乳腺外科学講座_座談会

女性外科医のパイオニア・齊藤光江教授が率いる女性外科医たち!
工夫と助け合いで「ホーム」となる医局へ

乳腺外科学講座
齊藤光江 主任教授 × 崔先生 × 岡崎先生 × 佐々木先生
仙波先生 × 石塚先生 × 神保先生

乳腺科TOP_2

順天堂大学乳腺腫瘍学講座は、女性医師が多い診療科のなかでも、特に女性が多い医局の一つです。そのため、「女性の活躍推進」についても、一歩進んだ講座という側面があります。今回、主任教授の齊藤光江先生とさまざまな立場の女性医師にお集まりいただき、乳腺科の魅力や働き方の工夫などについてお話をいただきました。

崔先生

崔 賢美先生
医師18年目、入局13年目、助手(医局長)。幼稚園児のお子さんがいる。

岡崎先生

岡崎 みさと先生
医師18年目、入局7年目、助教(外来医長)。一般病院の勤務を経て、子どもが小学生のタイミングで本学に入局。現在、お子さんは高校生。医学博士、外科専門医、乳腺専門医。

佐々木先生

佐々木 律子先生
医師11年目、入局6年目、大学院4年生。市中病院で外科専攻医をし、医師6年目で本学に入局。幼稚園児のお子さんがいる。外科専門医、乳腺専門医。

仙波先生

仙波 遼子先生
医師7年目、入局5年目、大学院3年生。外科専門医、乳腺認定医。

石塚先生

石塚 由美子先生
医師6年目、入局4年目、大学院2年生。外科領域専門研修プログラム修了。

神保先生

神保 ひかり先生
医師4年目、入局2年目。研修医が終わり外科専攻医2年目。2022年度出産予定。
*役職等はすべて座談会実施時(2022年3月時点)

乳腺腫瘍学講座の魅力
~乳腺腫瘍学講座を選択した理由から~

平澤 本日は、齊藤先生、そして、6名の女性医師にお集まりいただきました。ありがとうございます。外科系診療科の座談会で、これほど多くの女性医師にご参加いただけることに感激しております。最初に、皆様が乳腺腫瘍学講座を選択された理由を伺うことで、乳腺腫瘍学講座(乳腺科)の魅力を皆様にお伝えできればと思います。神保先生から、いかがでしょうか。

神保 私が乳腺科に決めたのは、研修医で消化器内科をまわっていた際、たまたま、腫瘍の精査の結果が乳がんだったという患者さんに出会ったことがきっかけです。その方は、まさに「子育ての渦中」にいらっしゃる方でした。そのとき、悪性腫瘍の患者さんの生活背景を考えながら治療を進めていくという、患者さんに寄り添った治療を考えられることが自分に合っていると感じ、乳腺科を選択しました。

佐々木 私は医学部入学時から外科を志しており、5年目まで消化器外科でいこうと考えていました。けれども、医師になってしばらくがむしゃらに働いている中で、学生時代の同級生の出産・育児というライフイベントを実際に目の当たりにしたとき、将来のライフワークバランスを考えるようになりました。一度立ち止まって考え、出てきた選択肢の一つが乳腺外科でした。

齊藤先生

乳腺腫瘍学講座 齊藤 光江 教授
齊藤 外来医長の岡崎先生、医局長の崔先生はどうでしたか。

岡崎 医学部5年生の時にがん研究会大塚病院を見学に行ったことがきっかけで乳腺科に興味を持ちました。同じ女性のためになる医療に携わりたいという思いと、手術に関わる科に進みたいと考えました。手術が比較的短時間で化学療法など内科的な面もあり、ライフワークバランスの変化に応じて長く続けられるのではないかと乳腺科を選択しました。

崔 私は「何か手技のある科を選びたい」と考えていました。研修医2年目のとき、はじめて乳腺科の存在を知り、一般外科と女性の外科の両方を学べることに魅力と興味を覚え、選択をしました。

石塚 私は医師に対して、漠然と「町の内科医」というイメージを持っていました。そのため、内科医になろうかと迷ったときもありましたが、初期研修の際、自分には内科より外科が向いていると感じました。そのなかで、乳癌の診断から、手術や薬物治療も含めた実際の治療、終末期まで自分たちで責任を持って診ることができるところに魅力を感じ、乳腺科を選びました。また、学生実習の際に、乳腺グループで女性医師が頑張っていた印象が強くあったことも魅力に感じていました。

仙波 私は出身大学も初期研修も順天堂だったので、「入局も順天堂内にしよう」と思っていました。最初は、眼科や耳鼻科を考えていましたが、初期研修で乳腺腫瘍学講座をまわらせていただいた際、女性が活躍できる外科で、診断から治療まで長く患者さんに寄り添えるところだと思いました。働いている先生方も、とてもかっこよく見えました。外科専門医が取得できるか心配でしたが、「頑張ってみよう!」と思い、乳腺科に決めました。

