小児科学講座

ダイバーシティの取り組みを推進する女性医師
ジェネラリストでありスペシャリストである小児科医として、
子どもの心と身体に寄り添いたい。

小児科学講座
清水 俊明 教授×松井 こと子 特任准教授

小児科学講座

小児科医は多くの子どもたちが人生で初めて出会う医師。医学部生、とりわけ女子学生に大変人気のある診療科です。順天堂の小児科学講座には12の診療・研究グループがあり、多くの女性医師が在籍しています。その中のひとつ・循環器グループで活躍する松井こと子特任准教授と、清水俊明教授が小児科のやりがいや働き方改革の試みなどについて語ります。

ジェネラリスト兼スペシャリストな小児科医
子どもたちのかわいらしさが魅力

平澤 まず、小児科学講座の特徴について教えていただけますか?

清水 ご存じのとおり、小児科は子どもの内科疾患・救急疾患から心の問題まで多岐にわたる疾患を診断・治療することが大きな特徴です。さらに、生まれたばかりの新生児から思春期の年代まで、小児科では異なるライフステージのさまざまな発達・成長の各段階を診ています。

清水先生

小児科学講座 清水 俊明 教授
平澤 小児科学講座での医師の働き方はいかがですか?

清水 順天堂の小児科学講座には12の診療・研究グループ(消化管、肝臓・代謝、循環器、血液・腫瘍、新生児、アレルギー・膠原病、内分泌、神経、腎臓、感染症、発達、栄養)があり、各グループがグループ長を中心に診療内容や人員に応じた働き方を考えて対応しています。グループごとの特徴は特にありませんが、新生児グループは緊急性を要するため少しハードですね。逆に発達グループは外来での発達検査やカウンセリングが中心で、医師の8割強が女性です。松井先生が所属する循環器グループは緊急対応が必要で比較的ハードなグループですが、だからといって女性が少ないというわけでもありません。どのグループでも女性医師が活躍しています。

病棟

順天堂医院の小児科・小児外科病棟
平澤 清水先生、松井先生にお伺いします。小児科医を目指されたきっかけを教えていただけますか?

清水 私は当初、外科医になろうと思っていました。ところが臨床実習で各診療科をまわったところ、小児科が本当に楽しくて、やりがいのある科だと思ったんです。当時の研修制度では、今のように各診療科を経験したうえで自分の専門科を選択することができなかったので、ほぼ直感で選びました。子どもたちを助けることができたり、ご両親の喜ぶ姿を見たりすると、今振り返ってみてもあの直感は正しかったと思います。

松井 私が小児科を選んだ理由は、全身のすべての分野を診られると思ったからです。小児科の中での専門領域を選ぶ際は新生児グループか、小児循環器グループか、とても迷いましたが、結果的に循環器グループを選びました。研修医時代、初めてひとりで当直したときに遭遇した症例が新生児の先天性心疾患で、その患者さんの印象がとても強かったことと、
循環器疾患の特性上、同じ患者さんに長く寄り添えると思ったことが循環器グループを選んだ理由です。ちなみに、循環器は初期研修で経験した時は、正直苦手だと感じていました。苦手だからこそ、「身を置くことで少しでもできるようになりたい」という想いも強かったと思います。

松井先生

小児科学講座 松井 こと子 特任准教授
平澤 小児科医の難しさと魅力を、今どのようにお感じですか?

松井 難しさは、患者さんが赤ちゃんや子どもなので症状を伝え切れないところです。なかなか言い出せない内気な子どもの表情や、ファーストインプレッションから診断をつけていくことが、楽しい反面難しいと感じます。魅力は何にも増して子どもたちがかわいいことです。子どもたちが元気になって自宅へ帰っていくことがやりがいです。

ダイバーシティクラブの立ち上げ
働き方を変えるための挑戦

平澤 清水先生からご覧になって、小児科における女性医師の強みとはどのようなものですか?

清水 小児科はお子さんが相手なので、妊娠・出産・子育てを経験できる女性医師には非常に強みがあります。ご自身の経験を活かせる診療科です。ちなみに小児科を選択される女性医師には、松井先生のように子ども好きで優しい感じの方が多いんですよ。ただし、当直勤務などハードな面もあるので、志が強くないとやり切ることはできません。おかげで当科には、優しさと強さを持ち合わせた女性医師が多いですね。

松井 客観的に見ても、母になる女性医師が在籍していることは患者さんとご家族の安心材料になりますし、実際そう言っていただけることが多いです。患者さんが女の子の場合「女の先生でよかった」と言われたり、お母さんが女性医師を希望されることもあります。循環器の診察ではエコー検査もあることから、わざわざ私の外来を選んでくださる患者さんもいらっしゃるし、男性医師から紹介を受けることもあります。そういう意味でも、女性が選択しやすい診療科のひとつでしょう。

エコー

エコー検査の様子
清水 循環器グループは大事な子どもの心臓を診るわけですが、松井先生には物事を冷静に見極める力があります。的確に判断して慎重かつ確実に仕事をしていく能力があり、実行力・判断力が素晴らしいですね。その結果、手術や蘇生が緊急に必要な先天性心疾患のお子さんや、不整脈で除細動が必要な患者さん、カテーテルインターベンションが必要な患者さんを数多く救ってきました。

