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2019.10.02 ()
プレスリリース大学・大学院

AI血液細胞自動分析システムにより腫瘍性血液疾患の鑑別に成功

~血液形態検査の自動化とAIスクリーニング診断支援の実現に向けて~

順天堂大学大学院医学研究科次世代血液検査医学の木村考伸 大学院生、田部陽子 特任教授、大坂顯通 特任教授らの研究グループは、様々な疾患の血液細胞画像を人工知能(AI)の深層学習技術(*1)を用いて解析し、血液細胞の高精度自動識別を可能にするAI分析システムを開発しました。さらに、このAI分析システムでは特定の疾患で出現する血液細胞の形態情報をもとに、腫瘍性血液疾患である骨髄異形成症候群(MDS)(*2)と非腫瘍性血液疾患である再生不良性貧血(AA) (*3)の鑑別診断が可能であることを実証しました。本成果は、AI自動分析技術による血液形態検査の自動化やスクリーニング診断支援の実用化に道を示しました。
本研究は、シスメックス株式会社との共同研究として行われ、英国科学雑誌「Scientific Reports」のオンライン版(2019年9月16日付)で公開されました。

研究グループからのコメント

高齢患者が増加する一方で、医療従事者の不足や専門医の偏在化が進んでいます。このような状況の中で、専門的医療技術を補うAI 技術の開発と実用化が求められています。本研究では、検査の分野において長年の課題であった形態学的検査の自動化を実現するAI血液細胞形態自動解析技術と特定の疾患に対する高精度な鑑別技術を開発しました。今後は、本成果をもとに技術改良を進め、AIシステムを医療現場に還元していくための実用化研究を推進していきます。

研究グループ

大坂顯通特任教授、田部陽子特任教授、木村考伸さん(第31回国際検査血液学会議にて)
本研究成果のポイント
  • AI深層学習技術を用いて血液細胞形態の高精度自動分析システムを開発
  • AI自動分析システムにより血液疾患の鑑別診断に成功
  • 血液形態検査の自動化とAIスクリーニング診断支援の実用化に目途

背景

近年、深層学習技術を用いたAI技術が医療画像診断に応用されつつあります。臨床検査では、技術の熟練が必要とされ、検査技師や診断医師の不足が問題となっている血液形態検査においてAI自動分析技術の確立が望まれています。特にMDSとAAは共通して血液細胞数が減少するという特徴をもち、鑑別には血液中にわずかに出現するMDSに特徴的な形態異常を持つ細胞の有無を識別しなくてはならず、熟練技師、医師による顕微鏡検査が不可欠です。そこで本研究では、血液形態検査の自動化を実現することを第一の目的とし、AI深層学習技術を用いて自動分析システムによる血液細胞形態の分析精度の向上に取り組みました。さらに、AI自動分析システムに疾患特異的な血液細胞の形態情報を組み入れることによって基本的検査の段階でのスクリーニング診断支援システムの開発を目指しました。

内容

本研究では、白血病やMDS、AA等の血液疾患の他、感染症や健常人を含む3,261症例の末梢血液標本を用いました。まず、1標本あたり約200個の血液細胞を自動撮像し、計695,030個の血液細胞のデジタル画像を取得しました。個々の血液細胞画像に対して、複数のエキスパート技師が国際ガイドラインに従って17種類の細胞種別分類と97種類の形態異常判別を実施し、従来にない規模の血液細胞画像データベースを構築しました。次に、このデータベースを用いてAI深層学習技術である畳み込みニューラルネットワーク(CNN) 解析を実施しました。その結果、高精度な細胞分類性能と形態異常検出性能を有するAI自動分析システムを開発しました(図1)。

