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2022.05.17 ()
プレスリリース附属病院

本邦初 救急医療の現場にスマートグラスを試験導入

~重症救急患者の早期治療開始と転帰・救命率向上を目指して~

順天堂大学(東京都文京区、学長:新井一)は、医学部附属静岡病院(静岡県伊豆の国市、院長:佐藤浩一)において、救急車で搬送された重症患者に対する早期治療開始と転帰・救命率向上を目的に、同院の救急診療科と駿東伊豆消防本部(静岡県沼津市、消防長:佐藤潤)、AVR Japan株式会社(東京都港区、代表取締役:立石雅之)と連携し、 2022年3月1日より病院搬送前救急活動にスマートグラス(VUZIX M400)を試験導入し、有効性の検証を実施しています。本取り組みは、順天堂大学オープンイノベーションプログラム「GAUDI」※1の支援のもと実現しました。

■救急医療の現場におけるスマートグラスの活用

スマートグラスとは現場の状況を映像と音声によりリアルタイムに遠隔へ伝送し、双方向にコミュニケーションを図ることが可能なデバイスです。病院内におけるスマートグラスの活用はすでに他施設より報告されていますが、今回の取り組みは「医療×消防×企業」の多機関連携であり、本邦初の取り組みです。

今回の試験導入では、病院搬送前救急活動において、救急隊員がスマートグラスを装着・起動し、患者さんの救急車内収容時から病院搬入までの状態やその変化、バイタルサインの推移、12誘導心電図などの情報を搬送先の病院でスタンバイする医師や看護師にリアルタイムに映像と音声により、伝送します。伝送された情報を院内でリアルタイムに共有することで、病院到着前のより早い段階で院内各部署の診療体制や治療方針の検討・決定につながることが期待されます。

現在は、救急隊員と院内で待機する医師との通信手段は携帯電話による通話のみで、情報共有は音声だけで行われています。しかし、スマートグラスを活用することで、撮影の手間をかけることなく、搬送時に映像による情報共有が可能となります。それにより、これまで共有することができなかった患者の表情や容態変化をリアルタイムに映像で共有することが可能となり、搬送先の受け入れ準備がスムーズに進められるほか、搬送中の重症外傷や脳卒中、心血管系疾患に対して院内医師による的確な緊急処置(輸血、手術、血栓溶解療法、血管内治療など)の指示が可能となります。

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「頭部挫創を主訴に救急車要請された事案」を例に

▶▶ 救急隊員活動開始時
救急隊員が患者接触し、意識レベルやバイタルサインなどの初期評価を行い、受傷部位の確認を行ったところ、頭部に約2㎝の挫創を認めた。順天堂大学静岡病院への搬送を決定・依頼後、患者さん・ご家族にスマートグラスの使用説明・同意取得の上、デバイスを起動。

▶▶ 院内体制の構築
静岡病院の医師が映像により創部の状態を視認。縫合処置が必要と判断し、搬送前から病院内で創処置の準備を開始。患者搬入前には処置の準備が整っており、患者さんが搬送された後、速やかな止血を含めた創処置を実現。

▶▶ スマートグラスの効果
この事例では、病院搬入前から受傷部位の状態が視認できたことが的確な事前準備につながった。これまでは創部を事前に視認する方法がなく、搬送後に創処置の準備が行われていたが、スマートグラスの活用により、早い段階からの治療介入が可能となった。出血量が多い場合には、いかに速やかに止血処置を開始できるかが重要なため、患者さんの転帰改善と救命率の向上に大きく貢献したといえる。

画像3

順天堂大学コメント
柳川 洋一(医学部救急・災害医学研究室教授・医学部附属静岡病院 救命救急センター長)
「スマートグラスを用いた同システムが円滑に活用可能であれば、病院前診療のgame changer になることが大いに期待されます。」

石川 浩平(医学部救急・災害医学研究室 准教授・医学部附属静岡病院 救急診療科 医局長)
「多機関が連携するスマートグラスの円滑な活用が可能となれば救急患者の転帰向上に繋がる可能性は勿論の事、地域救急医療の質向上や社会への共益性が期待されます。順天堂大学が発信する本邦初のこの取り組みが国内はもとより、世界の救急医療の発展に貢献できるよう今後も研究を推進していく所存です。」

代田 浩之(順天堂大学保健医療学部 学部長・大学院医学研究科循環器内科学 特任教授)
「産業界で開発・実用化されてきたスマートグラスは、医療・医学領域でも大きな可能性を持っています。特に、救急や外科領域での画像情報共有の価値は大変高く、現場で提供される医療の質の向上に大きく貢献すると考えています。」

駿東伊豆消防本部コメント
佐藤 潤(駿東伊豆消防本部 消防長)
「スマートグラスの活用は、救命処置の安全性を高め、より迅速な活動につながることから、病院前救護体制の更なる進展と住民サービスの向上に期待しております。」

実機活用救急隊員
「1か月の試験運用により、病院連絡の迅速化などの有用性があり、また、装着による救急活動上の問題がないことを確認できました。今後、スムーズな音声・映像での通話が可能となることで、更に救命率の向上につながっていくと思います。」

AVR Japanコメント
立石 雅之(AVR Japan株式会社 代表取締役)
「世界市場に於いて、企業活動や社会生活の中に“XRテクノロジー”が頻繁に活用され始めてきました。緊急医療領域の現場に於いて、その技術の可能性を検証する今回のような実証実験の取り組みは、XRテクノロジーの開発を更に高度なものへとリードする為に大変大きな意義があると考えます。」

■今後の展望

現在、スマートグラスは駿東伊豆消防本部管轄救急車の一部に積載されています。今後、さらに積載救急車台数を増やし、スマートグラスの有効性を検討する研究を更に推し進める予定です。
スマートグラスの導入は、地域を守る消防や医療機関における重要なツールになることが期待されます。今後も相互に連携を図りながら、スマートグラスの活用による地域の医療の質向上、その社会還元の実現を目指します。
補足説明
※1 順天堂大学オープンイノベーションプログラム「GAUDI」について

Global Alliance Under the Dynamic Innovationの頭文字を取り命名された順天堂大学のオープンイノベーションプログラムです。https://gaudi-juntendo.jp/
「GAUDI」は、日本に限らずグローバルな視野を持ちながら、ライフサイエンス分野における研究開発を促進し、企業や研究者の開発シーズやアイデアが効率よく社会実装されることに貢献することを使命とし、順天堂大学および6附属病院の多岐に渡るリソースを基盤として産学官連携による支援を企業や研究者の皆さま(会員)に提案しています。
今回の取り組みは、順天堂大学医学部附属静岡病院救急救命センターおよび静岡県の駿東伊豆消防本部の構想と、GAUDIの企業会員であるAVR Japanの技術を「GAUDI」が橋渡しし、試験導入に至った事例となります。

※2 静岡病院における救急診療について
順天堂大学医学部附属静岡病院救命救急センターは、静岡県東部、伊豆半島のつけ根に位置する三次救急医療施設です。静岡県東部の重症患者の多くが当院に搬送され、搬送数は年間6,000件前後、重症患者の比率は全国トップ20に入ります。伊豆半島において当院以南には三次救急医療施設が存在しないこともあり、救急医療をになう病院としての責任を果たすべく病院を挙げて救急診療に取り組んでいます。