JUNTENDO News&Events ニュース&イベント

2022.04.08 (FRI)

  • 順天堂大学について
  • 研究活動
  • メディアの方へ
  • 企業・研究者の方へ
  • 医学研究科

森下英晃講師が令和4年度 科学技術分野 文部科学大臣表彰 若手科学者賞を受賞

~オートファジーによらないオルガネラ分解機構を世界で初めて発見~

順天堂大学(学長:新井 一)医学部生理学第二講座の森下英晃講師が、令和4年度科学技術分野の文部科学大臣表彰「若手科学者賞」を受賞しました。この賞は、文部科学大臣より我が国の科学技術分野において萌芽的な研究、独創的視点に立った研究等、高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績をあげた40歳未満の若手研究者に対して贈られるものであり、森下英晃講師の研究業績が、科学技術の振興・普及に顕著に貢献しており、また日本の科学技術水準の向上につながるものとして評価されました。

業績名:生体の恒常性維持と変容を司る細胞内分解システムの研究

生体が正常に発生し、長期間にわたって機能を維持するためには、その構成要素である細胞内のタンパク質やオルガネラ(細胞小器官)を状況に応じて適切に分解するシステムの存在が必須となります。

森下氏は、目の水晶体で生理的に起こる全オルガネラ分解現象*1は、従来知られていたオートファジー(自食作用)*2ではなく、サイトゾル*3の脂質分解酵素*4を介する新たなオルガネラ分解機構によること、その作用は水晶体の透明化に必須であることを見出しました。さらに、ゼブラフィッシュやマウスを用いて、各種オートファジー関連因子の新たな生理機能も解明しました。これらの森下氏の一連の研究成果は、細胞内分解システムの分子機構、生理機能、多様性の理解や、関連疾患の病態の理解に繋がることが期待されます。

森下英晃講師

医学部生理学第二講座 森下英晃講師
*1 全オルガネラ分解現象…核、ミトコンドリア、小胞体、ゴルジ体などの細胞内のすべてのオルガネラが分解される現象。細胞膜は保たれる。
*2 オートファジー…2016年のノーベル生理学・医学賞(大隅良典博士が受賞)の対象となった代表的な細胞内分解システムの一つで、細胞内の成分をオートファゴソームで包み込み、リソソームを用いて分解する仕組み。
*3 サイトゾル…細胞内の核とオルガネラを除いた細胞質基質と呼ばれる部分。
*4 脂質分解酵素…PLAATと呼ばれるリン脂質代謝酵素。損傷膜に選択的に集積する。

主要論文:
Organelle degradation in the lens by PLAAT phospholipases. Nature 592: 634-638, 2021
Autophagy is required for maturation of surfactant-containing lamellar bodies in the lung and swim bladder. Cell Rep. 33: 108477, 2020
A critical role of VMP1 in lipoprotein secretion. eLife 8: e48834, 2019
An autophagic flux probe that releases an internal control. Mol Cell 64: 835-549, 2016
医学部生理学第二講座 森下英晃講師のコメント
本研究の成果が出るまでに12年かかりましたが、多くの皆様に支えていただき、このような賞をいただきましたことを大変嬉しく思っております。将来の医学の発展に少しでも貢献できるよう、今後も日々努力していきたいと思います。
森下英晃講師の研究内容を紹介するインタビュー記事を公開!
生体内における多様な細胞内分解現象のメカニズムを解明し、疾患の理解・治療への貢献を目指す
<記事URL> https://goodhealth.juntendo.ac.jp/medical/000159.html