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2020.08.27 (THU)

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花粉症予防アプリ「アレルサーチ®️」のアンドロイド版をResearchStack®を使って開発! iOS版もアップデートして同時公開

~「みんなの花粉症ダイアリー」機能を新搭載。患者・市民の声を採り入れたアプリ研究を実現~

順天堂大学(学長:新井 一)医学部眼科学講座の猪俣武範准教授らの研究グループは、2018年2月より公開している花粉症予防のためのiOSアプリケーション「アレルサーチ®️」のアンドロイド版を新たに開発し、2020年8月26日に公開しました。今回のアンドロイド版では、開発にあたり本邦で初めて(*)臨床研究プラットフォーム「ResearchStack®」を利用しています。また、新たに搭載された「みんなの花粉症ダイアリー」機能はiOS版もアップデートして搭載しています。なお、今回のアンドロイド版の開発及びiOS版のアップデートでは、患者・市民委員を公募し、意見交換会を実施しました。花粉症の当事者や家族の視点を導入しながら進める「患者・市民参画」(patient and public involvement)という考え方を採用し、研究者にとってだけではなく、患者・市民にとって価値のあるアプリを目指しました。 *本学調べ
「アレルサーチ®️」とは?
「アレルサーチ®️」は、順天堂大学医学部眼科学講座による花粉症研究ビッグデータの基盤となるアプリです。
花粉症に関する自覚症状アンケートや目の赤みの画像診断、生活習慣等に関するユーザーの情報を収集することにより、多様な花粉症症状の層別化や発症要因の解明等の研究に役立てることを目的として開発されています。

臨床研究プラットフォーム「ResearchStack®」で開発した
本邦初のアンドロイド版アプリ

「ResearchStack®」は、「ResearchKit®」と同様に医学研究をサポートする目的で開発されたオープンソース・フレームワークです。iOS版「アレルサーチ®️」は2018年2月に「ResearchKit®」を用いて開発されましたが、今回開発されたアンドロイド版では、本邦で初めて「ResearchStack®」が採用されました。また、ResearchStack®とResearchKit®のそれぞれを使用し、アンドロイド版とiOS版両方のアプリケーションを開発したのも「アレルサーチ®️」が初めてとなります。
本アプリはGoogle Play、App Storeより無料でダウンロードすることが可能です。
※ResearchStack®(http://researchstack.org/)、ResearchKit®(https://www.apple.com/jp/researchkit/ )

順天堂_アレルサーチ

「アレルサーチ®️」における“患者・市民参画”

医学研究・臨床試験における「患者・市民参画」とは、医学研究・臨床研究プロセスの一環として、研究者が患者・市民の知見を参考にすることです(https://www.amed.go.jp/ppi/teiginado.html)。
「アレルサーチ®️」による研究では、患者・市民参画の推進により、1)患者・市民にとって役に立つ研究成果の創出、2)医学研究の円滑な実施の実現、3)研究参加者保護に資することを理念としています。
具体的には、趣旨に賛同してくださった患者・市民委員を公募し、意見交換会を実施しながら、アンドロイド版の開発とiOS版のアップデートを行いました(http://allergy-search.com/ppi/index.html)。患者・市民委員と研究チームの対話を通じて、患者・市民委員に「アレルサーチ®️」を丁寧に評価していただき、花粉症に関する質問項目や、インターフェースの改善を行いました。

患者・市民参画

「アレルサーチ®️」について

【1】どうやって「花粉症レベル」を計測するのか?
「アレルサーチ®️」では花粉症の自覚症状アンケート、QOL(Quality of Life:生活の質)アンケート、目の赤み度測定を実施し、花粉症レベルを計測します。この花粉症レベルはSNSにシェアすることも可能です。また、どの地域にどのくらいの花粉症レベルの人がいるかをチェックできる「みんなの花粉症マップ」を見ることで、花粉症の流行状況をリアルタイムに確認することができます。

【2】花粉症と生産性の関係を数値化
花粉症によって影響を及ぼすとされるQOL(Quality of Life:生活の質)や労働生産性レベルを数値化してレポートします。

