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2018.04.18 (WED)

慢性腎臓病への悪化を抑制する鍵となる分子を同定~Rac1がポドサイトの構造を維持し、糸球体硬化を抑制する~

順天堂大学医学部腎臓内科学講座の浅尾りん 非常勤助教、鈴木祐介 教授、千葉大学医学部腎臓内科学講座の淺沼克彦 教授らの研究グループは、慢性腎臓病への悪化を抑制する鍵となる分子を同定しました。慢性腎臓病の原因となる糸球体(*1)が硬化する過程において、細胞内タンパクのRac1(*2)とmTOR(*3)が、糸球体足細胞(ポドサイト*4)の構造を維持し、糸球体硬化を抑制することを発見しました。この成果はRac1とmTORが慢性腎臓病の新たな治療ターゲットとなる可能性を示しています。本研究は、英科学雑誌Scientific Reports電子版に掲載されました。
本研究成果のポイント
  • 慢性腎臓病の原因となる糸球体硬化をRac1が抑制した
  • ポドサイトの構造維持にRac1とmTORが必要である
  • Rac1およびmTORが新薬開発のターゲットとなる可能性
*1 糸球体
腎臓に存在し、数本の毛細血管が球状に絡まった構造をしている。糸球体に流れ込んだ血液から老廃物や余分な水分を排泄し、体にとって必要なたんぱくなどを体内に保持する、いわゆる血液ろ過を行う装置。
*2 Rac1
様々な細胞に存在し、細胞の骨格に働きかける蛋白。細胞の形態形成や運動性を制御するシグナル伝達の中心的な役割を果たしている。
*3 mTOR(mammalian target of rapamycin)
免疫抑制作用や細胞増殖抑制作用のある薬剤であるラパマイシンの標的分子であり、細胞内外からのさまざまなシグナルを感知し、細胞の成長、増殖や代謝などの調整に重要な役割を果たしている。
*4 糸球体足細胞(ポドサイト)
糸球体毛細血管壁を外側から支えている糸球体足細胞(ポドサイト)は、多数の足突起を持っており、隣り合うポドサイト同士その足突起をかみ合わせながら存在している。障害を受けることでこの構造が変化し、いずれ毛細血管壁(糸球体基底膜)から剥がれ落ちてしまう。