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いのちを守るエンジニア。 医療機器で人々を救う臨床工学技士を養成

医療科学部 臨床工学科
峰島 三千男 教授

順天堂大学では、2022年4月に臨床検査技師および臨床工学技士の養成を行う「医療科学部」を新たに開設します。

今回は、医療機器のスペシャリストである臨床工学技士という職業について、臨床工学分野のパイオニア的存在である峰島三千男先生に、学びの面白さや仕事のやりがいをお聞きしました。

臨床工学の道に進んだきっかけは?

私自身は工学部の出身で、学びの中で医療分野の技術開発に興味を持ったことがきっかけです。学生時代に、人工腎臓研究を行う研究室に配属されたことで、病気に苦しむ人を助ける手段として、治療技術の研究・開発という道があると知り興味を持ちました。工学博士を取得後、腎不全治療では日本有数の医科大学に所属することになり、医療スタッフに囲まれながら未来の治療法を探る日々が始まりました。

臨床工学技士としてのやりがいは?

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臨床工学技士は昭和63年に施行された比較的新しい医療国家資格です。背景には医療技術の進歩に伴い、医師や看護師だけでは対応しきれない高度な医療技術を扱う専門の技術者が必要になったことがあります。人工透析装置だけではなく、人工心肺装置、呼吸補助装置などの医療機器の操作や保守点検を行うのが臨床工学技士の仕事です。コロナ禍で耳にした人も多い「ECMO(エクモ)」 もその一つですね。このようなハイテク医療機器は技術の進歩に伴い、今後も次々と開発されていきますから、「臨床工学技士」はますますニーズの高まる有望な医療職種だと言えます。
臨床工学技士はただ機器を管理・操作するだけではありません。医師や看護師と共に目の前の患者さんに対し、チームで治療に参画します。機器を扱うことで医療の最前線に立つ臨床工学技士は、まさに「いのちを守る」仕事をします。大きなやりがいを感じることができるでしょう。

臨床工学の学びの魅力を教えてください。

臨床工学は、「医学」と「工学」の学際領域にある比較的新しい学術分野です。医療サイドのニーズを適確に捉え、それを達成するために必要な新しい技術を創出することを目指しています。私は透析治療の研究を続ける中で、より患者さんの負担が少ない治療法はないかを模索してきました。従来の腹膜透析の効率の悪い部分をテクノロジーで補うため、工学的なアプローチからシステムを改良し、実際の治療に役立った例もありました。このように、自分のアイディアから生まれた技術が人助けに直結するという達成感は、ぜひ皆さんにも味わってもらいたい経験です。たとえ他分野ですでに確立された技術であっても、それを医療に応用することによって大きく臨床分野に貢献できることがあります。工学の知識を生かして医療をグレードアップさせていく過程が、臨床工学の面白さだと感じています。

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順天堂大学だからこそできる臨床工学の学びとは?

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順天堂大学は医学部をはじめ多彩な医療系学部と附属病院を擁しており、十分な医学教育を受けられるとともに臨床実習の場も充実しています。臨床工学科のカリキュラムは医学系、工学系がほぼ半分ずつです。工学系科目では、医用工学や人工臓器分野で教育・研究実績のある教授陣が教鞭をとります。臨床工学技士に必要な工学・技術を効率よく習得することができるのが本学科の魅力でしょう。さらに2023年度には健康データサイエンス学部(仮称・設置構想中)も設置予定ですから、データサイエンティストと協同して、より正確でリアルタイムにフィードバック可能な新規医療機器の開発も進められるでしょう。今後も臨床のニーズに沿った研究・開発が展開できることに大きな期待を抱いています。

どんな人材になってほしいと考えていますか?

例えば超音波エコーなどの生理検査や検体検査などを扱う臨床検査技師、CTやMRIなどの画像診断関係の検査を行う診療放射線技師など医療機器を扱う職業は他にもあります。一方で臨床工学技士が扱うのは、人の生命を維持するのに必要となる機器ですから、まさに「いのちを守るエンジニア」としての活躍が期待されます。実際に医療の現場で患者さんと接しながら業務を実践するので責任も大きいですが、本学でしっかりと基礎を身に付け、次世代のリーダーとなる臨床工学技士を目指してほしいと思います。さらによりよい治療法はないのか、新しい技術開発はできないかという視点を持って、次につなげられる人になってほしいと思っています。機械を触るのが好きな人はもちろん、「人の役に立ちたい、人助けをしたい」という気持ちを持った学生さんをお待ちしています。

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医療科学部臨床工学科 峰島三千男先生 経歴
早稲田大学 大学院理工学研究科博士課程 応用化学専攻修了。
東京女子医科大学 腎臓病総合医療センターで助教授、臨床工学科教授を経て、2022年より順天堂大学医療科学部臨床工学科長・特任教授。
血液浄化を中心とした臨床工学の研究に従事。日本アフェレシス学会、日本透析医学会、日本生体医工学会、日本人工臓器学会、等に所属。