脳は頭蓋骨という閉じられた狭い空間の中に存在する特殊な臓器です。そのため頭蓋内に腫瘍が発生すると、逃げ場のない柔らかい脳組織は腫瘍から圧迫され、その部位に応じた様々な症状が出現することになります。そのため腫瘍は物理的に頭蓋外ヘ摘出する必要があり、これを頭蓋内腫瘍摘出術といいます。
しかし、脳は頭蓋骨内でも様々な重要構造物に取り囲まれているため、脳全体が一度に見えるほど大きく切開することはできず、安全な範囲の小さい骨窓から、脳の隙聞を利用してこの頭蓋内腫瘍摘出術を行うことになります。さらに一部の腫瘍は、顕微鏡で見ても正常脳と腫瘍部の見分けがつかない場合があります。この場合、脳の隙聞を開いた状態での位置情報や正常脳と腫瘍との境界がどこにあるかを示す画像情報を手術中に取得する必要があります。
当院は、2016年末に手術室内に専用MRIを設置し、手術下の状態で脳MRI画像を撮ることのできる専用手術室を設置しました。これにより、術野からは見えない範囲の脳に異常が起きていないかを確認したり、正常脳ギリギリまで腫瘍を切除することが可能となり、治療結果の改善が得られるようになりました。
脳神経外科では、全国に先駆けて、麻酔科や手術室スタッフと協力し、様々な腫瘍にこの術中MRIを使用し、さらなる手術の安全と治療成績向上に努めています。
