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恵まれた医療教育環境が 「仁」の心を持つ理学療法士を養成

保健医療学部 理学療法学科
高橋 哲也 教授

順天堂大学では、2019年度より理学療法士及び診療放射線技師の養成を行う「保健医療学部」を新たに開設します。

今回は、社会の超高齢化・医療の高度化とともにニーズが高まっている理学療法士について、自身も理学療法士として多彩なキャリアを持つ高橋哲也先生に、学びの面白さや仕事のやりがいをお聞きしました。

先生が理学療法を学ぼうと思われたきっかけは?

私が物心ついたころ、既に祖父はリウマチを患い、松葉杖の生活を送っていました。晩年は呼吸器系の病気も併発し、弱っていく姿を見るうちに、私の中で「人のために何かできる仕事に就きたい」という気持ちが徐々に強くなっていきました。
ただし、私が高校生であった1980年代当時は、「リハビリテーション」という言葉が今ほど一般的でなく、私も「理学療法士」の存在をよく知りませんでした。初めて「理学療法士」について耳にしたのは、バレーボールの部活動でひざのケガに悩んでいた友人からです。彼から「理学療法士」の話を聞き、なかなか面白そうな職業があると受験したことがきっかけです。

どんな学生時代でしたか?

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当時はまだ国内に理学療法士を養成する4年生の大学がなかったため、国立病院附属のリハビリテーション学院を受験し入学しました。一クラス20人の少人数でしたので、同級生とはたいへん近い距離で、よく学び、よく遊び、よく考えた学生生活でした。また、3年間は寮生活でしたので同級生をはじめ先輩・後輩とはたいへん仲よく、楽しく生活し、人間関係の保ち方などを学ぶことができました。また、恩師は学生想いのすばらしい先生でしたし、他の教員の先生ともたいへん近い距離で学べましたので、初めて親元を離れての生活でしたが大きな不安はなく、人間としても大きく成長した3年間だったと思います。入学時は補欠合格でしたが、卒業試験はトップの成績で、卒業式には卒業生代表として答辞を述べさせていただきました。同級生たちとは今でも当時を懐かしみ交流しています。

学生時代のエピソードを教えてください。

多くの理学療法士の皆さんにとって学生時代の一番の思い出はやはり臨床実習ではないでしょうか?私が学生の頃は、最終学年に8週間の臨床実習が3回ありました。私は、国立仙台病院(現在の国立病院機構 仙台医療センター)、東京大学医学部附属病院、秋田県太平療育園(現在の秋田県立医療療育センター)で実習させていただきました。

最初に実習させていただいた国立仙台病院では、(今では考えられないほど)数多くの患者さんを担当させていただきました。歩行練習の方法を巡って左右に麻痺を持つ脳卒中患者さんと意見が合わなく、たいへん悩んだことがありました。患者さんの残存能力を考えると右に杖をつくべきでしたが、ご本人は「左がいい」とおっしゃり、一時険悪な雰囲気にもなりました。人それぞれ他人には見えない感覚があり、教科書どおりにはいかない難しさを学んだことに加え、患者さんの声をよく聴く大切さを学びました。秋田県太平療育園では、障害を持つ子どもを担当し、そこで私は「自分は全く何もできない」ことを思い知らされました。何かしてあげたくても、当時の自分にはまだ技術も知識も備わっていなくて、理学療法士のもつ責任の重さを痛感しました。どの実習も悩ましく、学べば学ぶほど課題が積み重なりましたが、私の場合は、臨床実習を通して「もっと勉強しなくては(もっと勉強したい)」というモチベーションがとても高まりまし

