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2017.08.18 (FRI)

なじみ深さや目新しさの印象を支配する神経信号を発見!~神経細胞の光操作により、思い込みの脳内メカニズムを解明~

順天堂大学大学院医学研究科 老人性疾患病態・治療研究センターの宮下保司特任教授(東京大学大学院医学系研究科客員教授)、竹田真己特任准教授、東京大学大学院医学系研究科の田村啓太研究員らによる共同研究グループは、目にした物体が「なじみ深い」か「目新しい」かという相反する印象の判断が、大脳・側頭葉の神経細胞が出力する信号の増減によって決まることを、サルを動物モデルとした光遺伝学*1による神経活動操作で突き止めました。この結果は、ヒトが、目に入る情報の価値を経験と嗜好に基づいて主観的に評価して行動するメカニズムの解明に繋がるだけでなく、側頭葉の異常による高次脳機能障害の診断・治療法の確立に貢献すると期待されます。本成果は米国Science誌8月18日号にて発表されました。
本研究成果のポイント
  • ヒトの認知機能を細胞レベルの神経回路に基づいて因果的に調べるために、霊長類に光遺伝学的手法を適用する技術的基盤を確立した。
  • 細胞への光照射により大脳・側頭葉の神経活動を増加させると「見慣れている」という判断が増え、これらの細胞の出力する信号が、物体に「なじみ深い」という主観的印象を与えることを明らかにした。
  • 光刺激と電気刺激の比較により、側頭葉の神経活動の増減が、「なじみ深い」 「目新しい」という、相反する印象を生成していることが示唆された。
*1 光遺伝学:近年開発された、神経回路の機能を解析する研究分野。ある種の微生物が持つ、光に反応して電流を流す機能を持ったタンパク質の遺伝子を、動物の神経細胞に導入する。これにより、細胞への光照射によって神経細胞の活動を操作することが可能になる。