患者さんへ

輸血療法について

輸血療法は、他人(同種血)あるいは自分(自己血)の血液成分(血球,血漿)を輸注する治療法です。同種血の場合には輸血感染症や免疫学的副作用・合併症のリスクを伴うことから、インフォームドコンセントを十分に行って同意を得る必要があります。輸血用血液製剤は善意の献血により賄われており、少子高齢化時代を迎えて献血率も減少しており、医療施設においては血液製剤を適正に使用して廃棄しない輸血運用を行うことが求められております。
ランドシュタイナー博士によりABO式血液型が発見されてから1世紀あまりが経過し、輸血療法は大きな進歩をとげました。輸血用血液製剤に対する感染症関連検査も進歩して、現在では輸血感染症のリスクは低減し従来よりも安全な輸血用血液製剤が供給されるようになりました。また、致死的な輸血副作用である輸血後移植片対宿主病を予防する目的で、日常的に放射線照射血を使用するようになりました。しかし、輸血療法の過程において発生するヒューマンエラーによる過誤輸血は、依然として大きな問題となっています。

順天堂医院 輸血・セルプロセシング室における輸血業務

輸血関連検査

血液型検査・不規則抗体スクリーニング検査・交差適合試験に関しては、ゲルカラム法による自動輸血検査機器を使用することにより、通常業務時間帯だけではなく夜間・宿日直帯における検査精度を高めています。手書きの帳票類を廃止し輸血管理システムから自動出力することで、ヒューマンエラーを極力回避するよう努力しています。

輸血用血液製剤の保管・管理

赤十字血液センターから供給された輸血用血液製剤(同種血)および院内採血された自己血製剤は、輸血・セルプロセシング室において適正に温度管理された輸血専用保冷庫で保管・管理しています。手術室など輸血・セルプロセシング室以外の部署で輸血用血液製剤を保管することはありません。

輸血用血液製剤の適正使用

血液製剤の搬
血液製剤の搬

輸血用血液製剤の申込みに際して、医師との対面受付による「輸血前評価」を行っており、このことは適正使用だけではなく、患者さんに最適な血液製剤を準備するために重要であると考えています。また、輸血用血液製剤の出庫に際して、使用時にのみ最小単位数を出庫することを原則としており、手術室およびICU病棟等へ輸血・セルプロセシング室スタッフが血液製剤を直接届ける「搬送」業務を行っています。この結果、輸血実施部署において血液製剤が保管されることがなくなり、過誤輸血の防止に役立っていると思われます。適正使用の指標である、交差適合試験実施単位数/輸血実施単位数(2.0以下が適正とされる)は1.36(2004年)であり、当院において血液製剤は適正に使用されていると考えられます。

輸血用血液製剤に対するX線照射

新鮮凍結血漿および自己血製剤を除く、全ての赤血球製剤と血小板製剤に対して血液専用放射線照射装置によるX線照射を行っており、輸血後移植片対宿主病の予防に努めています。

バーコード輸血照合システム

バーコード輸血照合作業
バーコード輸血照合作業

順天堂医院に入院されるすべての患者さんに、バーコードが印字されたリストバンドを装着していただきます。患者さんに安全な輸血療法を行うために、ベッドサイドでは医師と看護師の2人がバーコード輸血照合システムを使用して照合確認を行った後、注意深く輸血を行うことを原則としております。具体的には、ベッドサイドで血液製剤を輸血する際には、バーコードリーダー付き携帯端末を使用して、リストバンドのバーコードと輸血用血液製剤のバーコードを読み取って照合することにより、取違えによる過誤輸血を防止しています。

自己血輸血

当院では、同種血による副作用・合併症を防止する目的で自己血輸血を積極的に行っております。現在、手術時における赤血球輸血の35%は自己血が使用されています。自己血の採血に際して、専用採血室において担当医師、看護師(認定・自己血輸血看護師1名、認定・臨床輸血看護師3名、認定・アフェレーシスナース2名を含む)、輸血・セルプロセシング室スタッフによるチーム体制で採血を行っています。術前貯血式自己血輸血の適応は、学童から高齢者まで拡大して対応しております。また、患者の状況において長期保存を可能とする(原則1年)、凍結保存を採用し対応しております。自己血輸血を実施する際も、取違えによる過誤輸血を防止する目的でバーコード輸血照合システムによる照合確認を行った後に輸血を実施しております。

輸血副作用のモニタリング

万一、輸血による副作用・合併症が発生した場合には、速やかな対応と適正な処置を行うために、輸血スタッフが臨床現場へ赴いて聞き取り調査を行い、「輸血副作用状況調査書」を作成して原因の究明と再発の防止に努めています。

小児輸血

小児に輸血療法を行う場合は、少量輸血(10-20 mL/hr以下)に対応するために輸血・セルプロセシング室のクリーンベンチを使用して無菌的にシリンジへ分注し、個々のシリンジにはバーコードを印字した製剤適合票を貼付けて出庫します。病棟で輸血を実施する際は、バーコード輸血照合システムを使用して照合確認を行った後に輸血を行います。

末梢血幹細胞移植

自己あるいは同種末梢血幹細胞の採取に際して、輸血・セルプロセシング室スタッフは医師や看護師と共にチームとして患者さんの全身状態の管理にあたっています。採取した末梢血単核球分画に関しては、幹細胞(CD34陽性細胞)の算定およびプログラムフリーザーによる凍結処理・液体窒素による保存・管理を行っています。

生体肝移植

2003年肝胆膵外科教授に川崎誠治先生が就任して以来、生体肝移植術が実施されています。輸血・セルプロセシング室では、ドナーの自己血漿採取など自己血を準備して生体肝移植術を支援しています。