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手術の奥深さに魅せられて

医学部外科学教室・消化器外科講座
那須 元美 特任准教授

今回は食道胃外科の那須元美先生に学生時代の啓心寮での思い出や、外科医を目指した「きっかけ」、医師を目指す皆さんへのメッセージを伺いました。

啓心寮に入りたい!

高校生の時に医学部に進路を決め、自宅から通える医学部の中に順天堂がありました。順天堂の魅力の1つは1年間の寮生活でした。親許から離れて暮らす大学生活に憧れて、合格してからは「早く寮に入りたい!」と思っていました。

啓心寮ではスポーツ健康科学部の女子学生と同室で、すぐに打ち解けて毎日が楽しかったです。今でも彼女たちとは仲が良く、付き合いが続いています。大学に入ってバスケ部に入り、本格的にバスケットをやっているスポーツ健康科学部の子に夜、体育館で教えてもらったり、テスト前に勉強を手伝ったり…本当に楽しい思い出ばかりです。学部を超えた友情を育めたのも、寮生活ならでは。貴重な経験ができたと思います。

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横のつながり・縦のつながり

順天堂交響楽団(オーケストラ部)にも入りました。今でこそ大所帯ですが当時は部員も少なくて色々と大変でした。交響楽団にはOB団体もあり、病院でミニ・コンサートなどをしていて、現役生との交流もあります。

自分の母校の附属病院に就職し、同じ授業を受けた仲間や先輩方と一緒に働くというのは医学部特有だと思います。オーケストラでは普段は話せないような目上の先生とも音楽を話題に対等にお話しさせていただいたり、入学したばかりの学生さんと一緒に演奏できたりします。看護学部の学生と学部に関係なく同じ仲間として活動できる部活は少なく、卒業してからもその繋がりに助けられることもあって、皆さん卒業後も時間をやりくりして練習に参加しています。

病院で働いているドクターと学生の距離が近いのは、順天堂大学の好きなところの一つです。昨年は医学部6年生のあるチームの「担任」でした。本学の医学部学生には必ず担任が付いています。チームの学生と一緒に医師国家試験の勉強プランを考えたりしていたので、医師国家試験に皆が合格した時は本当に嬉しかったです。

手術の奥深さに目覚めて

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医学部6年生になって同級生が進路を決めていく中、ギリギリまで迷って外科に進むことを決めました。外科は診断がつき、手術を受けて、元気になられて退院する―という「流れ」があるのが、良いなと思いました。「大変だよ」と両親には心配されましたが。外科医は男性社会というイメージがあるかもしれませんが、女性だから体力的に無理だとか、そういうことを実感したことはありません。

外科の魅力は、手術そのものの面白さもありますが、日々容態が変化していくので、治療の効果が目に見えやすい所です。大きな手術後でも、「昨日より楽になった」と喜ばれたり、歩いたり、食事をとったり、笑顔になった患者さんを見ることができ、とてもやり甲斐を感じます。

外科にもいろいろありますが、食道胃外科ではその字の通り、食道や胃にできたがんの手術などを行います。手術後の患者さんにとっては食道胃外科は一番辛い分野のひとつかもしれません。というのは肺や心臓の手術なら、すぐに食事ができるのですが、食道や胃の手術後は1週間位は口から食事をとることができず、点滴で栄養を補給するからです。でもだいたい2~3週間で退院できるようになります。

今、一日の大半を病院の建物内で過ごしています。外科はチームで患者さんを担当していますが、人数的には男性医師の方がまだまだ多いです。年配の女性患者さんなどでは男性医師に気兼ねしてしまったり、なかなか言い出せない内容もあるようですが、同性の私だと話し易いという患者さんも時々いらっしゃるので、そんなご相談を受けた時は診療チームの一員として役に立てている、と嬉しく思います。

科を問わず研修医時代は患者さんと接するタイミングも多く、話しやすいと感じる方も多いので、研修医には患者さんの本音をうまくキャッチできるようにと話しています。

あの時の緊張を忘れずに

今までで一番緊張したのは、初めて手術を執刀することになった時です。今でもよく覚えていますが、急患でした。「なん分後に(救急車が)来るからっ!」と上司の先生に言われ、急いで教科書で知識の再確認をしてから手術に臨みました。あの時は本当に緊張しました。

順天堂の医学部1年目は主にさくらキャンパスで一般教養科目などを学び、1年目後半から医学部独自の授業があります。白衣を着て病棟に行き、医師という仕事 のイメージを体験してもらう病棟体験は1年からありますが、2年生になると解剖学実習、注射の練習など、「医学部なんだ」と実感する授業が増えます。将来 一緒に働く仲間になってくれる学生さん達ですから、自分の体験談を話したり、少しでも多くのことを伝えたいです。

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モデル(マネキン)に注 射針を刺したりする時に、「その先に実際の患者さんをイメージして」と話しています。学年が上がると覚えることもテストも増えますが、初めての注射などの 緊張感を忘れず、変に慣れないでいて欲しいと思います。1つ1つの体験で感じた緊張感が、勉強への熱意に繋がると良いなと思いながら指導しています。

今は教えてくださる方が周りにたくさんいて、医者として日々学ぶことがある有り難い環境です。いずれは責任を持って任せていただけるようになれるよう、努力を続けていきたいと思っています。

外科医になろうよ!

外科はチームです。皆、手術が好きで選んできているので手術時間が長いことはさほど苦労とは思っていません。ただ、拘束時間はどうしても長くなりがちなので、そういう所だけを見て「外科は大変そう」と思って外科に進む人が減ってしまうのはとても残念に思います。やってみると楽しいし、一つとして同じ手術はありません。時間のやりくり等は何とかなるものですから、いろいろ心配するよりも少しでもやってみたいという気持ちがあれば、是非トライして、仲間になってほしいですね。

「指先が器用じゃないので外科は…」と尻込みする人もいますが、あまり関係ないと思います。ではどんな人が外科医に向いているのか…というのは私自身、まだ判らないので判るようになりたいです。手術が好きなら大丈夫だと思いますが。

私の少し上の世代は女性の外科医は本当に少なかったようですが、今は増えてきて働きやすい環境になってきていると思いますし、私でも勤まっているから、きっと大丈夫!と思ってほしいですね。

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医学部外科学教室・消化器外科講座 那須元美先生 経歴
2000年順天堂大学医学部医学科卒業。伊豆長岡病院(現静岡病院)、練馬病院などを経て2012年2月より順天堂医学部附属順天堂医院上部消化管外科助教。医学博士。

好きな作家:池澤夏樹、塩野七生