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2017.03.30 (THU)

慢性腎臓病の病態メカニズム解明の鍵となる分子を同定~腎障害の新しい診断法と早期治療薬の開発へ~

順天堂大学大学院医学研究科・腎臓内科学講座の佐々木有助教、日高輝夫准教授、鈴木祐介教授ら、および京都大学の淺沼克彦准教授らの共同研究グループは、慢性腎臓病の病態メカニズム解明の鍵となる分子を同定しました。本研究では、細胞のエンドサイトーシス(細胞外の物質を細胞内へ取り込む働き)を司る分子であるSNX9 *1が、腎糸球体足細胞(ポドサイト)障害*2とヒトの腎硬化に関与していることを発見しました。この成果は、SNX9が慢性腎臓病の新しい診断法と早期治療薬開発の新規ターゲットとなることを示します。本研究は、英科学雑誌Scientific Reports電子版に掲載されました。

*1 SNX9
SNX (Sorting nexin)は、細胞内輸送を担うタンパク質ファミリーであり、細胞外の物質を細胞内へ取り込む働き(エンドサイトーシス)や取り込まれた様々な物質の選別・分解・再利用を制御する小胞のエンドソームの輸送、シグナル伝達など細胞内の様々な機能に関与しています。SNX9はSNXに属するタンパク質で、主にエンドサイトーシスに関わっています。

*2 糸球体足細胞(ポドサイト)障害
糸球体足細胞(ポドサイト)は糸球体の構成細胞の一つであり、糸球体の構造の維持と血液濾過機能において重要な役割をもっています。ポドサイト障害はアポトーシスや様々な理由から糸球体基底膜からのポドサイトの脱落が起こることで、蛋白尿と糸球体硬化が進みます。ポドサイトは増殖や再生をすることができない細胞のため、障害が進むと慢性腎不全となります。
本研究成果のポイント
  • 慢性腎臓病の原因となる腎糸球体足細胞(ポドサイト)の障害メカニズムにSNX9が関与
  • SNX9はヒトの腎疾患群でポドサイト障害のバイオマーカーとなる可能性
  • SNX9が慢性腎臓病の進展を防ぐ新規治療薬開発のターゲットとなりうる