JUNTENDO News&Events ニュース&イベント

2024.03.21 (THU)

  • 順天堂大学について
  • 研究活動
  • メディアの方へ
  • 企業・研究者の方へ
  • 医学部
  • 医学研究科

ブレイン・マシン・インターフェースを用いた 脳卒中後上肢麻痺運動機能障害に対する治療に関する特定臨床研究を開始

順天堂大学大学院医学研究科リハビリテーション医学の藤原 俊之 教授は、脳卒中後上肢麻痺の手指運動機能回復に対する新しい治療として「ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)」*1を用いた治療の効果について研究を開始しました。

■背景

脳血管疾患により脳の神経細胞が障害されると、脳からの信号が上手く伝わらなくなり、手足の麻痺が生じます。脳卒中の場合、手指の麻痺が日常生活レベルまで回復するのは15~20%にとどまると言われています。手指の麻痺の残存は日常生活動作を広く妨げ、職業復帰等を妨げる原因ともなっています。
ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)により、患者に麻痺した手指を動かすイメージをしてもらい、手指を支配している脳領域が活動したという脳波をセンサーが判定すると、ロボットが麻痺した手指を動かすという技術を用いて、イメージ通りに繰り返し手指をロボットで動かすことで、脳から麻痺した手指に至る神経活動を強化することができます。BMI治療は、「脳の神経活動を変えることにより手指運動機能を改善させる」可能性のある新しい治療法です。

 

■内容

脳血管疾患後遺症による手指の運動麻痺は、歩行障害に比べて回復が難しいとされています。本研究では思うように手指を動かすことができない患者の手指運動機能回復を目指す新しい治療法の効果を検証します。
本研究では、株式会社LIFESCAPESが開発したBMI機器の脳卒中後上肢麻痺による手指運動麻痺に対する治療効果を検証します。対象は脳卒中後上肢麻痺の残存を認める患者で、40分のBMI治療(図)を週2回、10週間、合計20回リハビリテーション科外来で行い、治療前後の上肢運動機能や神経活動の変化を検証します。本研究は特定臨床研究(臨床研究実施計画番号jRCTs032230542)として実施します。

20240321プレス

図 ブレイン・マシン・インターフェース

今回の研究では、「指を伸ばす」イメージを行い、手指を支配する脳領域が活動したという脳波をセンサーが判定すると、麻痺した手指をロボットが伸ばします。これを繰り返すことにより、脳から麻痺した手指に至る神経活動を強化することが期待されます。

■今後の展開

本研究は、BMI治療により手指運動機能の回復が可能なのか、また回復するとすれば手指の運動機能がどこまで回復するのか、その際に脳や神経にどのような変化が起きているかが明らかとなれば、脳卒中上肢麻痺後思うように手指を動かすことのできない多くの患者にとって手指運動機能を回復させる新しいリハビリテーション治療のひとつとなる可能性があります。本研究により少しでも多くの脳卒中後遺症に悩む患者の回復に寄与できればと考えます。

■特定臨床研究の概要

臨床研究実施計画番号:jRCTs032230542
研究名称:脳卒中後上肢麻痺に対するブレイン・マシン・インターフェース治療の神経生理学的評価
研究責任医師: 藤原 俊之

■用語解説 

*1 ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)
脳波等の脳の信号によってコンピュータや機器を操作する技術の総称。本研究では、患者の麻痺した手指を動かそうとする意図を脳波で読み取り、患者の意図に従って手指を動かす。

研究者のコメント

  • 脳波で麻痺手指を動かすBMI治療は、脳の神経活動を変えて手指運動機能を改善させる可能性のある新しい治療です。
  • 重度麻痺患者にも使用が可能であり、幅広い脳卒中上肢麻痺患者の治療に応用可能な技術です。
  • 新しいBMI治療の治療効果を検証し、新しい脳卒中上肢麻痺に対する治療法の確立を目指します。