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2017.01.13 (FRI)

回顧と自己省察を実現する大脳メカニズムを発見!~自身の記憶を内省的に評価する「メタ記憶」の神経基盤の解明~

順天堂大学大学院医学研究科特任教授の宮下保司(東京大学大学院医学系研究科客員教授)、東京大学大学院医学系研究科の宮本健太郎(日本学術振興会特別研究員)らによる共同研究グループは、自分自身の記憶を内省的にモニタリングする能力「メタ記憶」*1の神経基盤を世界で初めて同定し、「メタ記憶」が記憶実行機能自体と乖離しうることを発見しました。この成果は、従来、ヒト特有の能力だと考えられてきた回顧や内省などの自己言及的な認知情報処理の大脳メカニズムを神経ネットワーク動作レベルで解明し、脳機能の科学的根拠に基づいた効果的な教育法の開発や、前頭前野を病巣とする記憶に関わる高次脳機能障害の診断・治療法の確立に貢献すると期待されます。本研究成果は米国Science誌1月13日(日本時間1月14日)号にて発表されます。

*1 メタ記憶
自分自身の認知活動(主に思考や知覚など)を内省的に捉え認知する能力「メタ認知」のうち、記憶に関するメタ認知のことを「メタ記憶」と呼びます。メタ記憶能力によって、我々は自身の記憶の状態を主観的に評価・認識します。メタ記憶によって得られる知識に基づいて、ヒトは、より効果的な学習を実現していると考えられ、近年、教育分野でも重要な能力のひとつとして注目されています。
本研究成果のポイント
•従来、ヒト特有の能力と考えられてきた内省・回顧の神経基盤が、霊長類(マカクサル)の大脳に起源を持つことを示した
•自身の記憶処理過程を内省的にモニタリングする「メタ記憶」を因果的に生成する大脳神経ネットワークの存在を実証し同定した
•「メタ記憶」を司る大脳中枢領域の神経活動を不活化すると、記憶実行能力そのものは影響を受けず、メタ記憶能力のみが特異的に失われる(乖離する)ことを発見した