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2019.09.25 ()
プレスリリース大学・大学院

ラグビー選手では「4回」の肩関節脱臼が黄信号に

~肩関節の骨に生じる欠損が危険な大きさになる脱臼回数を明らかに~

順天堂大学大学院医学研究科 整形外科・運動器医学の金子和夫 教授、川崎隆之 准教授、長谷川圭紀 医員らの研究グループは、肩の関節が外れる「脱臼」や、完全に外れてはいないもののズレが生じた状態となる「亜脱臼」を、ラグビー選手の利き手側で「4回」、非利き手側では「5回」にわたって繰り返した場合、肩関節の骨に生じる欠損が、標準的な手術で術後成績不良の要因となる大きさになりやすいことを見いだしました。本研究結果は、他競技に比べて肩関節脱臼の発生頻度が高いラグビー競技において、広く現場の指導者、コーチ、選手自身に認識されるべき内容であり、選手の肩の状態が手遅れになるのを防ぐ指標として、選手の安全に大きく貢献できるものと期待されます。本研究成果はアメリカの整形外科学医学雑誌「The American Journal of Sports Medicine」に掲載されました。

研究グループからのコメント

当グループでは「スポーツ現場で役立つ知見」を意識して研究を行っています。
今回、ラグビー選手に多く発生する外傷性肩関節脱臼・亜脱臼に伴う肩関節の骨欠損について調査しました。もともと骨欠損の程度は脱臼・亜脱臼回数と関係することが分かっていましたが、具体的に何回くらい繰り返すと骨欠損が危険な大きさになるかは不明でした。
本研究で利き手側では「4回」、非利き手側では「5回」繰り返すと骨欠損が危険な大きさになりやすいことを見出しました。この結果は、肩関節脱臼の発生頻度が高いラグビー競技の現場において、ともすれば整復さえすれば元に戻ると捉えられることもある脱臼に関する誤った知識に警告を発するべく広く認識されることが望ましい内容であり、この知見を広めることで選手の安全に大きく貢献できるものと期待しています。
当グループでは、今後も現場に役立つ研究成果を発信していきたいと考えています。

整形外科_川崎先生_金子教授_長谷川先生

左から川崎隆之 准教授、金子和夫 教授、長谷川圭紀 医員
本研究成果のポイント
  • ラグビー競技では、肩関節の脱臼・亜脱臼に伴う危険な骨欠損は、受傷回数と利き手が関係する
  • 脱臼・亜脱臼のどちらかの受傷を利き手側で「4回」、非利き手側で「5回」繰り返すと肩関節に危険な骨欠損が生じやすい
  • 肩関節の脱臼・亜脱臼を経験した選手は、早期(3回まで)に骨欠損を評価することが大切

背景

ラグビー競技は、競技中の選手間の接触や転倒などによる肩関節の脱臼・亜脱臼(外傷性肩関節不安定症1)が非常に多いスポーツです。脱臼は「クセになりやすい」と言われていますが、一度、脱臼・亜脱臼を受傷した選手のうち約半数が1シーズンで再脱臼を起こしていることがわかっています。また、脱臼・亜脱臼では、受傷に伴い、肩関節を構成する肩甲骨の関節窩2前縁と上腕骨頭後外側が欠ける「骨欠損」が生じることが知られていますが(図1)、これまでの研究で、脱臼・亜脱臼を繰り返すほど肩関節の骨欠損が大きくなることがわかってきました。骨欠損が大きくなると標準的な手術では対応できないことから、選手が脱臼・亜脱臼を繰り返して骨欠損の状態が手遅れになる前に治療を行う必要があります。しかし、これまで具体的に何回程度の受傷で、骨欠損が危険な大きさに達するのかはよくわかっていませんでした。そこで、本研究ではラグビー選手が肩関節の脱臼・亜脱臼を何回繰り返すと骨欠損が危険な大きさになりやすいのかを明らかにすることを目的に調査しました。

図1

図1:脱臼により起こる肩関節の骨欠損 左:正常、右:骨欠損あり(矢印は骨欠損部)
上段:肩甲骨関節窩 下段:上腕骨頭

内容

本研究では、2011年~2016年の間に肩関節脱臼の治療のために順天堂医院を受診したラグビー選手のうち、競技レベルでプレーをしており、復帰を望み、手術歴のない144肩を対象として、CT検査で肩関節の骨欠損の程度を評価しました。脱臼・亜脱臼回数、利き手側の受傷かどうか、年齢、BMI、プレーレベル(全国大会レベルかどうか)、カテゴリー(社会人、大学、高校)、ポジション(フォワード、バックス)、弛緩性(関節が軟らかいかどうか)などの特徴をカルテから抽出し、CT検査で評価した骨欠損を程度に応じて危険域、準危険域、安全域の3つに分類して(図2) 、選手の特徴との関係を分析しました。