hokeniryou_Prof.Takahashi_03順天堂医院内リハビリテーション室

理学療法の学びの魅力を教えてください。

理学療法とは英語で「Physical Therapy」または「Physiotherapy」といいます。「Physical」は身体の、身体的な、物理学の、自然科学の、などという意味があり、「Physio-」は生理学を意味します。身体のメカニズムや運動に関する生理学的機序、運動学的機序など、身体についての様々なことを学ぶことができます。また、その知識を病気を持った方や障害を持った方の実際の生活復帰や社会復帰にどのように応用すれば最適かなどを考える大変興味深い学問領域です。自分の考え次第で、患者さんや障害を持った方の生活が大きく変わりますので、責任も重大です。重圧もありますが、その分、患者さんからは感謝されることも多く、たいへん学び甲斐がある学問でもあります。
自力で立ち上がれなかった方が立てるようになった、きれいに歩けるようになった、痛みがとれた、自信をもって会社に通えるようになった、「おかげさまで…」とお礼を言われる。これが理学療法士の最大のやりがいでしょう。達成感を感じると同時に、「もっと何かできるのでは?」と考え、「自分の技能を高めたい」と心から願い努力するようになります。
人のためのあくなき探究、これこそが「理学療法の学びの魅力」と思います。

学科の4年間で、学生にはどのような人に育ってもらいたいですか?

大学での4年間は、理学療法士の国家資格を取るためだけの4年間にせず、学是「仁」の精神に溢れる本郷・お茶の水キャンパスで、患者さんの将来をも左右する医療プロフェッショナルとしての責任感と倫理観を醸成してほしいと思います。学生時代の4年間はあっという間です。
順天堂大学での様々な経験を通して、4年後に社会に出たときに病気の人や障害を持つ人に「自分に何ができるのか?」を真剣に考えることができるよう生涯に渡って学び続ける理学療法学の探究の土台を身につけてほしいと思います。

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学びの場としての、順天堂大学の優れた点を教えてください。

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順天堂医院で働く理学療法士に向けた講習会の様子

なんといっても同じ本郷・お茶の水キャンパス内に順天堂医院があり、患者さんに接する機会が多いことです。「師はベッドサイドにあり」多くの医師、医療従事者が口にする言葉です。患者さんほど素晴らしい先生はいません。患者さんに接する時間が長ければ長いほど、理学療法士としてのマインドを醸成でき、医療プロフェッショナルとしての心がまえができていきます。そのため、私たちの学科では病院と密に連携し、学生が病院のリハビリテーション室に行く機会を少しでも増やしたいと考えています。そのためには、教員自らが臨床に足を運び、常に最新の医療や理学療法に触れたり学生とともに診て学ぶことができるように、全教員が順天堂医院の臨床業務を兼務します。

順天堂大学では、医学部リハビリテーション医学、順天堂医院、理学療法学科の垣根を取り払い、「教育(Education)」「環境(Environment)」「経験(Experience)」の3つのEをキーワードに、真の「チーム医療教育」の実現に向けて準備を進めています。
専任教員には海外留学経験者を多数配置し、海外協定校を通じた国際化とグローバル人材の育成を進めていきます。

最後に受験生へのメッセージをお願いします。

180年の歴史ある順天堂大学に2019年度より新たに保健医療学部理学療法学科が新設されます。国際都市「東京」の中心、多くの大学が集まる文教地区で、各分野の第一線の教員と、医学部や順天堂医院と共有する最高の環境で、楽しい学生生活を送ってほしいと思います。
順天堂の「順天」の由来は、孟子の言葉の「順天者存 逆天者亡(自然の理に従う者は存続し、背く者は滅亡する)」からきていると伺っています。「理」を学ぶ「理学療法学科」で皆さんをお待ちしております。

順天堂大学保健医療学部開設準備室 特任教授 高橋 哲也先生 経歴
国立仙台病院附属リハビリテーション学院理学療法学科卒業
カーティン大学大学院理学療法研究科で修士号、広島大学大学院医学系研究科で博士号を取得
兵庫医療大学、東京工科大学を経て、2018年より順天堂大学保健医療学部開設準備室 特任教授、順天堂大学医学部附属順天堂医院リハビリテーション室 室長補佐
日本理学療法士協会常務理事、日本心臓リハビリテーション学会副理事長も務める