JUNTENDO News&Events ニュース&イベント

2023.11.01 (WED)

  • 保健医療学部

【保健医療学部リレーコラムvol.8】外見からはわからない「高次脳機能障害」と理学療法

 リレーコラム第8回は、理学療法学科の藤野雄次が担当いたします。今回のコラムでは、人間がいかに精密なコンピューター(=脳)を持っているかを考えながら、理学療法との接点について考えてみたいと思います。
 私たちは、喉が渇けばペットボトルに手を伸ばして水を飲み、お腹がすけば食材を切りながら手際よく調理をして食事します。このような当たり前の行動は、体が動くことだけでは成立せず、水(食事)を口にしたいという欲求や、目で見た物を認識すること、効率的な作業の計画が立てられること等、様々な脳の働きによってもたらされています。
 このような脳の働きを高次脳機能といい、脳卒中などを背景として脳が損傷すると、「外見からはわからない」認知的な機能が障害されます。理学療法士は立つ、歩くといった基本的動作の回復に主眼が置かれますが、同時に基本的動作を阻害する高次脳機能障害にも精通していなければ十分な回復は見込めません。また、会話をする、計算をする、相手の表情を読むといった、家庭生活や社会生活で必須となる機能が障害されることは、ご本人はもとより、ご家族も相当なストレスを感じられるケースが少なくありません。
 大学での講義や演習では、症状だけでなく、日常生活において何に困るのか、どのような問題がでてくるかをともに考え、人として温かみのある理学療法士の養成に尽力しています。いまだ謎が多い高次脳機能障害について、社会的な認知が高まることを期待するとともに、専門家として科学的検証を続けてまいります(写真は卒業研究の様子)。

リレーコラム 藤野先生