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2017.06.02 (FRI)

パーキンソン病の病態を表す鍵となる分子をヒトで検出 ~リン酸化ユビキチン鎖がパーキンソン病に関与することが明らかに~

順天堂大学大学院医学研究科・神経学の服部信孝教授、パーキンソン病病態解明研究講座の今居譲先任准教授らの研究グループは、若年性遺伝性パーキンソン病の2つの原因遺伝子であるPINK1(ピンクワン)とParkin(パーキン)*1 が協働して作るリン酸化ユビキチンの鎖が、パーキンソン病患者iPS細胞由来のドーパミン神経*2 細胞と患者脳において異常な挙動を示すことを明らかにしました。リン酸化ユビキチン鎖は、細胞内で損傷ミトコンドリア*3 のオートファジー*4 による除去のために作られますが、パーキンソン病患者のドーパミン細胞内では、この仕組みがうまく働いていないことを本研究で初めて立証しました。この成果により、パーキンソン病の効果的な予防・治療法の開発が進むと期待されます。本研究は英国科学誌Human Molecular Genetics に早期公開版として、2017年5月25日付けで発表されました。

1 PINK1、Parkin
PINK1遺伝子、Parkin遺伝子から作られるタンパク質は、それぞれ同名のPINK1、Parkinと名付けられている。ここでは便宜上、遺伝子は「PINK1遺伝子」、タンパク質は「PINK1」と表記する。

*2 ドーパミン神経
パーキンソン病において神経変性が起こる神経。この神経が変性するとパーキンソン病で見られる運動機能障害(手足の震え、筋肉の硬直、姿勢制御の障害など)が起こる。

*3 ミトコンドリア
細胞の活動に必要なエネルギー(ATP)を作る細胞小器官。損傷ミトコンドリアとは、損傷をうけて機能が低下した状態のミトコンドリアを示す。この器官の損傷や老化が進むと、酸化ストレスの原因となる活性酸素種が器官内部から漏洩する。

*4 オートファジー、マイトファジー
オートファジーは細胞内の不要なものを除去する細胞の反応。損傷ミトコンドリアもオートファジーで除去されるが、ミトコンドリアを対象としたオートファジーをマイトファジーと呼ぶ。
本研究成果のポイント
  • 若年性パーキンソン病の原因遺伝子PINK1とParkinがつくるリン酸化ユビキチン鎖は、パーキンソン病患者では健常者とは異なる挙動を示す
  • 不良ミトコンドリアを取り除くためのリン酸化ユビキチン鎖の形成は、他の神経に比べてドーパミン神経で著しく観察された
  • 実際にパーキンソン病患者ドーパミン神経細胞では、不良ミトコンドリアを取り除く能力が低下していた