先天性横隔膜ヘルニアと先天性嚢胞性腺腫様肺奇形

順天堂大学小児外科・小児泌尿生殖器外科
主任教授 山高 篤行
先任准教授 岡﨑 任晴
末吉 亮

小児外科は、生後間もない新生児から思春期に至るまでの患児の、消化器、呼吸器、泌尿器、生殖器、良性・悪性腫瘍、体表の疾患など、きわめて多岐にわたる疾患を取り扱う分野である。近年、まだまだ治療に難渋する疾患もあるが、鏡視下手術の導入、周術期管理の進歩など、目覚しい変化を遂げている。本シリーズでは小児外科疾患の、特に手術治療のトピックスを紹介する。

先天性横隔膜ヘルニア

図1:CDHの胎児MRI像
図1:CDHの胎児MRI像
CDHの胎児MRI像。
胸腔内に脱出する腸管が
high intensity lesion(矢印)
として確認できる。

横隔膜ヘルニアは、胎生8週頃に形成される横隔膜の形成不全により生じた種々の欠損部位から腹腔内臓器が胸腔内に脱出する内ヘルニアである。発生部位により、胸腹裂孔(Bochdalek孔)ヘルニア・傍胸骨裂孔(Morgani孔)ヘルニア・食道裂孔ヘルニアの3つに分類される。
一般に先天性横隔膜ヘルニア(congenital diaphragmatic hernia: CDH)と胸腹裂孔ヘルニアは同意語的に用いられている。CDHの救命率は60~70%にとどまり、小児外科疾患の中で最も救命率の低い疾患の一つである。約8割が左側に発生する。小腸・結腸・脾臓・胃・肝などの腹腔内臓器がヘルニア内容となり、肝脱出例は重症例が多い1)

1. 病態生理

図2:左横隔膜ヘルニア(a)と右横隔膜ヘルニア(b)の胸部単純レントゲン所見
図2:左横隔膜ヘルニア(a)と
右横隔膜ヘルニア(b)の胸部単純レントゲン所見。
縦隔の健側変位と肺の圧排を認める。

CDHでは、出生直後に発症する症例は重症度が高く、以下の病態を有する。

  1. 肺低形成:組織学的に肺胞構造と気管分岐数の減少を特徴とする2)
  2. 新生児遷延性肺高血圧症(persistent pulmonary hypertension in the newborn: PPHN):肺の低形成に基づく肺動脈数の減少と肺動脈壁の肥厚を認め3)、低換気に伴う肺動脈攣縮により肺高血圧を生じる。

2.症状と診断

近年、胎児超音波・MRI(図1)により出生前診断される症例が増加している。重症例では、出生直後からの高度のチアノーゼを伴った呼吸障害を呈する。生後24時間以内に発症する症例が全体の約90%を占める。診断は、胸部単純X線検査(図2)により患側胸腔内の腸管ガス像と、縦隔の健側変位を認める。

3. 治療

図3:CDHの治療
図3:CDHの治療
a.無嚢型横隔膜ヘルニア。左横隔膜の後側方に大きな欠損孔を認める。
b.有嚢型横隔膜ヘルニアでも同様の欠損孔を認めるが、注意深く観察すると薄いヘルニア嚢(矢印)を確認できる。
c.ヘルニア嚢を翻転し切開を加えたところ(矢印)
図4:横隔膜ヘルニア欠損孔の縫合閉鎖
図4:横隔膜ヘルニア欠損孔の縫合閉鎖
後壁の辺縁を形成し非吸収糸を
用いて直接縫合閉鎖を行う(矢印)

CDHの治療は、横隔膜欠損部を縫合閉鎖する外科的治療(図3・4)で、欠損孔が大きい場合は、人工膜を必要とする場合もある(図5)。しかしながら、CDHの治療の主体は、出生直後の呼吸管理・PPHNの治療をいかに行うかに尽きる。PPHNが改善した後に待機手術を行うpreoperative stabilizationの考え方が一般的となっている4)5)
当院では、産科・小児科・小児外科の周産期医療チームにて、①予定帝王切開、②胎児麻酔と、出生直後からの高頻度振動換気法(HFOV)、一酸化窒素吸入による呼吸管理、③鎮静薬、強心薬投与、④心臓超音波検査による循環動態の評価と手術時期の決定をプロトコール化することで、治療成績の向上を得ている。6)7)

図5:左横隔膜全欠損例
図5:左横隔膜全欠損例
a.欠損孔が大きい場合にはゴアテックスシートを用いて人工膜閉鎖を行う(矢印)。
b.後壁の縫合
c.前壁を形成しながら縫合する。

