ドイツ・ハノーバーより

下高原 昭廣

ドイツ・ハノーバーのハノーバー医科大学小児外科・Benno Ure教授の下へ留学させて頂いて2年余りが過ぎました。ハノーバーでの現況を報告させて頂きます。
まずは本務である研究についてですが、いざ実験を始めてみると、当然のことながらなかなか上手くいきませんでした。基礎研究の難しさ・厳しさは予想していましたし、ある程度覚悟はしていましたが、やはり全くいい結果が出ず時間だけが過ぎていった時期には、辛くて逃げ出したくなりました。アイデア自体が悪かったのか、技術的な問題なのか、このまま進めるべきか諦めて次に進むべきか・・・、いろいろと考えさせられました。しかし、研究室の仲間や家族に支えられ、いずれの試練も何とか乗り切ることが出来ました。とっつきにくいイメージのあるドイツ人ですが、比較的小さな研究室だからでしょうか、研究室のメンバーはとても親切に指導してくれます。
シェフであるUre教授は、仕事に関しては順天堂並みの?プレッシャーをかけてこられますが、理不尽な要求をすることはなく、医局員の家族やその生活にも目を配られる良きリーダーです。学術的なアドバイスだけでなく私と家族の生活を手厚くサポートして下さり、大変感謝しております。学術研究のとりまとめを任されているKuebler医師は、頭脳明晰で若手のホープですが、とても優しく細かな心配りをしてくれます。最も一緒に働く時間の長いバイオロジストのVieten博士、技術員のTeichmann氏は、私のドイツの母といった感じです。
ハノーバーについては以前ご紹介致しましたが、緑が多くとても気に入っています。休みの日には、家族みんなで動物園に行ったり、湖の周りをサイクリングしたり、ヨットセーリングを楽しんだり、サッカーや凧揚げをしたりして過ごしています。
ドイツと言えば昨年開催されたサッカーのワールドカップが記憶に新しいところですが、私達も初戦の対オーストラリア戦を観戦してきました。試合は残念ながら負けてしまいましたが、腹の底に響き渡る歓声と独特の高揚感、周囲のサポーターとの一体感は忘れられない思い出となりました。当時二歳だったわが息子も、そのときの印象が強かったのかサッカーが大好きで、家の中でも外でもボールを蹴りまくっています。このワールドカップに際しては、同門会の河野先生ご夫妻がドイツまで来られ、ハノーバーにも滞在されました。私達の家をお訪ねくださったり、近郊の観光を御一緒させてもらったりして、とても楽しい時間を過ごすことができました。その後も美味しい静岡の味を何度もドイツまで送って頂きまして、妻といつも大変感謝しております。
今回の留学で得たものは数え切れないほどありますが、最も大切に思えるのは、たくさんの人達が自分を支えてくれているということを心から感じ、素直に感謝できるようになったことです。医師として日常業務をこなしてきたなかで少しずつ積み重なってきた過剰な自信や傲慢さを、今回の留学で拭い去ることが出来たように思います。山高先生・宮野先生・河野先生をはじめとする順天堂同門の皆さん、現地で公私にわたり面倒をみてくださったMHHのスタッフ、不自由な生活にもかかわらず私を懸命に支えてくれた妻、泣きながらも頑張って現地の幼稚園に通った子供達、物心両面から援助して頂いた両親・親戚、時にはドイツまで足を運んでくれた友人達、そして奨学金を出して頂いた財団等、本当に多くの人に支えられてここまで来ました。日本に帰国後も、今のこの気持ちを忘れることのないよう肝に銘じて日々を過ごしていこうと思います。
このような貴重な機会を与えてくださった皆様に改めて深くお礼申し上げます。どうもありがとうございました。