鏡視下手術③ (Nissen噴門形成術・脾臓摘出術)

順天堂大学小児外科・小児泌尿生殖器外科
主任教授 山高 篤行
先任准教授 岡﨑 任晴
岡和田 学

小児外科は、生後間もない新生児から思春期に至るまでの患児の、消化器、呼吸器、泌尿器、生殖器、良性・悪性腫瘍、体表の疾患など、きわめて多岐にわたる疾患を取り扱う分野である。近年、まだまだ治療に難渋する疾患もあるが、鏡視下手術の導入、周術期管理の進歩など、目覚しい変化を遂げている。本シリーズでは小児外科疾患の、特に手術治療のトピックスを紹介する。

今回は、小児において鏡視下手術が行われる代表的な2つの疾患を取り上げる。

胃食道逆流症に対する噴門形成術(Nissen噴門形成術)

胃食道逆流症(gastroesophageal reflex: GER)は小児、成人を問わずみられ、下部食道噴門機能障害のため胃内容が食道へ逆流する現象である。吐血、呼吸器症状、逆流性食道炎、食道狭窄、成長障害などの合併症を来した場合が、胃食道逆流症(GER disease;GERD)と考えられている。これまでに開腹術による種々の噴門形成術の手術方法が開発されてきたが、近年では腹腔鏡下噴門形成術が広く行われるようになっている。
小児、とくに新生児では、消化管や噴門機能の異常がなくてもGERを認める場合もある。しかしながら、小児のGERには、中枢神経障害に伴うもの、胃軸捻転症、幽門・十二指腸など肛門側の機能的あるいは器質的通過障害に合併するもの、いわゆる噴門弛緩症や滑脱型食道裂孔ヘルニア、先天性食道閉鎖症、先天性横隔膜ヘルニア、新生児胃破裂など下部食道、噴門、食道裂孔になんらかの手術操作が加えられるような術後の GERDなど、さまざまな原因が含まれる。

1. 診断

GERDの判定には、上部消化管造影、24時間pHモニタリング、食道内圧測定、腹部超音波検査、ミルクシンチグラムなどの画像診断や噴門機能検査に加え、食道炎の診断には食道内視鏡検査を行う。

2. 治療

治療には、内科的治療(生活指導、薬物療法)と外科的治療がある。一定期間の内科的治療を行った後に嘔吐や食道炎の軽快、体重増加がみられない場合に手術適応となる。吐下血による貧血、反復性肺炎の既往、食道の瘢痕狭窄、発育障害などの合併症を来し、特に重症心身障害の合併例で内科治療に反応しない症例には早期の手術を考慮する必要がある。

3. 小児における腹腔鏡下噴門形成術

小児における噴門機能を強化し逆流を防止する術式においても、腹腔鏡下Nissen噴門形成術が代表的である。以下に当院で行っているNissen噴門形成術を示す。手術室は図1-aのごとく配置する。患児は仰臥位を基本とするが、側彎症や四肢拘縮が強い場合には患児に負担のかからない自然な体位とする。術中、体位が変化する可能性があるため、砂嚢や人工脂肪を用いて患児の固定を十分に行う。一般的なトロッカー挿入部位は図1-bに示す。臍上部より5mm径のトロッカーをopen Hasson法で挿入する。6~8mmHg、0.1~0.5l/minのCO2ガスで気腹し、腹腔内を観察した後、他のトロッカーを挿入する。

図1:Nissen噴門形成術

図1:Nissen噴門形成術

a:手術室の配置、患児は可能な限り開脚位とし、術者は足側に立ち、第1助手(胃牽引)は患者の左側、第2助手(肝臓圧排)は患者の右側、スコピストは術者の左側に位置する。術中、上体挙上での操作時間が長く、体位が変化する可能性があるため、患児の固定を十分行うことが大切である。

b:トロッカー挿入部位(A→Eの順に挿入)
A. 臍上部 5mm カメラポート用
B. 右肋骨弓下 5mm 肝臓圧排用
C. 左肋骨弓下 5mm 胃牽引用
D. 右側腹部 5mm 術者ワーキングポート
E. 左側腹部 5mm 術者ワーキングポート

