愛蘭土(アイルランド)

土井 崇

昨年の秋に、田中(旧姓:中澤)奈々と入れ替えで愛蘭土に来てから、早や半年が過ぎました。今振り返ると本当に月日が過ぎるのが早く感じられます。奈々はこちらで本当に良い仕事をして帰っていったので、当然のことながら後を引き継ぐ者には同様の結果を期待され、またそれをしなくてはいけないプレッシャーを感じながらの半年でした。
こちらへ来て、私は2つの大きな研究プロジェクトを任されることになりました。1つはPrem教授の指導のもと、ここChildren's Research Centreでのnitrofenを用いたラットのCDHモデルの研究です。これは奈々だけでなく、先代の留学生がこれまでやってきた研究の継続という意味でも非常に重要なものです。これまで臨床しか経験のない私にとっては、もちろん「基礎研究とは何ぞや?」からのスタートとなりましたが、初めの約2ヶ月間で何とかreal-time RT-PCRの技術を習得し、3ヶ月目にはBAPSとEUPSAの2つの学会への抄録を作るところまで辿りつきました。6ヶ月目にはAAPへの抄録を作り・・・と、何だかんだでバタバタでしたが、振り返ってみればこの6ヶ月間で合計3つの抄録を作ることができ、順調に国際舞台での発表の機会を得ていることを、大変嬉しく思います。
もう1つの研究プロジェクトはUCD(国立ダブリン大学)にて、cadmiumを用いた鶏の臍帯ヘルニアモデルの研究です。発生学的に、腹壁に異常を来たす機序を様々な角度から検討しています。腹壁欠損に関する基礎研究はまだまだ少ないので、良い研究と発表ができるよう頑張ります。
愛蘭土は国の色(緑)に代表されるように、本当に緑に溢れた素敵なところです。その高い緯度の割には、冬でも日本ほどは寒くはありません。人々は温厚で優しい人が多く、治安も非常に良い国です。電車はほとんど無いに等しいので、車またはバスが基本的な交通手段になっています。私が住んでいる首都ダブリンは、ここ10数年ほどで急激な経済成長と人口の増加を経験し、恐らくはその情勢の速さに環境整備が追いつけないのでしょう、特に朝と夕の交通渋滞はかなりひどいです。また、ほとんどのアイルランド人は時間に対してルーズ、というか全く気にしないのが通例なので、きっと毎日の交通渋滞にもイライラすることはないのだと思います。ダブリンはヨーロッパの中でも異常に物価と地価が高すぎるところなので、日本円に換算したりすると少々嫌になりそうなこともありますが、何より家族が安心して住める治安の良さと引き換えと思うと、しょうがないかな、という気にも最近はなってきています。
もともとフランスへの留学希望が強かった私ですが、今となってはここ(愛蘭土)に来れて本当に良かったと実感しています。今私がここで研究できているのも、先代の留学生の先生方が努力された結果の賜物と考えています。そして、私がまたここで結果を残すことによって、また後輩達に良い道が作れるのだと考え、これからの留学期間の日々をより一層大切にしていきたいと思っています。一つの思い、帰国後一日でも早く「鼠径ヘルニア根治術を自分一人で完遂させられる小児外科医」になる。そんなたった一つの思いで前を向いています。