【プレスリリース】「世界50カ国の急性呼吸窮迫症候群患者に対する気管切開を疫学調査」を発表いたしました
患者さんへ
世界50カ国の急性呼吸窮迫症候群患者に対する気管切開を疫学調査
~ 適正な気管切開の使用ガイドライン策定を目指して ~
研究者のコメント
本調査は世界5大陸50カ国459ICUの急性呼吸窮迫症候群(ARDS)における気管切開の疫学調査です。急性呼吸窮迫症候群は単一の病気ではなく、肺炎や外傷など様々な原因によって生じる急性の呼吸不全症候群を指します。薬物療法では残念ながら生存率改善につながるような治療法は現在まで知られていません。気管切開は人工呼吸管理を行う上でメリットがあるものとされていますが、侵襲的な処置であり、当たり前に行われているにも関わらず、世界中でどのように処置されているかは未だ明らかではありませんでした。
適応や重症度調整を行ったところ、気管切開を行うと短期(28日)の死亡率に改善が見られたものの、気管切開を実施した場合と実施しなかった場合で、患者の生命予後に差がないことが明らかになりました。気管切開は蘇生もしくは対症療法で根本治療ではありません。そのことを理解し、延命している間に原因疾患を診断、治療する必要があります。今後は急性呼吸窮迫症候群患者と気管切開と関係性の調査を更に進め、必要な人、必要でない人、タイミングを見極める因子と基準等の適切な気管切開のガイドラインの策定をしていく予定です。
総合診療科 阿部 智一