JUNTENDO News&Events ニュース&イベント

2023.07.14 (FRI)

  • Information

順天堂大学で実施する研究で発生した個人情報漏えい及び倫理指針不適合に関する調査報告

順天堂大学(以下「本学」という。)で実施している「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」(令和3年文部科学省・厚生労働省・経済産業省告示第1号)」(以下「倫理指針」という。)下の臨床研究(以下「本研究」という。)において、個人情報漏えい等の重大な不適合事案が発生していたことが判明いたしました。

ここに謹んで深くお詫びを申し上げますとともに、特別調査委員会による調査内容についてご報告を申し上げます。

  

【事案の概要】

順天堂医院に肺がん治療のために受診された患者様のデータを用いる臨床研究において、本研究の研究責任者から解析指示を受けた大学院生が、自らの判断で外部の第三者に個人情報を含む状態(個人が特定されないよう研究IDに変換する等の匿名化措置を行っていない状態)でデータを渡し、解析依頼をしていました。この行為は、個人情報の漏えいに該当し、本データの提供を受けた第三者からの通報により発覚し、本年63日(土)の新聞紙面にも掲載されました。

順天堂大学では、事態を重く受け止め、本年6月に特別調査委員会を設置し、原因究明、再発防止策の策定及び公表の方法について協議し、同月15日に個人情報保護委員会へ報告いたしました。しかしながら、本事案は2021年1月に発生し、同年12月には本データの提供を受けた第三者から本学に報告があったにもかかわらず、新聞紙面への掲載後に本格的な調査が行われました。このことから本事案は、一研究者だけの問題ではなく、組織のガバナンス体制に大きな要因があり、学外の第三者へ情報が渡されたことを覚知した時点で、情報漏えいに該当することを認識し、適切に関連部署間で情報共有し、組織として迅速な対応がなされていなかったことが深刻な問題であると考えております。

調査の結果、漏洩したデータは、2011年から2015年に、順天堂医院に肺がん治療のために受診された1,381名の患者様の個人情報であり、氏名、性別、年齢、カルテID及び肺がん細胞の遺伝子情報が含まれておりました。なお、本研究はオプトアウト(研究対象者等に通知し、又は研究対象者等が容易に知りうる状態に置く方法により、研究対象者等が自身のデータの利用や第三者提供を拒否できる機会を保障する方法)という手続きをとって行っております。

  

【対応状況】

本研究はすでに停止しており、これまでに、個人情報の漏えいによる二次被害発生の報告はございませんが、本データの提供を受けた外部の第三者と協議し、速やかにデータを削除していただく手続きを進めております。

また、本事案については、本学から文部科学大臣及び厚生労働大臣へ報告を行っております。

  

【再発防止のための対応】

本事案の要因は、研究者の個人情報漏洩に対する問題意識の欠如、並びに情報セキュリティに対する認識の甘さが一因でありました。また、個人情報が含まれた状態で情報が出力できないよう制御するシステムが導入されていなかったことも一因でありました。加えて、個人情報漏えい等インシデント発生時における大学全体の統括責任部署が明確に定められておらず、統括的な管理がなされていなかったため、本事案の初動対応に当たった部署が情報を入手後に速やかに関連部署へ情報共有がなされなかったという組織ガバナンス体制にも深刻な問題がありました。

そこで、再発防止策として、本研究の研究責任者に対して、本学医学部医学系研究等倫理委員会より、(1)臨床研究に関する教育の再受講、(2)研究責任者として実施中の全ての研究における管理体制の確認、(3)新規研究の申請停止を命じるとともに、本学教職員全体に対して、研究ルールの再教育に取り組んで参ります。また、システム的要因を改善するため、個人情報が匿名化されるセキュリティシステムの導入も実施いたしました。さらに、最も深刻な問題である組織的要因に対しては、初動対応の不備を二度と起こさないようにするため、学校法人直下に個人情報管理委員会を設置するとともに、重大事態発生時に情報・指揮統制を行うため、法人下に危機管理部署を設置いたします。

  

【総括】

今回、研究及び診療に従事する者の研究倫理や個人情報の取扱いに関する理解不足が招いた人的ミスに加えて、組織ガバナンス体制の不備により適切な初動が遅れた組織的ミスが重なり、医学・医療に携わる組織として決して起こしてはいけない事案が発生してしまいました。

本研究にご協力いただいた研究対象者の皆様及び順天堂医院の患者様のご厚意に背く事態となりましたことを謹んで深くお詫び申し上げます。本事案を厳粛に受け止め、今後このようなことが起きないよう、再発防止を徹底してまいります。

 

報告書

 

2023714
順天堂大学
学長 新井 一