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2022.02.09 (WED)

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花粉症予防アプリ「アレルサーチ®」があなたの花粉症タイプを見える化し、おすすめの花粉症対策を提案します

~アップデートで「花粉症タイプの見える化」「おすすめの花粉症対策提案」機能が追加~

順天堂大学(学長:新井 一)医学部眼科学講座の猪俣武範准教授らの研究グループは、花粉症予防のための研究用スマートフォンアプリケーション「アレルサーチ®」の機能追加を行い、2022年1月20日に公開しました。今回のアップデートにより、「花粉症タイプの見える化」「おすすめの花粉症対策提案」機能を新たに搭載しました。これらの機能により、個々人が自身の花粉症タイプに合った効果的な予防や対策を行うことが可能になると期待されます。
「アレルサーチ®」とは?
「アレルサーチ®」は、順天堂大学医学部眼科学講座による花粉症研究ビッグデータ研究の基盤となるアプリです。
花粉症に関する自覚症状アンケートや目の赤みの画像診断、生活習慣等に関するユーザーの情報を収集することにより、多様な花粉症症状の層別化や発症要因の解明等の研究に役立てることを目的として開発されています。
現在アンドロイド版とiOS版がリリースされており、Google Play、App Storeより無料でダウンロードすることが可能です。

「花粉症タイプの見える化」~あなたの花粉症タイプを明らかに~

花粉症の症状は個人差が大きく、目のかゆみや鼻づまりなどの症状の種類や程度、症状の出やすい部位も人により様々です。「花粉症タイプの見える化」機能は、ユーザーの花粉症症状をグラフにより視覚化し、適切な治療介入やセルフメディケーション(自己管理)の実施を可能にします。この機能は、2018年2月1日から2020年5月1日に行われた「アレルサーチ®」を用いたクラウド型大規模臨床研究※1により開発された、花粉症の症状を層別化※2する手法を応用して作成されました。

図1

※1 クラウド型大規模臨床研究:クラウドとはクラウドコンピューティングの略で、インターネットなどコンピューターネットワークを経由して、サービスを提供する方法である。クラウド型大規模臨床研究とは、実際の問診票や質問紙票を持たなくても、インターネットを通じて大規模に行う研究を指す。
※2 層別化(医療):ある疾患に属する患者を、バイオマーカーを用いていくつかのサブグループに分類し、それぞれのサブグループに適した治療法を選択することを目的とした医療。

「おすすめの花粉症対策提案」~あなたに合った予防行動を提案~

「アレルサーチ®」では、ユーザーの花粉症タイプを明らかにするだけではなく、「おすすめの花粉症対策提案」機能によって、マスク、メガネ・ゴーグルの着用、点眼薬の使用などの中から、個々人の花粉症タイプに合ったおすすめの予防行動を提案します。また、既に実施している予防行動や、その割合を記録し、より適切な予防行動の選択をサポートします。

図2

提案する花粉症対策の例

図3

その他の「アレルサーチ®」の機能

【1】「花粉症レベル」の測定
「アレルサーチ®」では花粉症の自覚症状アンケート、QOL (Quality of Life:生活の質)アンケート、目の赤み度測定を実施し、花粉症レベルを計測します。この花粉症レベルはSNSにシェアすることも可能です。また、どの地域にどのくらいの花粉症レベルの人がいるかをチェックできる「みんなの花粉症マップ」を見ることで、花粉症の流行状況をリアルタイムに確認することができます。

【2】花粉症と生産性の関係を数値化
花粉症によって影響を及ぼすとされるQOLや労働生産性レベルを数値化してレポートします。

【3】「みんなの花粉症マップ」で地域毎の花粉症レベルを表示
ユーザーから集められた花粉症レベルの情報をもとに、地域毎の花粉症レベルを地図上で表示・検索できます。

【4】 「みんなの花粉症ダイアリー」により花粉症症状を日記化
「みんなの花粉症ダイアリー」機能により、毎日の花粉症レベルチェックや労働生産性レポートをいつでも確認することができます。

