鏡視下手術② (ヒルシュスプルング病と鎖肛手術の実際)

順天堂大学小児外科・小児泌尿生殖器外科
主任教授 山高 篤行
先任准教授 岡﨑 任晴
金山 和裕

小児外科は、生後間もない新生児から思春期に至るまでの患児の、消化器、呼吸器、泌尿器、生殖器、良性・悪性腫瘍、体表の疾患など、きわめて多岐にわたる疾患を取り扱う分野である。近年、まだまだ治療に難渋する疾患もあるが、鏡視下手術の導入、周術期管理の進歩など、目覚しい変化を遂げている。本シリーズでは小児外科疾患の、特に手術治療のトピックスを紹介する。

ヒルシュスプルング病に対する鏡視下手術

図1:新生児症例の腹部単純X線所見
図1:新生児症例の腹部単純X線所見

著明な腸管拡張を認める。
一方、骨盤腔内には直腸のガス像がみられない。

ヒルシュスプルング病(以下、本症)は、肛門側腸管の壁内神経節細胞(Auerbach神経叢およびMeissner神経叢)が先天的に欠如し、便秘、腸閉塞症状を来す疾患である。無神経節腸管の範囲により、short segment type(下部直腸に限局)、rectosigmoid type(S状結腸まで)、long segment type(S状結腸より口側の結腸に及ぶもの)、entire colon type(全結腸に及ぶもの)、extensive type(回腸終末部を越えて口側小腸に及ぶもの)に分類され、short segmentおよびrectosigmoid typeが本症の約80%を占める。
本症の90%に胎便排泄遅延を認め、新生児例では腸管ガスの貯留が顕著で、胆汁性嘔吐をみることが多い(図1)。新生児例や乳児例では、時に難治性腸炎を併発し、進行すると敗血症に陥る危険性がある。幼児期以降に診断される症例では、頑固な便秘、排便障害を主症状とし、多量の便塊やガスの貯留を認める。

図2:注腸造影所見
図2:注腸造影所見

無神経節腸管の狭小化と、
拡張した口側腸管への
腸管径の変化(caliber change, 矢印)
が特徴的所見である。

本症の診断は、臨床症状と注腸造影(図2)、直腸粘膜生検、肛門内圧検査などにより行われる。確定診断は、直腸粘膜生検の病理所見による。粘膜下層の神経節細胞欠如と、acetylcholine-esterase陽性の外来神経線維増生を認める。
診断が確定すれば外科的治療は必須であり、肛門側の無神経節腸管を切除し、口側の正常腸管を引き下ろして肛門部に吻合する結腸プルスルー(pull- through)手術が行われる。本症に対する根治手術にはさまざまな術式が考案されている。ここでは、short segmentおよびrectosigmoid typeに対して当科が用いている、腹腔鏡下結腸プルスルー術1) 2) について述べる。

1. 腹腔鏡下結腸プルスルー術

図3:患児の体位と腹腔鏡ガイド下の粘膜生検
図3:患児の体位と腹腔鏡ガイド下の粘膜生検

これにより正常腸管の位置を確定する。
図4:腹腔鏡下での腸管膜の処理
図4:腹腔鏡下での腸管膜の処理

腸管の血行の確保と尿管を損傷しないように注意する。

患児は開脚位とし、腹腔鏡操作と肛門部操作が同時に施行できるようにする。
腹腔鏡側チームは、臍部および左右側腹部に腹腔鏡ポートを挿入、腹腔内を検索したのち、まず腹腔鏡ガイド下に粘膜生検を施行して正常神経節腸管を同定する(図3)3) 。血流の保持に留意しながら腸間膜処理を行い、プルスルーに必要な長さの正常神経節腸管を確保する(図4)。

図5:直腸粘膜抜去
図5:直腸粘膜抜去
粘膜を損傷しないよう注意を要する
図6:形成後の新肛門
図6:形成後の新肛門

肛門側チームは、歯状線の口側から直腸粘膜抜去を開始する(図5)。粘膜抜去が腹膜翻転部まで進行したことを腹腔鏡下で確認後、腹膜翻転部を切開し、腹腔内と肛門側とを交通させる。正常神経節腸管を肛門側へプルスルーし、粘膜抜去を開始した肛門部粘膜と縫合し肛門を形成する(図6)。この際に当科では、術後の肛門管部のアカラシアを予防するために、直腸後壁を可能な限り切除している。

2. 術後肛門機能

筆者らが以前、従来の開腹根治術4) と現在行っている腹腔鏡下手術について中・長期予後の比較を行ったところ、術後排便機能については両群間に有意な差がみられなかったものの、手術に際しては、術後経過や血液データ所見において、後者で有意に低侵襲であった5)
さらなる症例蓄積と経過観察が必要ではあるが、腹腔鏡下結腸プルスルー術が本症に対する標準術式として推奨されうると考えている。

高位鎖肛に対する鏡視下手術

鎖肛は、先天的に肛門(あるいは直腸を含む)が欠如した形成異常である。出生4,000~5,000人に1人の頻度とされており、男児にやや多い。腸管のどの高さまでが欠如しているかによって、低位、中間位、高位に分類され、低位では一期的肛門形成術を、中間位・高位では人工肛門を造設後に肛門形成術を施行する。
中間位・高位鎖肛に対する基本術式は、瘻孔切離、腸管プルスルーおよび肛門形成である。従来は、1982年にPenaらが報告した後方矢状切開肛門形成術が広く用いられてきたが、2000年にGeorgesonらが腹腔鏡下鎖肛根治術を報告して以来、同術式が急速に広まっている。その理由としては、低侵襲な術式であると同時に、瘻孔処理時の視野に優れている点や、腸管プルスルー時の肛門挙筋群への侵襲が最小限となる点なども挙げられる。
当科は本邦でもいち早く高位鎖肛に対して本腹腔鏡下根治術を取り入れ施行してきた。当科における腹腔鏡下鎖肛根治術について、原法からの改良点などを含めて概説する。

