鏡視下手術① (新生児)

順天堂大学小児外科・小児泌尿生殖器外科
主任教授 山高 篤行
先任准教授 岡﨑 任晴
助教 林 豊

小児外科は、生後間もない新生児から思春期に至るまでの患児の、消化器、呼吸器、泌尿器、生殖器、良性・悪性腫瘍、体表の疾患など、きわめて多岐にわたる疾患を取り扱う分野である。近年、まだまだ治療に難渋する疾患もあるが、鏡視下手術の導入、周術期管理の進歩など、目覚しい変化を遂げている。本シリーズでは小児外科疾患の、特に手術治療のトピックスを紹介する。

図1:thermoflator
図1:thermoflator(Storz TM)

気化したCO2を体温に近い温度まで
温める機構を有する。

小児外科領域における内視鏡下外科手術は、成人領域と比べ大きく遅れを取ったが、1991年にHolcomb IIIの小児腹腔鏡下胆嚢摘出術の報告以来、堰を切ったかのように報告され、手術器具の改良・開発により、現在、本邦でも盛んに行われている1)
今回は、新生児における鏡視下手術の特徴および具体例(腹腔鏡補助下での小腸閉鎖症手術、胆道造影術、卵巣嚢腫摘出術)について解説する。

図2:腹腔鏡下手術器具
図2:腹腔鏡下手術器具

さまざまな鉗子類(シャフト径3mm)
が開発されている。

小児、特に新生児・乳児においては、成人と比べ、①腹壁が柔らかく進展されやすい。②腹腔内の容量が小さく臓器損傷の可能性が高いことから、当科ではOpen Hasson法により、直視下で安全に第1ポートを挿入している。
気腹器の条件としては、①緩速気腹が可能(0.1L/min単位)であること。②気腹ガスを温めることが可能であるものが望ましいとされている(図1)。
新生児鏡視下手術の特徴の1つとして、腹壁が薄く鉗子の挿入や抜去時にトロッカーの深さがずれやすく、またair leakageしやすいといったことがあるので、トロッカーの固定は重要である。
内視鏡は外径が3mmあるいは5mmのカメラシステムを用いる。レンズの角度は0度、30度、45度などが多く用いられる。また、手術器具、特に鉗子類については、成人の手術器具と比べデリケートなものを必要とし、新生児・乳児では3mm、3.5mm鉗子などgentle handlingが可能な鉗子を、使用目的に応じて使い分ける。(図2)

新生児鏡視下手術の具体例

以下に、当科で行っている新生児鏡視下手術の具体例を供覧する。

1. 小腸閉鎖症に対する腹腔鏡補助下手術

図3:小腸閉塞症の胎児超音波
図3:小腸閉塞症の胎児超音波
腸管の拡張を認める。
図4:小腸閉鎖症手術
図4:小腸閉鎖症手術
閉鎖部腸管を鉗子で確認し臍輪直下へ誘導する。

小腸閉鎖症は、胎児超音波では腸管の拡張を認め(図3)、出生後に腹部膨満を呈する。結腸ガスは欠如し、注腸ではmicrocolonを呈する。閉鎖部位が下位であるほど緊急性が高く、呑気の予防に努め、経鼻胃管を挿入し、胃内の減圧を図る必要がある2)
腹部膨満が軽度で、腸管の著しい拡張がない場合において、腹腔鏡補助下手術の適応となる。

手術手技:
Open Hasson法により、臍上部に第1トロッカーを挿入し気腹を行う。右側腹に留置した第2トロッカーから鉗子を用いて腸管閉塞部を検索し、腸管閉鎖部を確認のうえ、臍輪直下へ誘導する(図4)。

図5:リングリトラクターを臍輪にかける
図5:リングリトラクターを臍輪にかけ、閉鎖部腸管を体外に脱出させる。
図6:体外で閉鎖部を含めた腸切除
図6:体外で閉鎖部を含めた腸切除。腸吻合を行う。
上腹部横切開法による手術創と腹腔鏡補助下手術による手術創
図7:
a)上腹部横切開法による手術創。
b)腹腔鏡補助下手術による手術創。
従来の方法と比べ手術創が目立たない。

第1トロッカーを抜去し、リングリトラクターを用いて臍輪を拡大させ、閉塞腸管を体外に脱出し(図5)、体外で腸切除、腸吻合を行う(図6)。吻合部腸管を腹腔内に環納し手術終了となる3)
術後の手術創は従来の手術と比べ、外観上優れている(図7)。