【3】みんなの花粉症症状を日記化
新たに追加実装した「みんなの花粉症ダイアリー」から、毎日の花粉症レベルチェックや労働生産性レポートをいつでも確認することができるようになりました。

【4】アプリを通して花粉症に対する予防行動を啓発
アプリ内で、マスク、点眼、内服など花粉症に対する予防行動に関する質問をすることで、これらの予防行動を喚起し、花粉症の症状の緩和ならびに予防行動の啓発を行います。

画面イメージ

【図①】アプリのダッシュボード

①アプリのダッシュボード

【図②】アンケート結果や目の赤みの画像診断から花粉症レベルを数値化

②アンケート結果や目の赤みの画像診断から花粉症レベルを数値化

【図③】みんなでつくるリアルタイムの「みんなの花粉症マップ」

③みんなでつくるリアルタイムの「みんなの花粉症マップ」

【図④】花粉症とQOLや労働生産性の関連の見える化

④花粉症とQOLや労働生産性の関連の見える化

【図⑤】花粉症ダイアリー

⑤花粉症症状を日記化


研究代表者コメント(順天堂大学医学部眼科学講座 准教授 猪俣 武範)

花粉症は日本で約3,000万人が罹患する最も多いアレルギー疾患で、発症すると日常生活のQOLが低下するだけでなく、仕事や学業の生産性低下にも影響し、社会コストを増加させると言われています。発症の要因も個々人によって様々で、例えば 「①花粉やPM2.5といった大気汚染物質などの環境要因」「②食事、喫煙、運動などの生活習慣」「③家族歴、年齢、遺伝などの宿主要因」などが挙げられますが、これらの要因は複合的であるため、これまでの研究では各因子が実際に発症に及ぼす影響の程度は明らかになっていません。
今回のアンドロイド版開発により、さらなるデータ収集が可能となることから、両アプリを通して得られるビックデータを活用し、花粉症の複合的要因の医学的な分析もさらに加速するはずです。
「アレルサーチ®️」を活用することで、予防・予測・個別化・参加型からなる『P4 Medicine(※)』を推進し、保険診療である「花粉症」を「セルフメディケーション(自己管理)」にシフトさせることで、医療費削減にも大きく貢献できることを期待しています。
※ P4 Medicineとは予防(Preventive)、予測(Predictive)、個別化(Personalized)、参加型(Participatory)の4つのPの頭文字から成る。

順天堂_猪俣武範准教授

猪俣 武範 准教授

「アレルサーチ®️」ビッグデータを用いた花粉症研究と個人情報の保護について

本研究では、「アレルサーチ®️」のユーザーの方々のうち、同意を得た方々のデータを花粉症ビッグデータ研究にも使わせていただきます(順天堂大学倫理委員会:承認番号順大医倫第2020117号)。個人の特定に結びつく情報は収集しませんので、万が一、データが漏洩した場合も、個人の権利に害を与える可能性は極めて低いと考えられます。花粉症ビッグデータ研究への利用許可はユーザーの自由意思に基づくものですので、いつでも中止することができます。

アプリケーションのダウンロードについて

Google Play、App Storeから、無料でダウンロードいただけます。

協賛ならびに研究助成金

本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)免疫アレルギー疾患実用化研究事業「患者・市民参画によるスマートフォンアプリケーションを用いた花粉症の自覚症状の見える化と重症化因子解明のための基盤研究」、順天堂大学2019年度環境医学研究所プロジェクト研究、平成31年度公益財団法人一般用医薬品セルフメディケーション振興財団による研究助成を受けました。また、株式会社シード、アルコンファーマ株式会社、ロート製薬株式会社の助成を受け実施されました。しかし、研究および解析は研究者が独立して実施しており、助成元が本研究結果に影響を及ぼすことはありません。本研究にご協力いただいた参加者の皆様に深謝いたします。
<関連URL>
■「アレルサーチ」ホームページ: http://allergy-search.com

■アプリを使って花粉症をチェック!花粉症予防アプリ「アレルサーチ」をリリース(2018.2.1)
https://www.juntendo.ac.jp/news/20180201-02.html