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2018.09.10 ()
プレスリリース附属病院

世界50カ国の急性呼吸窮迫症候群患者に対する気管切開を疫学調査

~適正な気管切開の使用ガイドライン策定を目指して~

順天堂医院総合診療科の阿部智一医師らの研究グループは、ヨーロッパ集中治療医学会と国際共同研究で疫学調査を行い、世界50カ国の急性呼吸窮迫症候群*1患者に対する気管切開*2の使い方についての解析により、今まで不明であった世界の集中治療室(ICU)での気管切開の使われ方を明らかにしました。その結果、気管切開は急性呼吸窮迫症候群でICUに運ばれた患者の13%に行われており、そのうちの7割の患者は入院後1週間以降(中央値は入院後2週間前後)に気管切開を受けていました。しかし、気管切開を実施しても、気管切開を受けていない患者との比較で長期(60日、90日)の死亡率に統計学的有意差は認められないことが明らかになりました。この結果は急性呼吸窮迫症候群患者に気管切開を行う際の医師の病態の理解と意思決定に役立つと考えられ、今後の急性呼吸窮迫症候群の治療方針の決定や使用ガイドラインの策定に貢献すると期待されます。本研究は英国の学術雑誌Critical Careオンライン版2018年8月17日号で公開されました。
本研究成果のポイント
  • 気管切開は急性呼吸窮迫症候群患者の13%に行われており、その7割の患者は集中治療室に入院してから、1週間以降(中央値は2週間前後)に実施されている。
  • 気管切開を受けた患者とは受けなかった患者との間に、長期の死亡率に有意差はなかった。
  • 急性呼吸窮迫症候群の治療方針の決定や使用ガイドラインの策定に貢献する。

背景

急性呼吸窮迫症候群は単一の病気ではなく、肺炎や外傷など様々な原因によって生じる急性の呼吸不全症候群を指します。治療は呼吸管理を中心とする全身管理と薬物療法の2つに分けられます。薬物療法では残念ながら生存率改善につながるような治療法は現在まで知られていません。呼吸管理において、気管切開は人工呼吸器管理を行う上でメリットがあるものとされていますが、侵襲的な処置であり、当たり前に行われているにも関わらず、世界中でどのように処置されているかは未だ明らかではありませんでした。そこで、研究グループは世界50カ国における気管切開の使い方を調査し、今後の気管切開の使用方法や疾患対策への足がかりとすることを目的とし、調査を実施しました。

内容

まず、欧州集中治療学会と共同で、世界5大陸50カ国459ICUの急性呼吸窮迫症候群患者の大規模調査を2014年冬の1ヶ月に行いました。その結果、急性呼吸窮迫症候群は未だ正確に認知されておらず、そのことが予後不良につながっていると考えられました。次に、研究グループはその中で気管切開の使用状況について2次解析を行いました。その結果、気管切開は急性呼吸窮迫症候群でICUに運ばれた患者の13%の7割が入院後1週間以降(中央値は2週間前後)に行われており、適応や重症度調整をおこなったところ、気管切開を行うと短期(28日)の死亡率に改善が見られたものの、長期(60日、90日)の死亡率に統計学的有意差は認められませんでした。以上より、気管切開を実施した場合と実施しなかった場合で、患者の生命予後に差がないことが明らかになりました。
気管切開は蘇生もしくは対症療法で根本治療ではありません。すなわち、行えば短期の救命、延命は出来ていたものの、生命予後は変わらないことがデータとして裏付けられました。これらの解析結果から、気管切開はあくまで治療補助の手段の一つということを理解し、延命している間に原因疾患を診断し、治療しなければならないことを再確認しました。世界50カ国の集中治療領域もその傾向を表し、一時期の必要そうであれば出来るだけ早く行うトレンドから、必要な時期を見極められるタイミングまで待ち、必要な人にだけ行う方針に移行しつつあります。

今後の展開

本研究は新薬や新規の医療機器などを開発する手立てとするものではありませんが、既存の医療機器を用い、適応のある人に適切なタイミングで適切なものを提供するヘルスサービスリサーチという研究に当たります。現在の急性呼吸窮迫症候群患者と気管切開と関係性の調査を更に進め、必要な人、必要でない人、タイミングを見極める因子と基準等の適切な気管切開のガイドラインの策定をしていく予定です。

用語解説

*1 急性呼吸窮迫症候群(きゅうせいこきゅうきゅうはくしょうこうぐん)
ショック、敗血症、大量輸血、重度外傷、ガス中毒、薬物中毒、溺水、急性膵炎、頭蓋内圧亢進、脂肪塞栓など、さまざまな原因で発生する急性呼吸不全を指す。

*2 気管切開(術)
外科的気道確保の一方法で、前頸部で気管軟骨(通常、第2-4気管軟骨)を切開し、チューブまたはカニューレを挿入して気道を確保する手術法のこと。

原著論文

タイトル:Epidemiology and patterns of tracheostomy practice in patients with acute respiratory distress syndrome in ICUs across 50 countries
タイトル日本語訳:急性呼吸窮迫症候群患者に対する50カ国のICUにおける気管切開の疫学調査
著者:Toshikazu Abe, Fabiana Madotto, Tài Pham, Isao Nagata, Masatoshi Uchida, Nanako Tamiya,Kiyoyasu Kurahashi, Giacomo Bellani, John G. Laffey and for the LUNG-SAFE Investigators and the ESICM Trials Group
著者(日本語表記):阿部智一1,2、 Fabiana Madotto3、Tài Pham4,5、永田功2、内田雅俊2、田宮菜奈子2、倉橋清泰6、 Giacomo Bellani7, John G. Laffey4,5,8
所属先: 1順天堂大学 2筑波大学 3ミラノ・ビコッカ大学 4セントマイケル病院 5トロント大学
6国際医療福祉大学 7ミラノ・ビコッカ大学 8アイルランド国立大学
掲載雑誌:Critical Care
掲載論文のリンク先:https://rdcu.be/4EN7
DOI: 10.1186/s13054-018-2126-6

プロジェクト名:ARDSの疫学調査(LUNG-SAFE study)
共同研究先:ヨーロッパ集中治療医学会(European Society of Intensive Care Medicine; ESICM)
本研究は、ベルギーのブリュッセルにある欧州集中治療学会(ESICM)、カナダのトロントにあるセントマイケル病院、イタリアのモンツァのミラノビコッカ大学によって資金提供され、支援されました。なお、文部科学省科学研究費JSPS科研費 JP16K15388の一環として実施されました。