  1. 食道裂孔に到達するため、気腹後に頭側高位とし、右上腹部からスネークリトラクター等の圧排鉤を挿入して肝外側区域を圧排し展開する(図2)。
  2. 腹部食道を同定した後、噴門の肛門側胃壁を鉗子で把持し、尾側に牽引しフック型電気メスを用いて肝胃間膜の処理を行う(図2)。
  3. 噴門形成術を行うには胃底部の授動が大切であるため、フック型電気メスまたは超音波凝固切開装置(laparosonic coagulating shears;LCS. ハーモニックスカルペルR)を用いて短胃動静脈を切離する。この際、確実な血管処理と胃壁の熱損傷に十分注意が必要である(図3)。
  4. 腹部食道の背側に胃底部を通過させるため、いわゆる"window"を確保する(図4)。
  5. 左右の横隔膜脚を縫合し食道裂孔の縫縮を行うが、食道周囲に少し感覚があく程度に行う。
  6. 胃底部背側の剥離が行われ、授動が可能な状況のもとに、腹部食道で十分余裕を持って胃底部の縫合を行うようにする(図5)。
  7. 噴門形成の流さ、適度な締めつけ具合を考慮し、胃底部の縫合を3~0 Ethibond糸(非吸収糸)にて結節縫合する(図6)。
図
図2:肝外側区域の圧排とフック型電気メスを用いた肝胃間膜処理
図3:フック型電気メスまたはLCSを用いた短胃動静脈切離
図4:腹部食道の背側にwindow(矢印)を確保
図5:腹部食道は十分余裕を持ってラッピング
図6:ラップを3~0Ethbond糸にて結節縫合

4. 術後合併症・再発・予後

腹腔鏡下噴門形成術における症状の改善は約80~94%に認められ、開腹手術との間に有意差はない1)2)。また、術後合併症の発生率は7.3~30%で主にgas bloat、食道狭窄による嚥下困難、胃瘻部感染、術後肺炎、傍食道裂孔ヘルニアなどであり、自然寛解するものが多い3)~5)
最も問題となるのは再発で、術後再発の発生率は3~18.9%にみられ、特に呼吸器症状を呈する重症心身障害児では再発率が高いとされている6)7)。近年では、再発症例に対しても腹腔鏡下再噴門形成術が行われるようになってきた。
術後死亡に関しては、重度心身障害児の遠隔期死亡は原疾患に起因するものが多く、手術に関連した死亡は非常に少ない8)

腹腔鏡下脾臓摘出術

腹腔鏡下脾臓摘出術は、1992年に相次いで報告がなされて以来、術式にも改良や工夫が加えられて発展し、現在では脾臓摘出術の標準術式となっている。

1. 適応疾患

腹腔鏡下噴門形成術における症状の改善は約80~94%に認められ、開腹手術との間に有意差はない1)2)。また、術後合併症の発生率は7.3~30%で主にgas bloat、食道狭窄による嚥下困難、胃瘻部感染、術後肺炎、傍食道裂孔ヘルニアなどであり、自然寛解するものが多い3)~5)
最も問題となるのは再発で、術後再発の発生率は3~18.9%にみられ、特に呼吸器症状を呈する重症心身障害児では再発率が高いとされている6)7)。近年では、再発症例に対しても腹腔鏡下再噴門形成術が行われるようになってきた。
術後死亡に関しては、重度心身障害児の遠隔期死亡は原疾患に起因するものが多く、手術に関連した死亡は非常に少ない8)

図7:遺伝性球状赤血球症の腹腔内(巨大な脾腫を認める)
図7:遺伝性球状赤血球症の腹腔内(巨大な脾腫を認める)

小児における代表的な適応疾患は、特発性血小板減少性紫斑病、遺伝性球状赤血球症(図7)、自己免疫性溶血性貧血などである。門脈圧亢進症を伴う脾機能亢進症、悪性リンパ腫や白血病における脾腫による脾機能亢進、その他、脾嚢胞、脾動脈瘤、外傷性脾破裂なども適応となる場合がある。一般的に小児では摘脾後重症感染症を考慮する必要がある。

