IgA血管炎
(旧病名:ヘノッホ・シェーライン紫斑病)

IgA血管炎は触れることのできる皮膚の紫斑がみられ、関節痛や腹痛・下血などの消化管症状、腎障害を合併することがある全身性の小型血管炎です。IgA血管炎は免疫複合体血管炎に分類され、IgAという抗体を含む免疫複合体が小血管に沈着することで炎症が生じます。IgA血管炎に伴う腎症(紫斑病性腎炎)はIgA腎症と区別のつかない糸球体腎炎を呈するため、腎症に関してはIgA腎症と同一範疇の腎炎として考えられています。(詳しくは "IgA腎症" をご参照ください)

症状

IgA血管炎は小児に好発するため、全体の約半数は5歳以下で発症します。17歳未満の発症率は年間10万人あたり10~20人であり、性差は男児に多く、女児の1.2~1.8倍になります。症状は触れることのできる紫斑、関節症状、消化管症状、腎障害がIgA血管炎の4徴です。皮膚症状はほぼ100%の症例で認められる症状で、関節症状は60~80%の症例、消化管症状は60~70%の症例、腎障害は報告によりばらつきがありますが20~60%の症例に腎炎を合併し、そのうち80~90%は自然寛解あるいは適切な治療にて改善します。しかし、3~20%は治療抵抗性あるいは治療に反応するが再燃を繰り返し、末期腎不全に至る症例もあります。

皮膚症状 頻度
100%
下肢を中心に触れることのできる紫斑を認めます。時に体幹や上肢にも分布します。紫斑以外にも丘疹、紅斑、膨疹、血管性浮腫など形態は様々です。成人では血疱、潰瘍形成も多く見られます。
関節症状 60-80% 一過性の関節炎・関節痛を認め、症状は移動性にみられます。股関節や膝関節、足関節が侵されることが多いですが、関節変形に至ることはなく、慢性的な機能障害には進展しません。
消化管症状 60-70% 腹痛、嘔吐、麻痺性イレウスなどの軽度の症状から大量下血や腸管虚血、腸重積、腸管穿孔などの重症例まで多岐に渡ります。消化管症状の多くは皮疹出現後の比較的早期に認めますが、皮疹の出現前に消化管症状を呈することもあります。
腎症 20-60% 尿検査で尿潜血や尿蛋白陽性を認めます。紫斑の出現から1ヵ月以内に発症することが多いですが、2ヵ月以降に発症する症例や紫斑出現前に血尿、蛋白尿を認める症例もあります。重症な腎炎を呈する症例もあり、腎機能障害やネフローゼ症候群をきたすこともあります。

検査所見

病理組織検査

  • 皮膚組織所見
    新規に出現した紫斑部を生検します。当院では皮膚科で行う検査です。皮膚の小血管を観察すると、好中球破砕像を特徴とする壊死性血管炎の所見を認め、血管に沿ってIgAの沈着を認めます。
  • 腎組織所見
    血尿や蛋白尿を認める症例や腎機能障害を呈する症例では、他の腎炎との鑑別や腎症の重症度判定のため腎生検を行うことが重要となります。腎組織所見は多彩ですが、IgA腎症と鑑別することが難しい組織像を呈します。

IgA血管炎治療アルゴリズム

IgA血管炎の多くの症例は自然寛解あるいは対症療法で改善しますが、成人発症の腎症を合併する症例では末期腎不全に至る症例もあり、副腎皮質ステロイドや免疫抑制療法を要する場合があります。消化管症状の中には腸重積や大量下血、腸管穿孔を呈する重症例もあるため注意が必要です。

IgA血管炎は自然寛解が得られる軽症例から重症例まで多彩であり、再発を繰り返す症例もあります。IgA血管炎に伴う腎症(紫斑病性腎炎)はIgA腎症と鑑別のつかない同一疾患として認識され、最近ではIgA腎症に対して行う扁桃摘出術+ステロイドパルス療法が紫斑病性腎炎にも有効であることが報告されています。そのため、当院では腎症を合併した症例は積極的に腎生検を行い、重症度により扁桃摘出術+ステロイドパルス療法を行うことを検討しています。

紫斑病性腎炎は難病に指定されています。指定難病の診断基準を満たし、症状の重症度を満たすか、軽症であっても高額な医療費が係るなど、一定の要件を満たす方に対し、医療費助成制度が利用することができます。申請については各地域によって異なりますので、住所地を管轄する保健所にご相談ください。(参考:"難病情報センター")