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2017.10.26 (THU)

子宮体がん病巣よりリンパ節転移を見分けるバイオマーカーの発見  ~女性にやさしい子宮体がんの個別化医療の実現へ~

順天堂大学大学院医学研究科・産婦人科学講座の吉田惠美子大学院生(理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センター機能性ゲノム解析部門リサーチアソシエイト)、寺尾泰久先任准教授と理化学研究所予防医療・診断技術開発プログラムの伊藤昌可コーディネーター、川路英哉コーディネーターらの共同研究グループは、子宮体がん(*1)のがん原発巣の発現遺伝子の網羅的解析によって、SEMA3D(*2)とTACC2新規アイソフォーム(*3)が子宮体がんのリンパ節転移診断のバイオマーカーになりうることを明らかにしました。本成果は、子宮体がんの簡便・高精度・低侵襲なリンパ節転移診断を可能とし、リンパ節郭清術(*4)の適応を症例ごとに決定する個別化医療の実現に貢献します。これにより、過剰なリンパ節郭清の実施を回避し、術後のQOL(*5)の向上に繋がると期待されます。
本研究は、英国科学雑誌「Scientific Reports」のオンライン版(日本時間10月26日)で公開されました。
本研究成果のポイント
  • 子宮体がんの組織におけるリンパ節転移群に特徴的な遺伝子の発現を確認
  • 2つの遺伝子の発現量の組合わせにより高い精度でのリンパ節転移の識別が可能
  • 本バイオマーカーによる診断法はリンパ節の過剰な切除を回避する個別化医療の実現に貢献
*1 子宮体がん
子宮は、体部と頸部からなり、子宮体部に発生するがんが子宮体がんである。子宮体部の内側に存在する子宮内膜から発生し、子宮内膜がんとも呼ばれている。

*2 SEMA3D (Semaphorin 3D)
神経回路の形成や免疫細胞の調節に関わるSemaporine遺伝子ファミリーの一つ。うち、SEMA3Dは血管新生および腫瘍形成の調節因子であり、抗腫瘍形成や抗リンパ管新生に関与することが報告されている。

*3 TACC2 (Transforming Acidic Coiled-Coil protein 2) 新規アイソフォーム
微小管の安定化や腫瘍形成に関与することが報告されている遺伝子TACC2について、その構造遺伝子座より合成される伝令RNA(メッセンジャーRNA)の一つ。これまでに様々な構造(アイソフォーム)のものが報告されているが、そのいずれとも異なるアイソフォームが本研究において同定された。

*4 リンパ節郭清術
手術において、がんの周辺にあるリンパ節を切除すること。がん細胞はリンパ管を通って全身に転移していく性質を持つため、がんが転移している可能性がある範囲を切除することで、再発を防ぐために行われる。子宮周囲のリンパ節を切除すると、リンパ浮腫を生じることがある。

*5 QOL(Quality of Life、クオリティ・オブ・ライフ)
個々の人生の質や社会的な生活の質のこと。