座談会の様子

座談会の様子
齊藤 外科専門医を取得するには、乳腺腫瘍学講座に所属しつつ、他の科をローテーションでまわる必要があります。

平澤 そうすると、「ハードルが高い」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。その辺りも含め齊藤先生、乳腺腫瘍学講座の魅力をまとめていただけますか。

齊藤 乳腺科の患者さんはほとんどが女性ですので、女性医師に対するニーズは高く、「女性がいる」ということがとても大事な領域です。乳腺科では、単一の臓器・疾患が主な対象となりますが、そこには、生殖医療の問題、乳房再建の悩み、遺伝の問題、病理や再生医療の分野など、多様な分野がかかわってきます。診療に関しては、主に検診をやりたい、あるいは遺伝カウンセラーになりたいなど、自分が本当に好きな分野に入り込み、狭いながらも深く掘り下げることもできるという特徴があります。女性の場合、ライフイベントに合わせて、一時的に特定の分野を深く掘り下げることができるため、家庭と仕事を両立させやすい仕事の仕方が探れる領域です。加えて、海外では内科的な治療と外科的な治療で担当する医師がわかれていますが、日本では、診断も手術も内科的な治療もすべて外科医が担っています。もちろん、内科的治療を積極的にやっていきたいということで、腫瘍内科に移っていく人は性別を問わずいます。けれども、最近の乳腺科では、「何でもできる」という意識の人が多いように感じています。

岡崎先生_検査

エコー検査をする岡崎先生

女性医師の多い医局でのマネジメント
~公平性を大切にお互いに助け合う環境づくり~

平澤 乳腺腫瘍学講座は、女性医師が多い医局だと思います。ライフイベントで勤務制限がある人が1割の組織であれば、何とかやり過ごすことができても、女性が多い医局の場合、難しい局面もあるかと思います。マネジメントで工夫されている点について、お話を伺いたいと思います。最初に齊藤先生から医局の方針をお話しいただけますか。

齊藤 日本で女性が働く場合、どこの組織も同じだと思いますが、子育てで辞めてしまう女性がいるため、人員構成が30代でくぼみができるM字カーブとなり、所属員の年齢が二極化してしまいます。そこで、私たちの医局では、M字カーブのくぼみでぎりぎり残っている人たちに、医局長などの役職をやってもらうようにしています。趣旨としては、年齢的に中間にいるため、上の世代と下の世代のどちらのこともわかることを期待して、そして、自分たちが忙しいからこそ、一番忙しい人たちのためになるマネジメントができるだろうと期待してのことです。だからこそ、逆に役職は長くは担当せず、短期間だけ就いてもらうことにしています。実際、外来医長の岡崎先生は、新型コロナウイルスで出勤停止となった医局員が出た際の勤務調整を、自分が帰宅してからの時間を利用して革新的に行ってくれました。
 加えて、医局員のライフイベントについては、「対応したときに周りから不公平感や不満が出ないようにすること」を重視して考えています。十年以上、経験を積み重ねていくなかで、少しずつ私自身にも「やり方」がわかるようになり、時代の変化も加わり、最近は、皆が全体で助け合える雰囲気ができてきました。

外来診察_石塚先生

外来で診療をする石塚先生
平澤 今の齊藤先生のお話を聞かれて、医局長の崔先生はどう思われましたか。工夫したことなどを教えていただければと思います。

崔 私は、皆がお互い気持ちよく助け合う雰囲気づくりが大事だと思っていて、そこを特に意識して、この1年間、医局長を務めてきました。ただ、お互い助け合ったときに、一時的に負担がかかってしまい不満を持った方もいたと思っています。自分自身もいっぱいいっぱいだったため、十分なケアができなかったと反省しています。

齊藤 医局員の声の拾い方については、皆と半年ごとに面談をするのですが、会話のなかに少しでも出してもらった課題をきちんとキャッチすることを意識しています。あとは、「ここが困っています」と気づいたことを自主的にしっかり教えてくれる人の声もよく聞くようにしています。そうすることで、自分がアンテナを張っていないところにも目が行き届くのではないかと思っています。

打ち合わせ

外来での打合せの様子(向かって右から石塚先生、岡崎先生)
神保 自分が休むと常勤職で働いている先生に負担がかかってしまうので、なかなか相談しにくいことはありますが、大学院生の先生が声をかけてくださり、「一歩離れたところ」からアドバイスをいただいて、とても助かったことがあります。

平澤 今、神保先生のお話もありましたが、ライフイベント期間の女性医師の働き方については、いかがですか。

齊藤 仕事の目的は、人それぞれ異なります。そのため、たとえば、「当直はできません」と言う人については、当直がない附属病院に移るなど、「別の勤務地に移る」という選択肢を用意します。けれども、ここ(本郷)は「ホーム」であり、私たちは「ファミリー」なので、「戻ってきたかったらいつでも戻ってきていいんだよ」というスタンスでいます。そして、ホームにいる人たちを一番ケアして、なるべく不公平感が生じないように工夫をしています。

手術中_3-2

手術の様子(向かって左が佐々木先生、右が髙橋由佳先生(非常勤助教))
平澤 公平性ということで言えば、「当直ができない」となると、不満が出て来ることはありますね。この問題については、どうしても語らないといけないことだと思います。

