陰茎の異常② (尿道下裂)

順天堂大学小児外科・小児泌尿生殖器外科
主任教授 山高 篤行
先任准教授 岡﨑 任晴
准教授 下高原 昭廣

小児外科は、生後間もない新生児から思春期に至るまでの患児の、消化器、呼吸器、泌尿器、生殖器、良性・悪性腫瘍、体表の疾患など、きわめて多岐にわたる疾患を取り扱う分野である。近年、まだまだ治療に難渋する疾患もあるが、鏡視下手術の導入、周術期管理の進歩など、目覚しい変化を遂げている。本シリーズでは小児外科疾患の、特に手術治療のトピックスを紹介する。

図1:陰茎陰嚢部型の尿道下裂
図1:陰茎陰嚢部型の尿道下裂

陰茎は腹側に屈曲し、
頭巾状にめくれあがった包皮を呈する。
本症例では二分陰嚢を合併している。

陰茎の異常のうち尿道下裂は陰茎腹側の発育が障害され、外尿道口が本来の亀頭部先端ではなく、それよりも近位の陰茎、陰嚢、時に会陰部に開口する先天性尿道形成不全である。
発生頻度は比較的高く、男児300人に一人ともいわれている。遺伝性はないものの、時に家族内発生を認める。
本症の発症にはアンドロゲンの作用不全が関与していると考えられており、下部尿路および生殖器の系統的疾患として捉えるべきである。実際、矮小陰茎や陰茎前位陰嚢、二分陰嚢、停留精巣などの他、男性小子宮の拡張や男性膣等を伴うこともある。

図2 術中の人工勃起
図2 術中の人工勃起

陰茎亀頭に生理食塩水を
注入する人工勃起により
勃起時陰茎屈曲の有無の確認が
容易となる。

本症は外尿道口の位置により、亀頭部型、冠状溝部型、陰茎部型、陰茎陰嚢部型(図1)、陰嚢部型、会陰部型と分類されることが多い。
陰茎包皮となるべき皮膚は亀頭部に頭巾状にめくれており、陰茎腹側の包皮および皮下組織は欠如している。陰茎は索組織により腹側に屈曲することが多く、勃起によってより顕著となる(図2)。審美的な問題の他、立位排尿困難、性交困難等の問題を呈する。

これらの解決には外科的治療が必須であるが、そのポイントは索組織の切除による陰茎屈曲の是正と亀頭部までの尿道の延長の二つである。これまでにさまざまな術式が考案され、その数は約200ともいわれるが、索切除と尿道形成を同時に行う一期的手術と、これらを二度に分けて行う二期的手術(図3・4)に大別される。一般的に、二期的手術の方が合併症の発生が少なく、索の切除も確実にできるが、最近では一期的手術を行うことが増えてきている。

図3 索切除術(一期目の手術)
図3 索切除術(一期目の手術)

 本症例では、尿道板を含めたU字状陰茎腹側皮膚を剥離し、亀頭側へスライドさせた後、再度陰茎に縫合している。

  1. 陰茎根部にいたるU字状の皮膚切開を加える。
  2. 十分な血流を保ったまま、陰茎皮膚および尿道板を弁状に剥離する。
  3. 深陰茎筋膜に切開(矢印)を加え、陰茎の腹側への屈曲を解除する。
  4. 精索から、十分な血流を保ったtunica vaginalis flap(f)を有茎性に剥離する。
  5. 深陰茎筋膜の切開部分にtunica vaginalis flap(f)を被覆するように縫着する。
  6. 尿道板を含めU字状陰茎皮膚を再び陰茎に縫合する。外尿道口は陰茎根部へと移動(矢印)することになる。
  7. 術後の外観。
図4 尿道形成術(二期目の手術)
図4 尿道形成術(二期目の手術)

 尿道板に縦切開を加えることにより同部の幅を広げ、管状に縫合して尿道を形成する。

  1. 尿道板の外縁近くの陰茎皮膚にU字状の切開を加え、その後、尿道板正中にも亀頭先端まで切開を加える。
  2. ステントとなるカテーテルを置く。
  3. 尿道板を管状に縫合し、新尿道を形成する。
  4. 亀頭先端まで新尿道が形成されている。

いずれにしても、患児への心理的影響等を考えて就園、就学前には治療を完了するのが原則である。
術後の合併症は珍しくなく、形成した尿道の瘻孔、尿道狭窄、尿道憩室などが起こりえる。再手術の成功率は更に低くなるため、十分な知識と技術を持つ熟練した医師が施行すべきである(図5)。

図5 尿道形成時の外精筋膜による新尿道補強
図5 尿道形成時の外精筋膜による新尿道補強

 新尿道の瘻孔形成を防ぐために、同部をさまざまな組織で被覆する方法が試みられているが、外精筋膜を用いた補強は極めて有効である。

  1. 陰嚢より精巣を引き出し、精索から外精筋膜(矢印)を剥離する。
  2. 十分な血流を保つよう留意しながら外精筋膜(矢印)の剥離を進める。
  3. 剥離した外精筋膜(矢印)を陰茎根部の切開創から引き出す。
  4. 外精筋膜にて新尿道を被覆(矢印)する。
  5. 手術終了後の外観。
  6. 術後1年目の陰茎外観。