図4

図5

図6

図7

<画像左から>①アプリのダッシュボード/②アンケート結果や目の赤みの画像診断から花粉症症状と生産性の数値化/③みんなでつくるリアルタイムの「みんなの花粉症マップ」/④花粉症症状を日記化「花粉症ダイアリー」

研究代表者コメント(順天堂大学医学部眼科学講座 准教授 猪俣 武範)

花粉症は日本で約3,000万人が罹患する最も多いアレルギー疾患で、発症すると日常生活のQOLが低下するだけでなく、仕事や学業の生産性低下にも影響し、社会コストを増加させると言われています。また、花粉症はアレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、花粉皮膚炎などの多臓器に渡る症状を引き起こしますが、その症状の出現部位や重症度、治療への効果等は個人差が大きく、なかなか個々人に合わせた最適な花粉症診療が進まないという課題がありました。
我々は「アレルサーチ®」を用いた研究※3により、花粉症の様々な症状と特徴を検証した結果、花粉症の多様な症状を層別化する手法の開発に成功しました。今回のアップデートで搭載した「花粉症タイプの見える化機能」「おすすめの花粉症対策提案機能」はその手法を活用したものです。このアップデートにより、ユーザーの花粉症タイプを視覚化し、予防行動の提案による個々人によるセルフケアを推進することで、ユーザーのQOLの向上のみならず、保険診療である花粉症を「セルフメディケーション(自己管理)」にシフトさせることで、医療費削減にも大きく貢献できることを期待しています。

図9

※3 本研究はアレルギー免疫分野の医学雑誌Allergy 誌オンライン版に掲載(2021年9月4日付)されました。
原著論文タイトル: 「Symptom-based stratification for hay fever: A crowdsourced study using the smartphone application AllerSearch.」
掲載論文のリンク先: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/all.15078

「アレルサーチ®」における“患者・市民参画”

医学研究・臨床試験における「患者・市民参画」とは、医学研究・臨床研究プロセスの一環として、研究者が患者・市民の知見を参考にすることです(https://www.amed.go.jp/ppi/teiginado.html)。
「アレルサーチ®」による研究では、患者・市民参画の推進により、患者さんもしくは患者さんの家族に「患者・市民委員」として参画いただいて、疾患に関わる経験をもとに、研究に助言いただく体制で進めてまいりました。
具体的には、趣旨に賛同してくださった患者・市民委員を公募し、意見交換会を実施しながら、アンドロイド版の開発とiOS版のアップデートを行いました(http://allergy-search.com/ppi/index.html)。患者・市民委員と研究チームの対話を通じて、患者・市民委員に「アレルサーチ®」を丁寧に評価していただき、花粉症に関する質問項目や、インターフェースの改善を行いました。

図10

「アレルサーチ®」ビッグデータを用いた花粉症研究と個人情報の保護について

本研究では、「アレルサーチ®」のユーザーの方々のうち、同意を得た方々のデータを花粉症ビッグデータ研究にも使わせていただきます(順天堂大学倫理委員会:承認番号順大医倫第2020117号)。個人の特定に結びつく情報は収集しませんので、万が一、データが漏洩した場合も、個人の権利に害を与える可能性は極めて低いと考えられます。花粉症ビッグデータ研究への利用許可はユーザーの自由意思に基づくものですので、いつでも中止することができます。
アプリケーションのダウンロードについて
Google Play、App Storeから、無料でダウンロードいただけます。

図11

協賛ならびに研究助成金

本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)免疫アレルギー疾患実用化研究事業「患者・市民参画によるスマートフォンアプリケーションを用いた花粉症の自覚症状の見える化と重症化因子解明のための基盤研究」、順天堂大学2019・2021年度環境医学研究所プロジェクト研究、平成31年度公益財団法人一般用医薬品セルフメディケーション振興財団による研究助成を受けました。また、株式会社シード、アルコンファーマ株式会社、ロート製薬株式会社の助成を受け実施されました。しかし、研究および解析は研究者が独立して実施しており、助成元が本研究結果に影響を及ぼすことはありません。本研究にご協力いただいた参加者の皆様に深謝いたします。