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2023.05.25 (THU)

  • Information

専門医と多職種によるチーム医療で下肢創傷患者を救う 「フットケアセンター」を順天堂・浦安病院が開設

順天堂大学医学部附属浦安病院(院長:田中 裕)は、より多くの下肢創傷1の患者の救肢を図るべく、専門医と多職種によるチーム医療を実施する「フットケアセンター」を開設しましたのでお知らせします。
 
「フットケアセンター」について

・開 設 日:2023年4月1日(土)

・場   所:順天堂大学医学部附属浦安病院 循環器内科

・対   象:当院の外来患者・入院患者
・担当医師:センター長 尾崎 大

  

■フットケアセンターの治療について

下肢創傷の治療のためには、まず「創(キズ)・虚血・感染」の3分野について評価を行います。必要に応じて血行再建を行い、創の程度により軟膏処置・デブリードマン2・小切断や大切断といった処置を施行します。また、創傷治癒のためには、血糖コントロールや栄養状態の改善なども非常に重要であることから、このような治療は単診療科では困難なため、各診療科の専門的な知識や包括的な判断を要します。
そこで、当院ではフットケアチームを設立し、各診療科の専門医と多職種が連携して包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)の治療にあたっています(図1)。最近は腎・高血圧内科も加わり、吸着型血液浄化器を用いた新たな下肢創傷治療にも積極的に取り組んでいます。

 

フットケア1

■「フットケアセンター」開設の背景

近年、下肢血管の動脈硬化に起因する末梢動脈疾患の患者さんは増加の一途を辿っています。中でも下肢の虚血などにより生じる足趾(足の指)の安静時痛や下肢潰瘍などの病態を有するCLTIの治療は、脳血管障害や心血管疾患の合併症も多く(文献1)、その予後も悪いことから(文献2)、こういった併存疾患は早期に発見して治療する事が非常に重要です。また、創傷が改善せず下肢切断となった場合の予後は更に悪いことが知られており(文献3)、いかにして「救肢」を行うかという事が大きな課題となっています。
CLTIの創傷治療に関しては「創部の評価」、「虚血の評価」「感染の評価」の3つの評価項目の頭文字(Wound, Ischemia, Foot Infection)から成るWIFI分類を用いて速やかにステージングを行い、PLAN(Patients risk estimation, Limb Staging, ANatomic pattern of disease)コンセプト(図2)に従って治療を行う事が末梢動脈疾患ガイドラインでも勧められています。

 

フットケア4

フットケアセンター センター長コメント

フットケアにおいて特に重要となるのが「チーム医療」です。当院では定期的に専門医および多職種でのフットケアカンファレンスを行い、一人ひとりの患者さんに合わせた治療方針を決定するチーム医療を展開しております。
このたび、フットケアセンターの開設により、フットケアチームの活動がより円滑化され、チーム自体も更に活性化すると考えております。今後は、地域医療機関からの紹介患者さんの受入れをさらに増やすと同時に、入院患者さんに対しても、最新かつ専門的で早期な治療に取り組んでいきます。

 

用語解説

※1:下肢創傷:「足部」「足趾」「踵」における外的・内的要因によって起こる体表組織の物理的な損傷のこと。
※2:デブリードマン:感染・壊死組織を除去し、創を清浄化することで他の組織への影響を防ぐ外科処置のこと。

(文献1)Yamazaki T, et al. Circ J 2007; 71: 995 – 1003
(文献2)TASC Ⅱ Working Group /日本脈管学会 訳:末梢動脈疾患の疫学.下肢閉塞性動脈硬化症の診断・治療方針Ⅱ.メディカルトリビューン,2007,p.24
(文献3)Dormandy JA, Rutherford RB: Managemant of peripheral arterial disease (PAD). TASC Working Group. TransAtrantic Inter-Society Consensus(TASC).J Vasc Surg, 2000, 31 [1Pt 2]: S1–S296.

 

〈順天堂大学医学部附属浦安病院・フットケアセンターHP〉

https://www.hosp-urayasu.juntendo.ac.jp/medicalcare/footcare_center/