的には正常の陰茎をいう。内分泌系の異常によることが多いが、原因不明のものもある。治療はテストステロンの投与である。 翼状陰茎
陰茎腹側の皮膚が陰嚢皮膚と連なり、翼状あるいは水かき状の外観を呈する。陰茎と陰嚢皮膚の接着異常が原因とされ、埋没陰茎と似ている。大多数は成長に伴う改善が期待できるが、高度な場合は手術を要する。

4. 治療

術式は陰茎と皮膚の接着固定を行う方法、Dartos筋膜を剥離、切除し陰茎を引き出す方法(図7)、恥骨上の脂肪組織を摘除する方法などがある。

図7:埋没陰茎手術
図7:埋没陰茎手術