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2018.02.07 (WED)

ごく少量のアレルゲンによるアレルギー性気道炎症の発症機序を解明

~ 皮膚感作と吸入抗原の酵素活性が気道炎症の原因となる ~

順天堂大学大学院医学研究科・アトピー疾患研究センターの高井敏朗 准教授らの研究グループは、アレルギーを引き起こすダニや花粉の抗原に含有されるプロテアーゼ活性(タンパク質分解酵素活性)が抗原感作*1成立後の気道炎症の発症に重要な役割を果たすことを明らかにしました。これは、プロテアーゼによって損傷された気道上皮から放出されるサイトカイン(IL-33) *2が抗原特異的T細胞*3に作用し、ごくわずかな吸入抗原量で発症に至る新たな機序によるものであり、アレルギーマーチ*4 などの予防や治療法の開発につながると期待されます。本研究成果は米国アレルギー・喘息・免疫学会発行の科学雑誌Journal of Allergy and Clinical Immunologyのオンライン版(日本時間2018年2月6日)で公開されました。
本研究成果のポイント
  • プロテアーゼ抗原経皮感作のモデルマウスは少量の抗原吸入で過敏に気道炎症を発症
  • 気道上皮でプロテアーゼ依存的に放出されるサイトカインIL-33が抗原特異的T細胞応答を相乗的に増強
  • プロテアーゼ刺激経路をターゲットとしたアレルギー発症(アレルギーマーチなど)の予防・治療戦略へ
*1 感作
異物である外来の抗原が侵入するとこれを認識するT細胞や抗体が体内で生産されるようになります。この過程を感作と呼びます。感作の成立後に再び同じ抗原が侵入するとこれらのT細胞や抗体が反応して、アレルギーなどの免疫応答が誘導され、炎症などの症状が現れます(発症)。

*2 サイトカイン(IL-33)
サイトカインとは細胞から産生される生理活性タンパク質の総称で細胞間相互作用に関与します。IL-33はサイトカインの一種です。IL-33は上皮細胞や血管内皮細胞の核内に存在し、細胞障害によって短時間のうちに細胞外へ放出されます。プロテアーゼ刺激によっても放出されることが知られています。

*3 抗原特異的T細胞
抗原提示細胞は抗原タンパク質を細胞内で断片化し、それにより生じた抗原ペプチド断片を主要組織適合抗原(MHC)にはまり込んだ形で細胞膜上に提示します。この抗原ペプチド-MHCの複合体を特異的に認識するのが抗原特異的T細胞です。T細胞はヘルパーT細胞とキラーT細胞に分類されます。Th2 細胞(2型ヘルパーT細胞)とはヘルパーT細胞の亜群であり、IL-4, IL-5, IL-13などのいわゆるTh2サイトカインを産生します。IL-4, IL-5, IL-13はそれぞれIgE産生、好酸球増殖、粘液産生に関与しており、Th2 細胞はアレルギーにおいて重要な役割を担っています。