先天性嚢胞性腺腫様肺奇形

先天性嚢胞性腺腫様肺奇形(Congenital Cystic Adenomatoid Malformation : CCAM)は、胎児期に終末細気管支が増殖し、さまざまの大きさの嚢胞を形成する先天性嚢胞性肺疾患である8)。1977年、Stockerら9)がI~III型に分類した病理形態学的分類が今日まで広く用いられ、さらに、1994年に0~4型に分けた新分類が提唱されている(表1)10)
本症は、胎児水腫を合併する予後不良の症例や新生児期に進行性の呼吸障害を呈する症例、胎児期に自然退縮を認めるものや出生後無症状で経過する症例など、さまざまな臨床症状を呈する。近年、出生前診断される症例が増加している。

表1 CCAMの組織学的分類 9)10)

3型分類 5型分類 発生部位 嚢胞形状 予後
0型 縦隔、肺門部 異常気管支・肺芽組織 不良
I型 1型 肺実質 3-10cm以上(単~多房)
線毛(+)粘液線(+)軟骨(+)
良好
II型 2型 肺実質 0.5-2cm
線毛(+)粘液腺(-)軟骨(-)
良好
III型 3型 肺実質 0.5cm以下
線毛(±)
不良
4型 末梢肺実質
胸膜下
肺胞・間質 良好

1. 症状と診断

超音波所見では、嚢胞による胸腔内の占拠性病変、縦隔偏移、羊水過多などが認められる。妊娠30週前後をピークに自然縮小を認める症例もある。新生児期早期に呼吸障害を呈する症例、出生後無症状で経過する症例、幼児期に呼吸器感染症・肺炎で発見される症例もみられる。無症状で経過し肺炎を合併する頻度は 10%~75%と報告によりばらつきがみられる。

2. 治療・予後

出生後のCCAMの治療は外科的切除である。出生前診断された症例が必ずしも症状を呈するものではなく、臨床経過を十分に検討した上で治療方針、特に手術のタイミングを決定することが重要と考えられる。肺低形成を認めなければ予後は良好である(図6・7)。出生後注意深く観察し、症状が出現すれば可及的速やかに手術を行う。手術は肺葉切除が治療的原則である11)
一方、無症状例(図8)に対しては、肺炎の発症、悪性腫瘍の発生母地となりうる点、小児の肺の発達などを考慮し、1歳前後までの手術を推奨する報告が多い。しかし、出生前診断された無症状のCCAMに関するprospective studyはほとんどなく12)、当科では、十分なインフォームドコンセントの後、手術あるいは無治療経過観察を選択している(図9)13)14)

図
図

6:出生前診断され、出生直後より呼吸障害を呈した症例の出生後6時間の胸部X線(a)と胸部CT(b)

右肺野の広範囲に多数の大小の嚢胞性変化を認める。日齢1に手術を施行、右上中葉に病変を認め、右上中葉切除術を施行した(c)。病理肉眼所見では、大小多数の嚢胞を認め(d)、CCAMII型と診断した。組織所見では、気管支、腺腫様の構造を呈していた(e・f)。

図7
図7:出生前診断されていたが、出生直後は呼吸器症状を呈さなかった症例

胸部X線上も特に異常を認めなかった(a)。日齢2にSpO2低下を認め、CT上左胸腔内に大きな嚢胞性変化(矢印)を確認した(b)。手術所見では、左上葉に嚢胞性病変(矢印)を認め(c)、左上葉切除術を施行した。
図8:CCAMの検査所見(無症状例)
図8:CCAMの検査所見(無症状例)

a:退治のMRI像。肺内に高信号域を認める(矢印)。
b:出生後の胸部X線では病変ははっきりしない(矢印)
c:胸部CTにて右下葉に嚢胞性病変を確認できる(矢印)。患児は無症状で画像検査上も変化を認めず、現在まで3年間無治療経過観察中。
図9:当科における胎児診断CCAMの治療のアルゴリズム
図9:当科における胎児診断CCAMの治療のアルゴリズム

家族との十分なインフォームドコンセントののち、無症状例では無治療経過観察を治療の選択肢として導入している。

[参考文献]
1) Kitano Y, et al: J Pediatr Surg 40: 1827, 2005.
2) Nakayama Y, et al: Arch Pathol Lab Med 115: 372, 1991.
3) Geggel RL, et al: J Pediatr 107: 457, 1985.
4) Okazaki T, et al: Pediatr Surg Int 19: 176, 2003.
5) Inamura N, et al: J Pediatr Surg 40: 357,2005.
6) Okawada M, et al: Pediatr Surg Int 22: 925, 2006.
7) Shiyanagi S, et al: Pediatr Surg Int (In press).
8) Chin KY, et al: Arch Pathol Lab Med 48: 221, 1949.
9) Stocker JT, et al: Hum Pathol 8: 155, 1977.
10) Stocker JT: Pulmonary Pathology (2nd ed.) New York, NY, Springer 1994, pp174-180
11) 田口智章ら:小児外科 36: 559, 2004
12) Aziz D, et al: J Pediatr Surg 39: 329, 2004
13) 岡崎任晴ら:日本小児呼吸器病学会誌(in press)
14) Sueyoshi R, et al: Pediatr Surg Int (in press)