2. 手術手技

術式は、手術時間短縮と開腹移行の最大原因である出血対策を目標に改良が加えられてきた。血管処理は糸による結紮、クリッピング法から内視鏡手術用自動吻合器とLCSの使用により手術時間の大幅な短縮をもたらした。またlateral approachによって初めて脾背側の剥離が容易となり、脾門部、特に膵尾部の観察を可能にし、安全、迅速な自動吻合器を使用できる状態を作り出している。

図8:腹腔鏡下脾臓摘出術

図8:腹腔鏡下脾臓摘出術

a:手術室の配置、患児は右半側臥位とし、術者、第1助手(脾臓展開)、スコピストは患者の右側に立ち操作を行う。術中、体位が変化する可能性があるため、患児の固定を十分行うことが大切である。

b:トロッカー挿入部位(A→E)の順に挿入)
A. 臍下部 10mm カメラポート用
B. A~Cの中点 5mm 術者ワーキングポート
C. 心窩部 5mm 脾臓脱転用
D. 前腋窩線上 12mm 術者ワーキングポート Endo-GIA®挿入
E. 中腋窩線上 5mm 脾臓脱転用

  1. 手術場の配置・体位(完全右側臥位・術中は頭側高位)、トロッカー挿入・留置は図8のごとく行う。
  2. 脾結腸間膜の切離は脾下極に沿って切離を進めるが、結腸の損傷に注意する(図9)。
  3. 脾背側腹膜・横隔膜ヒダの切離は、切離ラインが脾臓に近接するように行う(図10)。
  4. 脾門部処理の注意点は、小児の脾門部の血管は成人例と比較するとその数が少なく、周囲の脂肪も一般的に少ないが、血管損傷により大量出血の危険性があるため、LCSを用いた慎重な操作が必要である(図11)。
  5. 頭側端の胃脾間膜切離の際には、フック型電気メスやLCSを用いて脾臓に近接するように行う(図12)。
  6. 脾臓周囲の間膜、脾門部周囲を十分に剥離した後、自動縫合切離器(Endo-GIA®)による脾門部の切離を行う(図13)。
  7. 狭い腹腔内で脾臓を回収するには工夫が必要である。当院ではエンドキャッチを用いてパウチ内で脾臓を粉砕し回収している(図14)。
図9:LCSを用いた脾結腸間膜切離
図9:LCSを用いた脾結腸間膜切離
図
図10:後腹膜(脾腎間膜)および横隔膜(脾横隔膜間膜)の切離(矢印)
図11:LCSを用いた脾門部の剥離
図12:フック型電気メスを用いた胃脾間膜切離
図13:Endo-GIARを用いた脾門部の処理
a:脾尾部に注意してEndo-GIA®をかける
b:脾門部切離断端(矢頭)
図14:エンドキャッチによる脾臓の回収(ペアン鉗子による粉砕処置を行う)

3. 合併症

一般的に脾臓摘出後に特有な合併症として、膵瘻、消化管瘻、左横隔膜下膿瘍、腹膜炎、副脾を残したことによりsplenosisによる血液疾患の再発、血小板の増加と血栓症、脾臓摘出後の発熱、感染症、左肺下葉の無気肺などがある。
血小板増加による血栓症防止のため、アスピリンでのコントロールが必要になる場合がある。開腹手術に比し腹腔鏡内下手術を施行した場合には術後経過は順調で、合併症の発生率に有意差はないと報告されている9)

[参考文献]
1) Gadenstatter M, et al : Surgery 126 : 548, 1999.
2) Hatch KF, et al : Am J Surg 188 :786, 2004.
3) Lima M, et al : Pediatr Surg Int 20 : 114, 2004.
4) Zanionotto G, et al : Surg Endosc 14 : 282, 2000
5) Rothenberg SS : J Pediatr Surg 33 : 274, 1998.
6) Georgeson KE : Semin Laparosc Surg 5 : 25, 1998.
7) Esposito C, et al : Semin Laparosc Surg 9 : 177, 2002.
8) Bourne MC, et al : Pediatr Surg Int 19 : 537, 2003.
9) Yee LF, et al : Arch Surg 130 : 874, 1995.