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千葉ロッテマリーンズへのサポートを拡充! アスリートを支える順天堂のスポーツ医科学


順天堂大学スポーツ健康科学部と医学部は、千葉ロッテマリーンズと連携し、新入団選手への体力測定、メディカルチェックなどのサポートに取り組んでいます。スポーツ健康科学部では2023年度から、入団2年目以上の選手の体力測定も実施。現場での測定、チームへのフィードバック、さらにその土台となるスポーツ医科学研究を通して、プロ野球選手のパフォーマンス向上をバックアップしています。

入団2年目以降の選手も体力測定をスタート

順天堂大学と千葉ロッテマリーンズ(以下、マリーンズ)の連携が始まったのは、2020年度。スポーツ健康科学部では初年度から、新入団選手への体力測定や筋力測定を行い、スポーツ医科学の観点から選手の体力や能力を把握するサポートに取り組んできました。

   

 

「新入団選手を対象にしたのは、“初期値を持つこと”が一番のポイントだと考えたからです」。そう話すのは、マリーンズへのサポートの中心的役割を担っているスポーツ健康科学部の青木和浩教授です。「プロ野球選手になる前のデータを取ることはとても重要で、それがあるからこそ、マリーンズでの強化で体組成や筋肉量、発揮される筋力がどう変化したかを客観的に把握でき、科学的な評価が可能になります」

2023年度からは、入団時の“初期値”がある2年目以降の選手の体力測定もスタート。毎年シーズン終了後のタイミングで測定を行い、変化を追跡していく計画を進めています。「測定したデータは、選手のパフォーマンスの評価はもちろん、育成やスカウティングにも有益な情報になるのではないかと、球団も期待しています」(青木教授)

 

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マリーンズ・スポーツパフォーマンスディレクターの楠貴彦氏と話す青木和浩教授

 

さらに、体力測定を担当するスポーツ健康科学部の窪田敦之准教授は、マリーンズの春季キャンプに帯同し、選手に小型GPSデバイスを装着してトレーニング強度や負荷の管理サポートも行っています。窪田准教授は、ウェラブル端末を活用した運動量の管理・評価により、野球選手がけが・故障を防ぎながらパフォーマンスを高めるための研究などに取り組んでいますが、体力測定後にマリーンズの選手と交わす会話が、研究のヒントになっていると言います。

「選手が普段のプレーで何を感じているか、それが筋力のデータにも表れているのか、いないのか。そういった、選手の主観的評価と客観的なデータの一致やズレについて、選手と球団のトレーニングスタッフ、僕の3人で話すのですが、会話の中にたくさんヒントがあるし、とても勉強になっています」(窪田准教授)

 

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選手のフィードバックする窪田敦之准教授。

マリーンズでは卒業生トレーナーも活躍

順天堂大学で行った体力測定の結果は、マリーンズに共有され、それを元に各選手が必要なレーニングを行って、測定で見つかった“弱点”を強化していきます。そのトレーニングを指導するストレングストレーナーの1人として、現場で選手を支えているのが、スポーツ健康科学部出身の植原典子さんです。

植原さんは、スポーツ健康科学部を卒業後、順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科博士前期課程を修了し、パーソナルトレーナー、早稲田大学スポーツ科学学術院の助手を経て、20232月からマリーンズの1軍ストレングストレーナーを務めています。

 

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マリーンズの1軍ストレングストレーナー・植原典子氏(大学院スポーツ健康科学研究科2019年修了)

 

ストレングストレーナーは、主に筋力などフィジカル面を強化するトレーニングを指導し、パフォーマンスの向上をサポートする役割を担っています。植原さんは、今年初めて順天堂大学での体力測定に参加し、研究施設で測定するデータの有用性を感じたと言います。

「チームでの体力測定には限界があり、特に体の中で起きていることをデータで見ることができるのは、大学での測定の良さだと思います。実際、選手たちのトレーニングの結果がそのままデータに表れていると感じましたし、同時にウィークポイントも明確になりました。それを踏まえて、次にどう取り組むのかを選手とトレーナーで考えるわけですが、客観的なデータがあるので、『今回こういう結果が出てすごく良かった。でも、ここがまだ不足しているから潰していこうね』と根拠を示しながら話ができる。それは選手にもトレーナーにもプラスになると思います」

 

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球団との定期ミーティングで課題共有と情報提供

体力測定やメディカルチェックから始まったマリーンズとの連携ですが、現在は2カ月に1回程度、スポーツ健康科学部、医学部、球団が定期ミーティングを開き、通年で課題の共有や情報提供を行っています。

ミーティングでは、球団側の課題に対して、大学側が野球以外のスポーツの知見を使って提案をすることも珍しくないといいます。

 