1. 腹腔鏡下鎖肛根治術

腹腔鏡ポート挿入部位は図7の通りで、まず腹腔鏡下にS状結腸・直腸の剥離を行う。剥離に際しては、後壁側では尿管・精管損傷に、前壁側では尿道・膣損傷に注意を要する。瘻孔遠位側まで十分に剥離が終了した後、瘻孔を切離する(図8)。この際に切離した腸管は、肛門形成時に肛門皮膚との吻合に使用するため、腸管剥離の際には、切離面の血流保持に留意しながら腸間膜の処理を行う必要がある。

図7:鏡視下鎖肛根治術における腹腔鏡ポートの挿入部位
図7:鏡視下鎖肛根治術における腹腔鏡ポートの挿入部位
図8:腹腔鏡操作にて直腸尿道瘻を切離する
図8:腹腔鏡操作にて直腸尿道瘻を切離する。瘻孔を残存させないように遠位側で瘻孔を処理する。

本術式において最も重要なポイントは、肛門挙筋群の同定とその中心へのプルスルーであり、われわれは以下の手法を用いて、より正確なプルスルー経路の作成を試みている。

  1. 会陰側より筋刺激装置を用いて、挙筋群の下端である外肛門括約筋の中心を確認する(図9)6)
  2. 腹腔鏡ガイド下に腹腔内から光源を当てることで、挙筋群の上端である恥骨尾骨筋の中心を確認する。
  3. 前記2の手技では、挙筋群の中間に位置する恥骨直腸筋とプルスルー腸管との位置関係の把握が困難である。われわれはこの課題を解決すべく、会陰側より超音波内視鏡を挿入し、その中心部にプルスルー経路が位置しているかを確認している(図10・11)7)
図9:会陰部皮膚に筋刺激装置を当て外肛門括約筋の中心部を確認
図9:会陰部皮膚に筋刺激装置を当て外肛門括約筋の中心部を確認、肛門の位置を決定する。
図10:超音波内視鏡を会陰側より挿入
図10:超音波内視鏡を会陰側より挿入し、肛門括約筋および肛門拳筋群の中心を確認する。
図11:術中超音波内視鏡所見
図11:術中超音波内視鏡所見

低エコー域で捉えられる肛門拳筋群の正中をプルスルー腸管が通っていることがわかる。
図12:形成後の新肛門
図12:形成後の新肛門

プルスルー経路を決定して腸管プルスルーを行ったら、必ずプルスルー腸管の捻転や腸間膜血管の緊張を腹腔内より確認し、必要に応じて血管処理を追加する。同時に、腸間膜血管や仙骨前面からの出血がないことも確認する。捻れがなく、十分なゆとりを持って腸管が引き下ろされていることを確認したのちに肛門形成(図12)を行い、手術を終了する。

2. 術後合併症

図13:合併症発症例の膀胱造影所見
図13:合併症発症例の膀胱造影所見

膀胱の後面に憩室化した遺残瘻孔(矢印)が認められる。
図14:術中大腸内視鏡所見
図14:術中大腸内視鏡所見

直腸尿道瘻(矢印)が鮮明に確認され、適切な位置での瘻孔処理が可能となる。

術後合併症としては、瘻孔処理操作による尿道狭窄や、遺残瘻孔の感染および憩室化などが起こりうる。われわれも、憩室化した遺残瘻孔による膀胱圧迫から尿閉を来した症例を経験した(図13)8) 。これは、瘻孔切離の際に尿道損傷を憂慮した結果、瘻孔を不十分な位置で切離したため生じたものと考えられた。
この合併症を経験したのち、われわれは膀胱鏡による尿道内からの瘻孔開口部観察と、人工肛門遠位側から挿入した大腸内視鏡による瘻孔内腔観察を行うことで、腹腔鏡下に十分なレベルまで瘻孔を剥離できるよう努めている(図14)。

3. 術後直腸肛門機能

筆者らが以前、従来用いていた後方矢状切開法と現在行っている腹腔鏡下術式の2群間で、排便機能やプルスルー経路の正確性について検討したところ、プルスルー経路の正確性については両術式に差は無かったが、術後排便機能については、腹腔鏡下手術症例において、より早期に排便機能が向上する結果を得た9)
この結果から、筆者らは腹腔鏡下鎖肛根治術は後方矢状切開法に代わりうる術式であると考えるが、標準術式として確立されるためには、さらなる症例蓄積と、より長期の排便機能評価が必要であろう。

[参考文献]
1) Yamataka A, et al: J Pediatr Surg 41 : 2052, 2006.
2) Ishihara M, et al: Pediatr Surg Int 21 : 878, 2005.
3) Yamataka A, et al: J Pediatr Surg 37 : 1661, 2002.
4) Miyano T, et al: J Pediatr Surg 34 : 1599, 1999.
5) Fujiwara N, et al: J Pediatr Surg 42 : 2071, 2007.
6) Yamataka A, et al: J Pediatr Surg 36 : 1659, 2001.
7) Yamataka A, et al: J Pediatr Surg 37 : 1657, 2002.
8) Koga H, et al: Pediatr Surg Int 21: 58, 2005.
9) Ichijo C, et al: J Pediatr Surg 43: 158, 2008.