齊藤 私たちの医局では、これまで子どもがいる場合は、当直免除としてきました。けれども、岡崎先生は、子どもがいても「当直をやります!」と手を挙げて、「子どものいる女性医師の当直第1号」になってくれました。皆が岡崎先生の真似をする必要はありませんが、「子どもがいても当直ができる」ということを見せてくれました。また、佐々木先生は当直ができない分、お正月やGWなど、休日の診療や救急当番を積極的にやってくれています。

佐々木 私は入局して2か月で出産休暇に入ってしまったため、自分が働ける時間内には120%、150%で仕事をして、皆さんのサポートに感謝の気持ちを込めて応えていきたいという思いでやってきました。

岡崎 私も帰宅時間の遅い夫と子どもとの三人暮らしのため、当直にはとても苦労をしました。引け目を感じた時期もありましたが、佐々木先生と同じように年末やGWなど、単発でできるときに当直をすることで、乗り越えました。2021年秋から当直をしています。その際には両親にも協力してもらっています。

平澤 乳腺科では、女性医師が多い分、さまざまな工夫をされていることがわかりました。

齊藤光江先生_2

これからの女性医師への期待

平澤 最後に、大学院生の先生方に乳腺腫瘍学講座での研究の魅力と、齊藤先生に女性医師に期待をすることをお話しいただきたいと思います。

石塚 乳腺腫瘍学は、先にお話がありましたとおり、多方面からアプローチができる分野です。順天堂大学は、各講座間の垣根が低いので、興味を持ったところにアクセスしやすいことが特徴だと思います。また、自分が希望する方向に進めるようにサポートをしてくれる体制が整っていると感じています。
仙波 自分の興味があることをじっくりと研究する機会を得られたことが良かったと思います。私は他施設で研究をしていますが、そのような選択肢も自分で決めることができます。今後、自分のライフステージの段階が変わっていく可能性はありますが、どのような状況になっても「ここにいたい」と思える医局だと思っています。

佐々木 私は齊藤先生にお力添えをいただき、薬理学やゲノム再生、難病センターの先生方にサポートをいただきながら研究をしています。入学当初には考えてもいなかった「ベーシックリサーチ」を存分に経験させてもらうことができました。順天堂大学は、ソフトおよびハード面でのサポート体制が整っており大学人として働きながらも大いに学べる環境だと思っています。齊藤先生をはじめとしたアカデミアの先輩方の背中を追いかけながら、これから外科を志す後輩が参考に出来るロールモデルの一人になりたいと思います。

座談会の様子②

お話しされる仙波先生(左)と神保先生(右)
平澤 最後に齊藤先生からお願いいたします。

齊藤 私が外科医になった時代は、半分近くの診療科が「女性の入局不可」を表明している時代でした。そのようななかで、やりたいことをやるために、地域医療をやっている外科に入局しました。その医局で女性は私一人だったため、大事にされましたが、その代わり偏見もありました。理不尽なことに出会い、「どうしたらいいのかな」と思っていたとき、先輩の言葉(ひとの2倍働けば認めてもらえるんじゃないという)から、気持ちとしてはひとの2倍働いてきた感覚です。今の時代からみると、それは「苦労」と言われることかもしれませんが、私自身はパイオニアとして、女性が通れる道を「切り開いた」という自負、醍醐味を味わってきたと思っています。けれども、それは壁に細い針穴を開けただけのようなものです。大勢が通れるように穴を広げ、広い道を整備するのはこれからです。ですから、次世代の女性医師には、私の時代にはなかったクオリティを高めることや「私はこっちの道を広げたよ」ということを誇ってもらいたいと思います。場合によっては、「小ささ」(少なく働いてもきちんと医療や医学に貢献しているというような)を誇ってもらっても良いと思っています。自分の好きなことを見出して、自分の身体に合わせた道を整備するということを楽しんでいってもらいたいと思います。

平澤 齊藤先生、最後に女性医師の励みになるお話をありがとうございました。皆様、本日はどうもありがとうございました。

齊藤先生_2

齊藤 光江(さいとう みつえ)

順天堂大学大学院医学研究科
乳腺腫瘍学 主任教授
 
1984年、千葉大学医学部卒業。1988年、東京大学医学部附属病院分院外科(助手)。1990年、米国留学(テキサス大学医学部附属MDアンダーソン癌センター細胞生物学ポスドク)。1995年、癌研究会附属病院乳腺外科(医員)。2000年癌研究会研究所遺伝子診断研究部研究員兼任。2002年、癌研究会新薬開発センター教育研修室副室長兼任。2002年東京大学大学院医学系研究科臓器病態外科学代謝栄養内分泌外科(講師)。2006年順天堂大学乳腺内分泌外科先任准教授。2012年、同主任教授。日本乳癌学会専門医、日本乳癌学会指導医、日本外科学会専門医。日本専門医機構副理事長、日本医学会連合理事、日本外科学会理事、日本がんサポーティブケア学会、JASCC理事・副理事長、国際がんサポーティブケア学会 MASCC理事、日本医学会幹事。