平澤 最近、松井先生を中心に小児科学講座の中で男女共同参画に関する取り組みが始まったとお聞きしているのですが。

松井 特任准教授の役割をいただいたことをきっかけに、2、3か月前に後輩の男性医師から声をかけられ、「順天堂小児科ダイバーシティクラブ」を立ち上げました。現在、中心メンバーは9名で、私が部長を務めています。メーリングリストには20名前後のメンバーが参加しています。
小児科の先生方には男女を問わず、ご家族やお子さんを大切にされる方が多いです。ただ、当直勤務が忙しかったり、長時間労働をせざるを得ない状況があったりと、ワークライフバランスが取りにくいという一面もありました。そこで、さまざまなグループの先生方が集まり、働き方を変えていこうと試みています。まずはお互いを知り合うことから始めようと、「第一線で当直を月5、6回こなすママドクターの生活を知ろう」というテーマで数名にオンラインでプレゼンをしていただきました。参加者は男女を問わず興味深く視聴し、質問も出ました。一人ひとり生活スタイルも違いますし、附属病院や関連病院など勤務先も異なり、意外とお互いに知らないことが多いので、そこから採り入れられることもあるかもしれないと思いました。

清水 この活動については私も関心を持っています。これまでもe-ラーニングや女性医師向けの研修を行ってきましたが、これを機会にしっかり推進していきたいですね。何といっても、「男性女性」ではなく「ダイバーシティ」という名称がいいですよね。

清水先生

将来のある子どもたちのために

平澤 ここで松井先生からリーダーとしての意気込みお聞かせいただけますか?

松井 臨床面では私よりも経験豊富な先生方がいらっしゃるので、まだリーダーという立場は実感しにくいです。ただ、ダイバーシティクラブで部長を務めるようになり、これまでより少しだけ高い位置から全体を俯瞰しなければならないと考えるようになりました。周囲に優秀な先生がたくさんいらっしゃるので、私も研鑽を積みつつ、ともに頑張っていきたいです。

松井先生

清水 今はまだリーダーシップが充分でなくとも、松井先生には今後リーダーシップ教育やキャリアプラン教育に参加していただいて、リーダーになるべく頑張っていただきたいですね。ご自身に足りない部分を把握していることは、反面とても期待できると思います。
リーダーシップに必要な要素は、実行力・判断力は当然として、寛容性・信頼性も非常に大切です。後輩に信頼される先輩でなくてはいけませんからね。松井先生はその部分を持ち合わせているので、ぜひ伸ばしてもらいたいです。また、ロールモデルの存在も重要ですので、松井先生には良きロールモデルになってもらい、小児科に入局する人を増やしていきたいですね。自分がロールモデルになるためには、自分が目指すロールモデルを作らないといけません。その点、順天堂には素晴らしい先生方がいらっしゃるし、小児科学会にもたくさんいらっしゃる。ただ、そういう先生方を目指すだけでなく、独自の自分らしさを出して、よりグレードアップしたロールモデルになってもらいたいです。

平澤 最後に、次世代の若手医師へのメッセージをいただけますか?

松井 自分で決断していないことは道半ばで諦めてしまったり、リタイアしてしまいがちです。ぜひご自身で決断して、小児科に来てください。将来のある子どもたちのために一緒に働きましょう。
私自身は医学部のバスケットボール部で活動していたのですが、主力ではなかった。でもその時先輩から「続けることに意味がある」と言われたことが印象に残っていて、医師になってからも挫けそうになったとき、この言葉を思い出しています。それから、自分ができないことがあるからと引いてしまうのではく、「できないことがわかっていても人を指導することは大事」と言われた言葉も、働き出してからよく思い出します。私自身もまだまだできないことはたくさんありますが、後輩にも懸命に指導をしています。

外来

外来業務にあたる松井特任准教授
清水 大きな話になりますが、日本社会の課題に少子化問題があります。私が考えるに、日本は子どもに優しい社会とはあまり言えません。ですから少なくとも私たち小児科医が頑張って、病気だけでなく健康増進や疾病予防まで含めて、子どもに優しい社会を作りたい。そのためにはマンパワーが必要です。若い方々にはぜひ小児科の魅力を感じて、小児科医になっていただきたいですね。小児科医は全身を診られるジェネラリストでありながら、12の専門領域でスペシャリストになれることも魅力です。
最後に、小児科学会が掲げるメッセージを紹介します。「子どもたちやご家族と一緒に、ワクワクドキドキしながら未来を作りましょう。それが小児科医の役割であり、やりがいでもあります。」

平澤 ありがとうございました。

松井先生

松井 こと子(まつい ことこ)

順天堂大学医学部
小児科学講座 特任准教授

2005年、順天堂大学医学部卒業。順天堂大学医学部附属静岡病院初期臨床研修医。2007年、順天堂大学医学部小児科学講座専攻生。2010年、日本小児科学会専門医。2014年、25th Annual American Society of Echocardiography Scientific Sessions, Young Investigators Award finalists.2015年、順天堂大学にて医学博士の学位授与。2017年、順天堂大学医学部小児科学講座助教。日本周産期新生児医学会専門医。2019年、同特任准教授。

清水先生

清水 俊明(しみず としあき)

順天堂大学大学院医学研究科
小児思春期発達・病態学 教授

1983年、順天堂大学医学部卒業。1988年、同医学研究科修了。1989年、順天堂大学医学部小児科学講座助手。スウェーデン・イエテボリ大学小児科への留学を経て1997年、順天堂大学医学部小児科学講座講師。1999年、同助教授。その後豪州アデレード大学Child Nutrition Research Centerへ留学し2007年より順天堂大学医学部小児科学講座教授。日本脂質栄養学会ランズ学術賞、順天堂大学医師会ベストプロフェッサー賞。日本小児科学会等、多数の学会に所属。現在、日本小児栄養消化器肝臓学会理事長。