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2023.11.16 (THU)

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公衆衛生学 谷川 武 主任教授が 2023年度「日本医師会医学賞」を受賞

順天堂大学大学院医学研究科公衆衛生学 谷川武 主任教授はこの度2023年度「日本医師会医学賞」を受賞し、2023(令和5)11月1日に日本医師会館にて表彰式が行われました。日本医師会医学賞は、医学上重要な業績をあげた者に授与されるもので、今回、谷川主任教授は「国民の健康・安全に資する睡眠面からの予防医学研究の推進」というテーマで受賞しました。

  

■谷川 武 主任教授

1986(昭和61)年に神戸大学医学部を卒業し、1990(平成2)年に東京大学より博士号を授与されました。東京大学医学部助手、ハーバード大学Visiting Assistant Professor、筑波大学講師、同助教授、愛媛大学医学系研究科教授を経て、2014(平成26)年に順天堂大学大学院医学研究科教授に着任しました。谷川武主任教授は、30数年来、睡眠予防医学、循環器疾患の疫学、行動医学、職場におけるストレスマネジメント等、一貫して健康・生活に密着した研究を続けています。

 

■受賞に関わる研究・実践ならびに教育活動

地域・職域の公衆衛生学研究として、睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome, SAS)の重症度判定にパルスオキシメトリ法を2000年に世界に先駆けて導入し、睡眠呼吸障害(sleep disordered breathing, SDB)の悪化要因として、飲酒、顔面骨格、肥満、歯痕舌を見出すとともに、フローセンサ法を用いたSDBスクリーニング法の開発、SDBの有病率の日米比較を実施しました。さらに、SDBと高血圧、心房細動、高感度CRP、アルブミン尿、耐糖能異常、メタボリックシンドローム、動脈硬化との関連とともに、縦断研究により我が国で初めてSDBが新規の糖尿病発症に及ぼす影響を明らかにしました。最近では、地域住民を対象とした約20年間の長期追跡により、軽度のSDBでも心疾患やラクナ梗塞の発症リスクが有意に上昇することを見出しました。

一方で、小児のSDBにも注目し、問題行動、夜尿症、漏斗胸との関連について報告し、SDBの健康影響が成人のみならず小児にも及ぶことを示しました。

2011年の福島第一原子力発電所の事故直後から当時の発電所長の依頼で1年間に亘り産業医活動に従事し、発電所所員の避難場所でのSDBの実態把握とともに、睡眠改善指導に努めました。その中で、所員の精神的苦悩の主要因が近隣住民からの差別・中傷であること、差別・中傷を受けたことが、その後数年に亘る不眠と関連することを明らかにしました。

これらの知見と実践経験をもとに、「健康づくりのための睡眠指針2014」(厚生労働省)の生活習慣病の章を執筆し、健康起因事故に関する検討委員(国土交通省)を務めるとともに、「長時間労働の医師への健康確保措置に関するマニュアル」(厚生労働省)作成委員長として、国民の健康・安全に資する数多くの提言を行いました。その際、客観的な評価手法の確立が必要との結論に達し、3分間PVTpsychomotor vigilance test)を用いた睡眠負債の客観的可視化法の開発普及を長時間労働の医師、就労者さらに児童学生を対象に進める予定です。

また、谷川主任教授は研究者育成にも意欲的に取り組み、前職の愛媛大学では6名の博士取得者、現職においては博士取得者35名、修士取得者13名を育成し、現在大学院博士課程20名、修士課程10名の指導にあたっています。

谷川 武 主任教授コメント

医師会医学賞受賞写真2

順天堂大学における研究活動を温かくご支援頂いている小川秀興理事長をはじめ諸先生方に心より感謝申し上げます。

また、これまで共同研究でご支援頂いている先生方、疫学研究にご参加頂いた地域・職域の住民・勤務者の皆様のご協力に深く感謝申し上げます。

    

【参考】 日本医師会HP:日本医師会HPhttps://www.med.or.jp/