「新しい問題のように見えて、実はほかの競技では昔からの問題だった、ということは結構あるんです。そういう時、順天堂にさまざまな競技の研究をしている先生がいるので、他競技の知見を使ってすぐに解決策を提案できる。そういうところも、球団からの評価に繋がっているかもしれませんね」と窪田准教授。青木教授も「マリーンズのみなさんも、さまざまな競技から知見を得ることにとても前向きで、かなり視野が広がっているようです」と、長年多様なスポーツの研究やサポートをしてきた順天堂だからこそのサポートに手応えを感じています。

領域を超えた知見が集まる「スポーツ医学研究室」

スポーツ健康科学部と医学部がしっかりとタッグを組んでいることも、順天堂大学によるサポートの大きな特長です。マリーンズへのサポートに限らず、順天堂大学のスポーツ医科学分野では、学部、研究領域、職種を超えた研究・教育が行われています。その拠点の一つとなっているのが、スポーツ医学研究室です。

関連リンク

スポーツ医学研究室ホームページ:https://sportsmed.juntendo.ac.jp/

 

 

スポーツ医学研究室には、整形外科や循環器内科のスポーツドクター、窪田准教授のような運動器の研究者、アスレティックトレーナー、理学療法士など、スポーツに関わるさまざまな領域の教員、大学院生が所属し、有機的に連携しながら研究を進めています。研究ジャンルは、トップアスリートの競技力向上やけが予防だけでなく、障がい者スポーツ、生涯スポーツとして運動を楽しむ人を対象にしたものなど幅広く、スポーツ健康科学部や医学部、大学院の学生が、興味を持った分野の研究チームに入って学びを深めています。研究室のそうした状況を、窪田准教授は「出会いのプラットフォーム」と表現します。

 

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スポーツ医学研究室・髙澤祐治教授と和氣秀文研究科長と千葉ロッテマリーンズの選手たち。

 

「僕のゼミには、野球選手を対象にGPSと加速度センサーを使った研究をしている学生がいるのですが、その分野で野球より先を行くラグビーの現場で研究する大学院生が同じ研究室にいるので、すぐに質問したり教えてもらったりすることができる。研究室内で、野球、ラグビー、サッカーのトレーナーがディスカッションして、良いものをシェアするといったことも、よくあります。他分野の人と出会い、知識を共有することで、学びが大きく広がる研究室になっていると思います」(窪田准教授)

 

 

人との繋がりは、植原さんが学生時代に感じた、順天堂大学の魅力の一つ。「スポーツ健康科学部はキャンパスもそこまで広くないので、先生との距離が近く、親身になって相談に乗っていただきました。指導教員の先生には、学外のトレーナーの方を紹介していただいたりもして、人間的な環境がすごく良い大学だと思います」(植原さん)

 

そして、植原さんのように、現場で活躍する多くの卒業生の存在も「スポーツ医学に長年取り組んできた順天堂大学が持つ強み」と窪田准教授は言います。「プロから子どもまで、どのカテゴリにも活躍している順天堂の卒業生がいらっしゃる。そのネットワークが、研究のフィールドを広げる上での助けになっています」

セカンドキャリアや「支える側」へのサポートも

マリーンズへのサポートでは、体力測定や筋力測定の継続に加え、野球のパフォーマンス評価に有効な指標を探っていくことが、今後の課題です。現在は幅広く測定を行っていますが、測定結果と選手の成績を検証して、プロ野球選手の評価に特化した筋力や体力要素を絞り込み、よりシンプルで継続しやすい測定にしていくことをめざしています。「さらに、引退後の選手がスポーツ医科学の知識を学ぶ場を提供するといったセカンドキャリア支援、ファンや地域住民などチームを支える側の人たちへのアプローチなどについても、スポーツ健康科学部が持つ知見を生かしていくことができればと考えています」(青木教授)

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測定の様子を見守る和氣秀文研究科長。スポーツ健康科学部が持つ知見を生かしてサポートしていきたいと考えています。

 

トップアスリートから得られるデータは、高校野球や少年野球などにおいてもけが防止に役立つ可能性を持っています。また、スポーツ医学の研究は、アスリートだけでなく、すべての人の健康や医療のヒントになりえるものです。「トップアスリートも一般の方も、基本的には同じ“ヒト”。ただ、アスリートは同じ動きをたくさん繰り返したりする“特殊な活動”をしているので、人間の体に負担がかかるとどんな問題が起きるのかが分かりやすい。逆に、アスリートの中には、一般的に人間に起きる問題が起きない人もいて、そこに注目すると運動の価値が分かってきます。あくまでも“僕の考えでは”という注釈付きではありますが、スポーツ医学は、スポーツで起きている医学的な問題を解消するための学問であり、一般社会で起きている医学的問題をスポーツから得られる知見で解決する学問でもあるんです」(窪田准教授)

 

プロ野球選手をはじめ、アスリートのパフォーマンスをサポートしながら、研究をあらゆる人の健康に貢献する知見として還元する。順天堂大学のスポーツ医科学の学びは、広く深く進化を続けています。

 

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