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2023.06.16 (FRI)

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福島千里特任助教として新たなスタート!経験を次の世代に伝えるために

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北京、ロンドン、リオデジャネイロオリンピックに日本代表として出場するなど、日本女子短距離界のエースとして活躍し、2022年に現役生活に終止符を打った福島千里先生。2021年からは、順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科博士前期課程で学びを深めながら、陸上競技部の短距離アシスタントコーチ(※20234月からコーチ)としても活動。20234月には、スポーツ健康科学部の特任助教に就任しました。自らの経験を次の世代に伝えるため、大学教員として新たなステージに立った福島先生にお話をうかがいました。

スタートラインを超えて―キャリアの一歩を踏み出す大学院へ

私と順天堂大学の関わりは、2019年に練習拠点を順天堂大学に置き、山崎一彦先生(スポーツ健康科学部教授、陸上競技部監督)にコーチをお願いしたことが始まりです。大学院に入学したのは、2021年。選手としてのキャリアも終盤を迎え、競技力向上や引退後のキャリアに繋がる何かをつかめるのではないかと思って決断しました。

 

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専門学校を卒業してから、ずっと陸上だけをやってきた私にとって、大学院で学ぶことは全てが新鮮でした。バイオメカニクスなどの授業を通して、今まで見てきた競技データへの理解が深まったり、競技の現場と研究のつながりを実感できたり、たくさんの新しい知識と経験を得ることができました。

 

大学院での学びの集大成として、修士論文では、過去のトレーニング日誌、記録などから、私自身が何を経験してきたかを事例研究としてまとめました。ちょうど引退直後のタイミングだったので、競技生活をあらためて振り返り、それを論文の形で残すことができたのは、私にとって本当に有意義なことだったと思いますし、今後のキャリアに役立つ知識や経験を得ることができました。

陸上競技部では一緒に体を動かして

競技を引退した2022年の春から、陸上競技部の短距離アシスタントコーチ(※20234月からコーチ)として、選手を指導しています。引退して間もない今は、まだ選手にグラウンドで見本を見せることができる時期。できる限り一緒に体を動かして、いろいろな話をするように心掛けています。こちらが何かを押しつけるのではなく、選手が困っていたらサポートし、自分で考えて何かやろうとしている時には黙って見守る。選手との距離感を大切にしながら、競技力向上のきっかけや、競技に対するマインドを伝えていけたらと思っています。

 

また、大学院での学びを基礎として、選手自身の感覚を大切にしながらデータを有効に使い、競技力向上につながる指導ができるようになりたいと考えています。コーチとして経験を積むためにも、これから一人でも多くの選手と関わっていきたいですね。

 

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2023年度からは、特任助教になり、教員として陸上競技部以外の学生とも関わることになりました。まだ「福島先生」と呼ばれることに慣れなくて、呼ばれる度に新鮮な気分を味わっています(笑)。

 

先日は、セルフコーチング演習の授業で、初めて講義をする機会もいただきました。そこでは、私自身がアスリートとしてやってきたこと、大切にしてきたこと、競技観など、選手としてのかなりコアな部分もお話ししました。そういった深い話は、これまでメディアの取材でもしてこなかったのですが、教員として学生に「誰でも調べれば分かること」以上のものを伝えられたらという思いを込めて、教壇に立ちました。自分の経験を次の世代に残し、伝える良い機会をいただいたと感謝しています。

 

まだまだ授業には不慣れですが、これからも自分の背景にあるものを生かして、学生に響く授業ができるよう努力していきたいです。

 

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スポーツ教室やチャリティーで陸上に恩返し

引退後、何か少しでも陸上競技に恩返しができたらという思いから、競技の普及や、スポーツを通した社会貢献活動に参加しています。

 

その一つが、全国の小学校などで子どもたちに体を動かす楽しさを感じてもらう「セイコーわくわくスポーツ教室」の活動です。そこでは、私が子どもたちから学ぶこともありますし、いつも見ている大学生とは違う世代の指導に携わることも、良い経験になっていると思います。今、子どもたちの体力低下や運動不足が問題になっていますが、このイベントを通して、走ることが好きになり、将来陸上競技をやってみたいと思ってもらえることを願いながら、取り組んでいるところです。

 

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東京都の「子供を笑顔にするプロジェクト」で実施した小学校でのかけっこ教室の様子

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さらに今年から、アスリートによるチャリティーサービスを行う団体に理事として参加しています。さまざまな活動を通して、陸上界やスポーツ界、さらに社会を応援する力になれたらと思います。

 

また、日本の女子短距離は、オリンピックや世界陸上に個人で出場できる選手を育てることが課題になっています。昨年、日本陸上競技連盟の公認コーチの資格を取得しましたが、さらにコーチの勉強を続けて、いずれはトップレベルの選手の強化に携わり、私の後に続いてくれる選手を育てたいと考えています。

  

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「大学教員」になったことの意味

順天堂大学には、オリンピアンの先生をはじめ、たくさんの素晴らしい先生方がいらっしゃいます。学生に教える立場にはなりましたが、私自身も日々、周りの先生方から学んでいるところです。それに、さくらキャンパスにはさまざまな競技の練習施設が整っていて、もし高校時代の私がこの環境を見たら、すごくうらやましかっただろうなと思うんです。スポーツ健康科学部は1年生で寮生活をするので、学生同士の横のつながりが強く、ほかの競技をしている友達ができるのも素晴らしいですよね。トップアスリートを目指す人、スポーツや健康を科学的にとらえることに興味がある人には、ぜひここで一緒に学んでほしいと思っています。

 

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私は、一人のアスリートとして、次の世代に自分の経験をしっかり残し、伝えていきたいという思いを持っていました。大学教員として、陸上選手だけでなく、幅広い学生に自分の経験を伝える機会を得られたことは、私にとって大きな意味があることだと感じています。私がやってきたこと、考えてきたこととスポーツ科学を融合させ、それを授業を通して伝えることで、学生の競技力向上や人間的な成長につながるよう、頑張っていきたいです。

  

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プロフィール

陸上競技女子100m200mの日本記録保持者。2008年、北京オリンピック女子100mに日本選手として56年ぶりの出場を果たし、ロンドン、リオデジャネイロを含めオリンピックに3回出場。日本選手権では100m7連覇を含め通算8回優勝し、200mでも8回優勝を飾った。2010年アジア大会で日本女子初の100m200mの二冠を達成。2011年の世界陸上では日本女子史上初となる準決勝進出を果たした。2022年に現役を引退。20234月から、順天堂大学スポーツ健康科学部特任助教。

研究者情報

[スポーツ健康科学部]
福島 千里 特任助教

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