図1

図1 本研究で開発したAI血液細胞自動分析システムによる血液細胞の特徴分布地図
高次元データを可視化する機械学習アルゴリズムであるt-SNE(t分布型確率的近傍埋め込み)を用いて AI血液細胞自動分析システムが捉えた17種類の血液細胞の分布を示した。AIが識別した血液細胞クラスターを色分けして表現している。この分布図より顆粒球系細胞(分葉核好中球、SNEから前骨髄球、PMY)やリンパ球系細胞(リンパ球、LYと反応性リンパ球、VLY)など血液細胞の由来ごとに細胞クラスターが形づくられており、AIが的確に細胞形態の特徴を捉えていることがわかる。この分析システムを用いることで、MDS症例とAA症例の血液細胞の形態異常を鑑別できるようになった。
さらに、このAI自動分析システムを用いてMDS症例とAA症例の血液細胞画像を網羅的に分析し、形態異常の出現頻度などの特徴量を抽出しました。次に、抽出された特徴量を用いてAI技術の1つである勾配ブースティング法(*4)による解析を実施しました。最終的に、AI血液細胞自動分析システムによるMDSとAAの鑑別診断能を検証した結果、極めて高精度な診断能力(感度96.2%、特異度100.0%)を有することが明らかになりました。
以上のように、AI自動分析システムによる血液形態検査の自動化とAIスクリーニング診断支援の実用化の可能性を示すことができました。

今後の展開

本研究では、AI深層学習技術を用いた血液細胞の自動形態分析システムが、血液疾患の診断支援が可能なことを示しました。今後は、本研究成果の臨床実用化を進めます。また、感染症など、より一般的な疾患の診断支援への応用を目指し、多種類の検査データを組み入れることによって汎用性のあるAI自動分析システムの開発を進めたいと考えています。さらに、白血病などの血液疾患の確定診断に不可欠である骨髄検査の自動化を次のターゲットとして、骨髄中の細胞の自動識別に挑戦し、確定診断に踏み込んだAIシステムの開発を目指します。
今後も、世界の臨床検査・診断支援技術をリードする研究開発に取り組んでいきます。

用語解説

*1 深層学習技術:何段もの深い層を持つニューラルネットワークで構成される人工知能技術。深層畳み込みニューラルネットワーク(Deep Convolutional Neural Network; Deep CNNs) などが、人間の視覚をモデルに考案され、画像認識の分野で優れた性能を発揮している。
*2 骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome、MDS): 骨髄中の造血幹細胞の異常によって正常な血液細胞が造られなくなる疾患。血液細胞の減少と、形態の異常が生じる。腫瘍性疾患であり、白血病に移行する場合がある。
*3 再生不良性貧血(aplastic anemia、AA) :骨髄中の造血幹細胞が障害され、血液細胞が減少する非腫瘍性疾患。
*4 勾配ブースティング法: 高精度での予測・判別を実現する機械学習アルゴリズム。

原著論文

本研究成果は、英国科学雑誌「Scientific Reports」のオンライン版(2019年9月16日付)で発表されました。
論文タイトル: A novel automated image analysis system using deep convolutional neural networks can assist to differentiate MDS and AA .
日本語訳:  畳み込みニューラルネットワークを用いた新たな自動画像分析システムによる骨髄異形成症候群(MDS)と再生不良性貧血(AA) の鑑別診断支援
著者: Konobu Kimura, Yoko Tabe, Tomohiko Ai, Ikki Takehara, Hiroshi Fukuda, Hiromizu Takahashi, Toshio Naito, Norio Komatsu, Kinya Uchihashi, Akimichi Ohsaka
著者(日本語表記):木村考伸1, 2 、田部陽子1, 3 、藍智彦3 、竹原一起2 、 福田洋4 、 高橋宏瑞4 、 内藤俊夫4 、 小松則夫5、内橋欣也2、 大坂顯通1
所属: 1) 順天堂大学大学院医学研究科次世代血液検査医学講座 、2) シスメックス株式会社、3) 順天堂大学大学院医学研究科臨床病態検査医学、4) 順天堂大学大学院医学研究科総合診療科学、5) 順天堂大学大学院医学研究科血液内科学
DOI: 10.1038/s41598-019-49942-z
関連特許: 2件申請中

本研究は、シスメックス株式会社との共同研究として行われました。

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