2.新生児黄疸遷延例における腹腔鏡補助下胆管造影術

図8:胆道閉鎖症の肝臓および胆嚢
図8:胆道閉鎖症の肝臓および胆嚢
肝線維化を呈し、胆嚢の萎縮も認める。

新生児は出生後の適応過程として、一時的にある程度の高ビリルビン血症(生理的黄疸)となる。通常、生後2~3日より可視的黄疸が出現し、5~7日でピークに達する。以後減少し、通常2週間以上遷延しない。直接ビリルビン優位の病的黄疸の原因として、新生児肝炎、先天性胆道閉鎖症、アラジール症候群によるものなどがある。血液生化学検査や、PMTシンチグラフィーなどにより評価しても判別不能な場合は、腹腔鏡下精査を行う。

手術手技

図9:アラジール症候群の術中胆道造影
図9:アラジール症候群の術中胆道造影
きわめて細い総肝管および肝内胆管(点線円内)が描出されている。
図10:胆嚢瘻形成後の腹部所見
図10:胆嚢瘻形成後の腹部所見
右季肋部に胆嚢瘻造設

3ポートテクニックで行う。Open Hasson法により、臍下部に第1トロッカーを挿入し気腹を行う。腹腔内を観察し、肝の性状や色調などを観察する(図8)。十分なサイズの胆嚢を認めた場合、右季肋部に小切開を置き、胆嚢底部を創部から腹腔外に牽引して、直視下に5Fr栄養チューブを挿入し造影する。総肝管および肝内胆管が描出された場合は、胆道閉鎖症は否定的と診断できる。

図11
図11:
a)胆嚢のみ描出されている。
b)胆嚢および十二指腸側の腸管は
描出されている(矢印)が、
肝管は描出されていない。

図9にアラジール症候群の造影を示す。胆道系のドレナージ、洗浄などを要する場合は胆嚢瘻を形成する(図10)。
総肝管が描出されない場合や胆嚢のみ描出される場合(図11)は、胆道閉鎖症と判断し、葛西手術(肝門部空腸吻合術)を行う4)

3.腹腔鏡補助下卵巣嚢腫摘出術

胎児超音波上、卵巣嚢腫は下腹部にcystic lesionとして描出される。ほとんどが片側性で非機能性単純性嚢胞であり、妊娠中あるいは出生後に自然消退する。新生児症例は大部分が良性卵巣嚢腫で、1年以内に退縮することが多いと報告されている5)。しかし、以下の項目を満たす場合には可及的速やかに手術を行う必要がある。

  1. 嚢胞の大きさが5cm以上
  2. 軸捻転、出血、穿孔を疑わせる腹部所見の存在
  3. 腫瘍性病変が否定できない場合

手術手技

3ポートテクニックで手術を行う。Open Hasson法により、臍上部に第1トロッカーを挿入し気腹を行う。体位はTrendelenburg体位とし、病変を確認する(図12)。巨大卵巣嚢腫であれば、まず腹壁を通じてサーフロー針などにより嚢腫を穿刺吸引し(図13)、再度腹腔内を観察する。この際、卵巣が壊死している場合は付属器切除を行うが、正常卵巣組織は極力温存する。可能であれば腹腔内操作のみで切除、あるいは第1トロッカーを抜去し、その部位から卵巣を体外に脱出させ、直視下で卵巣嚢腫壁を切除した後に、体内へ環納する(図14)。

図12:腹腔鏡下にて巨大卵巣嚢腫を観察
図12:腹腔鏡下にて巨大卵巣嚢腫を観察
図13:嚢腫液を穿刺にて吸引。穿刺部にエンドループをかけておく。
図14:嚢腫切除後の卵巣

[参考文献]
1) 宮野 武 監:小児の腹腔鏡下手術 診断と治療社,東京,1997
2) 鈴木 宏志,他 監:標準小児外科学,医学書院,2000
3) Yamataka A, et al.: Laparoscopy-assisted surgery for prenatally diagnosed small bowel atresia: simple, safe and virtually scar free. J Pediatr Surg 39:1815-1818, 2004
4) Okazaki T, et al.: Diagnostic laparoscopy-assisted cholangiography in infants with prolonged jaundice. Pediatr Surg Int 22:140-143, 2006
5) 岡田 正 編:系統小児外科学,永井書店,大阪,2001