図2

図2: 関節窩骨欠損と受傷回数の関係
縦軸の関節窩骨欠損と横軸の受傷回数の間には中等度の相関関係(決定係数 r2=0.28)
関節窩骨欠損が25%以上および骨欠損同士の噛み込みありを危険域(赤)、関節窩骨欠損が13.5%以上を準危険域(黄)、その他を安全域(緑)
本研究で定義した危険域は過去の調査から、関節唇形成術という標準的な手術を行っても安定性が得られない大きさ(関節窩骨欠損25%以上、骨欠損同士の噛み込み(図3)あり)とし、準危険域は実際に患者に対して手術を行ったものの再脱臼が起こりやすかったり、痛みなどの不満を残すことが多い骨欠損の大きさ(関節窩骨欠損13.5%以上)としました。

図3

図3:肩甲骨関節窩と上腕骨頭の骨欠損が噛み込む様子
左:後方から観察 右:下方から観察
その結果、約2割の選手において骨欠損が危険域に達しており、約6割においては準危険域に達していました。また、骨欠損が危険域、準危険域になるには、「脱臼・亜脱臼の回数」、「受傷した肩が利き手側かどうか」が関係することが分かりましたが、プレーレベル、カテゴリー、ポジション等、その他の特徴については関係がありませんでした。脱臼・亜脱臼の回数については脱臼と亜脱臼を区別なくカウントすることが最もよい指標となりました。また、脱臼・亜脱臼を何回起こすと骨欠損が危険域、準危険域となりやすいか、統計解析(図4)によって求めたところ、危険域になるのは利き手側で6回〔感度(3)68.4%、特異度(4) 68%〕、非利き手側で9回(感度81.8%、特異度82.8%)、準危険域になるのは利き手側で4回(感度67.3%、特異度55%)、非利き手側で5回(感度70%、特異度65.7%)という結果が明らかになりました。利き手側での受傷が少ない回数で危険域になりやすい理由として考えられるのは、タックル時の衝撃が非利き手側と比べて強いことが考えられます。

今後の展開

本研究により、肩関節の脱臼・亜脱臼に伴う骨欠損について、危険な大きさに達しやすい受傷回数が利き手側で「4回」、非利き手側では「5回」であることが明らかになりました。実際の競技現場では、脱臼・亜脱臼をしても、医療機関を受診せずに様子を見てしまったり、我慢してしまう選手がしばしば見受けられます。繰り返す脱臼・亜脱臼に悩む選手は、早期(3回まで)に医療機関を受診し、骨欠損の評価および治療を受けることで、標準的な手術で対応できなくなることや術後不満を抱えやすい状態になることを防ぐことができます。本研究で初めて具体的な受傷回数を示したことで、競技の指導者、コーチ、選手に対して有益な情報となることが期待されます。当グループでは、今後も現場に役立つ研究成果を発信していきたいと考えています。

用語解説

1 外傷性肩関節不安定症: 外力に起因する肩関節の脱臼や亜脱臼のこと。繰り返す脱臼を反復性肩関節脱臼という。90%以上は上腕骨頭が前方に脱臼する。本研究では前方脱臼を対象とした。

2 肩甲骨の関節窩: 上腕骨頭の受け皿となる肩甲骨の一部(図1上段)で肩関節の構成要素。関節窩骨欠損によって受け皿の面積が小さくなり、肩関節の不安定性が大きくなる。

3 感度: 陽性と判定されるべきものを正しく陽性と判定する確率。

4 特異度: 陰性と判定されるべきものを正しく陰性と判定する確率。

原著論文

本研究はアメリカの整形外科学医学雑誌「The American Journal of Sports Medicine」で2019年8月19日に掲載されました。
論文タイトル: The Number of Injury Events Associated With the Critical Size of Bipolar Bone Defects in Rugby Players With Traumatic Anterior Shoulder Instability.
論文タイトル(日本語訳): ラグビー選手の外傷性肩関節不安定症に伴う危険な骨欠損に関連する受傷回数
著者: Yoshinori Hasegawa, Takayuki Kawasaki, Shuko Nojiri, Shogo Sobue, Takefumi Kaketa, Yoshinori Gonda,
Yoshiaki Itoigawa, Kazuo Kaneko
著者(日本語表記): 長谷川圭紀1、川崎隆之1 、野尻宗子2 、祖父江省吾1 、懸田健史1 、権田芳範1 、
糸魚川善昭1 、金子和夫1
著者所属: 1. 順天堂大学大学院医学研究科 整形外科・運動器医学 2.順天堂大学革新的医療技術開発研究センター
掲載誌: The American Journal of Sports Medicine
DOI: https://doi.org/10.1177/0363546519869673

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